特集 イースト・ミーツ・ウェスト!
イースト・ミーツ・ウェスト! 〜広島県・福山&愛媛県・松山編〜

松山二日目は『喫茶マリモ』のモーニング→松山城を観光→友人の門田マキコさんが経営する雑貨店『ROSA』→松山のソウルフード、鍋焼きうどんの『アサヒ』。そして郊外電車で三津浜へ移動し、散策。おなじみの喫茶店『田中戸』でかき氷。
夜はぼくが普段使いしている美味しいお店シリーズで洋食屋『ラ・セーラ』で名物のラザニアやパスタを食べてもらい、夫妻は今日の宿である道後温泉の旅館へ。
最終日は道後で集合。おすすめのビストロ『NOTRE』でランチを食べ、その隣にある生活雑貨の店『BRIDGE』で松山最後の買い物を楽しんでもらいました。
───と、まあ松山に来てからは、ほとんど観光旅行(繰り返すようですが、二人は新婚ホヤホヤ。観光ももちろん大事なタスクだった)的な旅程だったけれど、彼らの旅に同行し、ぼくの友人たちを彼らに紹介するなかで、多くのことに気付かされました。
たとえば、松山城に案内したとき。城内に展示されている兜や刀、あるいは歴史的な遺物を見ながら、山本くんたちはひどくそれらに感心していました。
理由をたずねると、彼らが暮らす北海道というのは(もちろんそれ以前にアイヌのような先住民族の歴史はあるけれど)大部分が明治以降の入植によってできた近代的なコミュニティです。路地と路地で区切られた横丁のような場所よりも、きちんと物差しで測られた、大きな直線道路こそが彼らの知っている街であり、彼らの原風景なのです。
彼らを案内しながら、ぼくが何気なく話すエピソードのひとつひとつが、まったく異なる歴史や文脈の中で育った人たちにとって、大きな魅力として捉えられるのです。
移住促進とひとことで言っても、その街の魅力を伝えるメソッドは千差万別。地元に住む人間にとってはありふれたものや、思ってもみない部分がカギになったりする。山本夫妻の住む別海町には、趣きのある木造の古民家なんてものはありません。
地場産業である酪農や漁業も、非常に過酷な仕事です。わざわざ暖房設備の無い過酷な場所で暮らしたい……と移り住む変わった人もなかにはいる、と聞きましたが(笑)温暖で一年中のどかな瀬戸内の暮らしとは、移住希望者のモチベーションもまったく違います。
山本夫妻にとってこの旅がどんなヒントになり、それはどう活かされるのかは、これからゆっくり見守っていくしかありません。
少なくとも、ぼくは自分の街を”紹介者”という目線で辿ることで、意外な刺激やアイディアがもたらされたように思います。
もちろんぼくがそれをどう活かすかも、同様に見守ってもらうしかないのだけれど───。
おわり
ほらり
別海町を中心とする道東への移住促進、
ミズモトアキラ
1969年、愛媛県松山市生まれ、松山市在住。エディター/DJ。2013年、関東からIターン。音楽、映像、写真、デザインなどを多角的に扱い、文、編集、デザインを手がける傍ら、トークイベントやワークショップの主催も精力的に行っている。
www.akiramizumoto.com

特集

最新の記事
-
ニュース【ウェブマガジン「雛形」更新停止のお知らせ(2022年4月30日)】ウェブマガジン「雛形」は、2022年4月30日をもって、記事の更新を停止いたしました。 (「ウェ […]
-
特集迷いながら、編む。 ーメディアの現在地どんな人にも、暮らしはある。すぐには役に立たないようなことも、いつかの誰かの暮らしを変えるかもしれない。/雑誌『暮しの手帖』編集長・北川史織さん北川史織さん(雑誌『暮しの手帖』編集長)
-
特集迷いながら、編む。 ーメディアの現在地立場をわきまえながら、どう出しゃばるか。「困っている人文編集者の会」3名が語る、本が生まれる喜び。柴山浩紀さん(筑摩書房)、麻田江里子さん(KADOKAWA)、竹田純さん(晶文社)
特集
ある視点
-
それぞれのダイニングテーブル事情から浮かび上がってくる、今日の家族のかたち。
-
一番知っているようで、一番知らない親のこと。 昔の写真をたよりにはじまる、親子の記録。
-
「縁側」店主河野理子どんなものにもある、“ふち”。真ん中じゃない場所にあるものを見つめます。
-
「読まれるつもりのない」言葉を眺めるために、“誰かのノート”採集、はじめます。
-
不確かな今を、私の日々を生きていくために。まちの書店さんが選ぶ、手触りのあるもの。
-
美術作家関川航平ほんのわずかな目の動きだって「移動」なのかもしれない。風景と文章を追うことばの世界へ。
-
徳島県・神山町に移り住んだ女性たちの目に映る、日々の仕事や暮らしの話。