ある視点

ふるさと団地

vol.1 ふるさと団地

「団地狭え~、つまんねえ~」
と感じ始めたの、小学校3年あたりだったなあ、コロコロコミックを読み始めたくらいだったなあってこと、コラム書くにあたって思い出しました。
僕が育った団地・ハイタウン塩浜の男子達は、小学校低学年くらいまで、親から「団地の外に出ちゃダメ」と言いつけられて過ごします。

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団地の外に出るには、南側は湾岸高速道路と国道357をまたぐ大きな横断歩道を渡らないといけない。北側は猫実川というドブ川にかかる橋を渡らないといけない。どちらも、意味不明の行動をとりまくる低学年男子には危なすぎ! 親たちは「横断歩道渡っちゃダメ!橋渡っちゃダメ!死ぬわよ!」と、ほんとに、大袈裟じゃなくてかなり厳しく男子に言いつける。うちもそうでした。

 

でもですね、団地って遊びの天才・低学年男子にとっては天国みたいなところで、全然物足りなさなんて感じなかったですねえ。ハイタウン塩浜は52号棟まであるマンモス団地で、公園いっぱいあるし、謎のオブジェあるし、スーパー・八百屋・肉屋・床屋・パン屋・お医者さん・電気屋・ビデオ屋も団地の中に。隣接して市営住宅4棟。その横に小学校と中学校。これが行くことが許されていたエリアの全部ですが、もう広すぎるほど。

 

進入禁止エリア周辺は殺伐とした感じが少年には特に魅力的で、高速道路の高架下に住みつくホームレスの家を覗きにいったり(一度、鮭が干してあって大騒ぎになり学年中の男子が見に行き騒動に)川ぞいにずら~っと路駐してある車のナンバーをひたすらにメモったり。してたなあ。

 

毎日けっこう忙しいんですよ、低学年男子たち。

 

が、小学校3、4年になるころにはさすがに飽きがくる。メカ好きになったりマンガを好きになってですね、それでコロコロコミック読んでミニ四駆やり始めたり、劇場版ドラえもんは先にマンガで読むからもうアニメで見なくていいって感じになっていくわけです。かなりの変化ですよね。そして、気づいてしまう。
「俺の欲しいもんぜんぶ、この団地にない」
はい、大人の階段、登りました。

お母さんに打診。僕の場合「田島模型まで自転車で行ってもいいかな…?」だったと思います。南行徳駅から行徳駅方面に少し行くとある、プラモデル屋さんへ、どうしても、友達と、改造パーツを、買いに行きたいヨォ…!!お母さん!!これには俺の命がかかってるんだよおおお!!そんな勢いで、お願い。もう俺、よくわかんない動きとかしないし、車来てるか確認できるし、補助なし自転車の運転だってベテランの域だし、お金だって計算できるっっ!ね、大丈夫。さあ、許しておくれよお母さん!外の世界へと繋がる橋を、横断歩道を渡ることを!!!!

 

「ダメ」

 

 

うそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 

 

それでも粘り強く交渉を続けて、だいたいどの男子も遅くても小5までには町を勝手に出ても何も言われない権利を獲得。僕はたしか小4でオッケーになりました。海まで出て釣りしたり、工業団地の端で焚き火したり、駅まで出てストⅡやってる人覗いたり、Dマートで涼んだり。(くだらなさは団地内でやってたことと大差ない)

 

こうやって広げていった風景が、僕の原風景です。このコラムの舞台でございます。

 

なんというか「風土」みたいなもんはないんですよね。コンクリートだらけで、大きい高速道路とか国道があってトラックがバンバン走ってて、ドブ川に自転車が捨てられててっていう景色が僕のふるさと。

 

さーて、次回からはそんな埋め立て地で僕たちが実際どんな風に遊んでたとかもっと具体的に書けたらなあと思ってます。タフでラフな団地少年ライフ。
おつきあいよろしくお願いします。

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団地のはなし
夏目知幸

夏目知幸/1985年生まれ、千葉県・市川市出身。ロックバンド、シャムキャッツのボーカルとギターを担当。好きな芸人はとんねるずなどなど。好きな食べ物はあんかけ焼きそばとピザ。茶目っ気たっぷり団地メン。
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(更新日:2015.01.04)

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