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高知の歴史ある“市文化”を楽しむ「ヴィレッジ 〜モノと食と音が奏でる土日市〜」

“ぼくのいる場所はすべてローカル”がモットーの編集者、
ミズモトアキラさんが愛媛から発信するカルチャートピックス



文・ミズモトアキラ

 

街なかとはとても思えない緑ゆたかな空間に、色とりどりのブースが軒を並べ、老若男女さまざまな人たちがそこに集って、ショッピングを楽しんだり、食事をしたり、音楽に耳を傾けたりしている。それは実在する場所というよりも、どこか架空の村のカーニヴァルにまぎれこんだような───。 今となってはどこで見たのかさえはっきり思い出せないけれど、その様子を写真やレポートではじめて目にしたときから、ぜひ出かけてみたいと思ったイヴェントがありました。

 

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それが、2013年から高知市内で開催されているイヴェント「ヴィレッジ 〜モノと食と音が奏でる土日市〜」です。 毎年5月後半の土日〜計2日間にわたって開かれ、サブタイトルのとおり、高知県内外のクラフト作家たちが自作の木工、陶磁器、布製品、アクセサリー、紙製品、また刃物などの金属製品を持ち寄るマーケット、ワークショップ、充実した食ブースなど約140店舗が出店。ステージでは音楽ライヴも終日楽しめます。

 

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第2回からは市内中心を流れる鏡川の河畔に会場を移動し、山内神社/鷹匠公園/みどりの広場という隣接する3ヶ所に、トータル約3万人が来場する一大イヴェントとなりました。 今回はヴィレッジの魅力をより深く知るために、実行委員会のメンバーであり、自身の経営する食のセレクトショップ「まなべ商店」(愛媛県四国中央市)で出店もされている眞鍋久美さんにご登場いただき、イヴェントの重要な原動力である、高知の「市(いち)文化」などについても、お話を伺うことにしました。

 

───そもそもこのイヴェントが立ち上がったきっかけというのはなんだったんですか?

眞鍋 高知市で革小物や雑貨の店「SAIL atelier/swimmy」を営んでいる、村長こと山﨑早太くんが言い出しっぺなんですよ。彼は19歳の頃から自分のお店を持っていて、高知のマルシェなんかにも出店していたんですね。でも、高知って大きな産業が無いから、自分たちの作っているものや良いと思えるものを積極的にPRできる場所を自前で作っていかないと……っていう彼のアイディアが出発点です。で、仲間を見渡すと、クラフト作家がいたり、喫茶店をやってる人がいたり、あるいは音楽イヴェントをオーガナイズしてる人、カメラマン、デザイナー、お花屋さんなど、いろんな人たちが揃ってるので、一同に介して何かをする場……それをひとつの村と見立てればなんでもできるんじゃないか、と。それがヴィレッジのはじまりですね。

───初回からすごく反響が大きかったとか。

眞鍋 残念ながらわたしは松本の「六九クラフトストリート」という別のイヴェントに出店していたので、初回は参加できなかったんですけど、高知にはこんなすばらしい作家さんがたくさんいたんだ、と驚いてくれた人もいれば、美味しいものがあって、緑があって、子どもを遊ばせられる空間もあって、そんな部分で楽しんでくださる方も多かったんですね。で、『ぜひ来年もやってね』という声がものすごく届いたんで、それじゃあがんばろうか、って。

 

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───ロケーションもすばらしいけれど、会場作りやパンフレットのデザインも含めて統一感があって……ひとことで言えば、おしゃれですよね(笑)。

眞鍋 ありがとうございます(笑)。でも出店者さんが持ち込んでくださる商品にはかならずしも統一したテイストは無くて、むしろバラバラ。それが逆にいろんな人たちに満足してもらえるバラエティ感につながっていると思いますね。

───もともと高知ってモノづくり、手仕事がとても盛んな印象があるんですが。

眞鍋 これ、高知あるあるなんですけど、何もしなくても食べるのに困らない、っていうことがあるんです(笑)。野菜なんかは誰かが持ってきてくれたり、自分でも畑で作れるし。猪とか鹿とか肉をもらったりもできるから絶対に飢えない、と。だから、いっぱい儲けなくても、モノづくりみたいな小さな商売でなんとかなるのかもしれないです。あと、外から来た見知らぬ人を歓待する───土佐弁で『うげる』っていうんですけど、そういう気質が高知人にはあるんですよ。だからモノづくりを志して他県から移住してくる人たちもすぐに受け入れて、もてなしちゃうので、みんな安心して高知にやってくるんです。

 

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───高知では日曜市に代表される「市(いち)」の文化もありますよね。

眞鍋 有名な日曜市だけでなく、月曜以外の曜日も市内に毎日立ってますね。しかも日の出から日の入りくらいまでやっています。平日の市が立つエリアに住んでいる人たちは、日常の買い物先として利用してますね。特に毎週土曜、港近くの池公園っていう場所で開催されている高知オーガニックマーケットは、その名のとおり農薬や化学肥料に頼らない農産物、加工品を取り扱うマーケットとして、もう8年くらい歴史があって、全国的にも有名です。こんな市文化が定着してるところは、少なくとも四国の中には無いですよね。そうした文化が根付いているから、高知では昔からこういうイヴェントがたくさん開かれてきましたし、そこで扱われている商品のクオリティも高いと思います。

───クオリティの高い生産者が集まり、それを売り買いするための市が日常的に立つ。それがあたりまえのサイクルになってるんですね。

眞鍋 どこのスーパーマーケットでも見かける産直コーナーってあるじゃないですか。あれを最も早く始めたのが高知県だと言われています。ふつうに考えたらおかしいでしょ、隣での売り場で野菜を売ってるのに、その横で地元産の野菜が一緒に売られてるなんて(笑)。でも高知の人たちの頭のなかには『あのおばちゃんが作ってるお漬物は必ず買う』とか、お気に入りの生産者さんたちのリストが入ってる。顔の見える作り手の商品を買いたいんですよね。

───身近な生産者を応援し、買い支えようとする意識が、ヴィレッジの盛り上がりにも大きな影響を与えてるんですね。あと、今年から採用している「出店申込料(出店者決定のプロセスにかかる事務手続をカバーするための費用として1,000円かかる)」というシステムもユニークですね。

眞鍋 申し込みの段階でお金をいただく分、このイヴェントに真剣に向き合ってくださる方が集まったと思います。実際、ひと月分の売上をこの二日間だけで稼ぎだす人もいるくらい。お客さんだけでなく、出店者さんも参加するのを楽しみにしてくれているし、自分たちの顧客を誘って、たくさん引き連れて来てくれるようになったのもうれしいことです。

 

5月の高知といえば初鰹の季節だし、いっそ泊まりがけで遊びに行って、旬のものを食べ、お酒も飲んで、イヴェントも二日間たっぷり楽しんじゃうという流れが最高じゃないでしょうか?

ゴールデンウィークを楽しめなかった人も、遊び足りなかった人もぜひヴィレッジに足を運んでみてください。

 

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高知の歴史ある“市文化”を楽しむ「ヴィレッジ 〜モノと食と音が奏でる土日市〜」
ミズモトアキラ 1969年、愛媛県松山市生まれ、松山市在住。エディター/DJ。2013年、関東からIターン。音楽、映像、写真、デザインなどを多角的に扱い、文、編集、デザインを手がける傍ら、トークイベントやワークショップの主催も精力的に行っている。
www.akiramizumoto.com

INFORMATION

 

ヴィレッジ2016 〜モノと食と音が奏でる土日市〜

 

日程:2016年5月21日(土)〜22日(日)
会場:山内神社・鷹匠公園・鏡川みどりの広場
時間:10:00〜17:00 ※雨天開催、荒天中止
料金:入場無料
http://village-kochi.com/

 

まなべ商店
住所:愛媛県四国中央市豊岡町長田168-1
営業時間:10:00〜18:00 ※不定休につき、お越しの際はFacebookページまたはお電話にてご確認ください。
電話:0896-77-4422
http://www.facebook.com/Manabeya

まなべ商店

(更新日:2016.05.14)
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