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地元民に長く愛されてきた銘菓をヒントにした、町の新たなタッチポイント「カブトガニBOOKS&COFFEE」

“ぼくのいる場所はすべてローカル”がモットーの編集者、
ミズモトアキラさんが愛媛から発信するカルチャートピックス


 

地元農家の契約栽培米で作るポン菓子に、伊予柑ピールなど愛媛ならではのフレーバーを組み合わせた「ひなのや」のパン豆。 首都圏や関西の大型商業施設での催事、また中川政七商店TODAY’S SPECIALONOMICHI U2といった全国のセレクトショップにも引く手あまたの、素朴なのにどこか新しいお菓子です。

 

創業者のひいおばあさんが暮らしていた古民家を改装した「丹原パン豆製造所」で、東予地方の伝統菓子だったパン豆の製造と販売を2010年からスタート。昨年(2015年)一日の利用者が千人にも満たない地元の小さな駅・壬生川駅前の通り沿いに、2号店「壬生川駅前店」をオープンしました。

 

ひなのや壬生川駅前店・外観

ひなのや壬生川駅前店・内観1

ひなのや壬生川駅前店・内観2

 

ぼくがひなのやの商品を初めて見かけたのは3年前のことで、愛媛ではなく京都の恵文社一乗寺店でした。こんなすてきな商品が地元にあったんだ、と驚いてひとつ求め、自宅で食べてそのおいしさに二度目のびっくり。ただ当時は愛媛県内での取り扱い店はごくわずかで、自宅から車で一時間ほどかかる丹原のお店まで足を運んで買っていました。

今ではぼくの住む松山でも気軽に出かけられる場所で買うことができるようになりましたが、定番商品だけでなく、直営店限定フレーバーのパン豆や、秋冬にはポン菓子機で圧力焙煎したホクホクの焼き栗、またパン豆をトッピングしたソフトクリームなどを楽しむことができるので、免許のないぼくはクルマ持ちの友人をそそのかし、壬生川駅前店へよく出かけています。

 

パン豆アイス

 

そしてこの夏、壬生川駅前のお店から数軒隣に「カブトガニBOOKS&COFFEE」がオープンしました。 長年にわたってシャッターが下ろされていた空き店舗を活用したフリースペースで、地域の有志が運営にあたり、ひなのやスタッフも全面協力しています。飲食は持ち込み自由。店内で販売されているコーヒーやソフトドリンク、ひなのやで購入したパン豆やソフトクリームなどを食べながら、「ひなのやのちいさな図書館(これまではひなのや壬生川駅前店内で展開していた無料開放の蔵書。誠光社が選書を担当)」の本を自由に読むこともできます。

 

カブトガニ本棚

カブトガニ内観2

 

もともとこの場所には老舗の和菓子屋「東勉強堂」がありました。そこの銘菓が「カブトガニ餅」。じつは西条市には、日本でも数少ないカブトガニの繁殖地があり、それにちなんで作られたのが、そんなユニークな名前を持つお菓子だったのです(後で調べたところ、形状がカブトガニを模しているわけではなく、ましてやカブトガニが材料だったりするわけもなく、餡とニッキを求肥で包んだ大福的な和菓子だったことがわかりました)。

しかし10年ほど前にご高齢のご主人が亡くなったことを機にお店は閉店。同じ通りにある保育園の園長さんが、店主からこの場所を地域のために使って欲しい、と生前に託されていたため、和菓子屋が廃業したあとも、ときどき福祉系のイヴェントなどで活用することがあったそうです。

そこへ昨年、ひなのやが開店し、ひなのやスタッフとお向かいの保育園と縁が繋がったことから、この空きスペースの活用に関して協力を依頼され、仕事の合間に改装作業をはじめたのが今年の春。 ネーミングはいろいろ迷ったそうですが、地域の人たちからこの場所が「カブトガニのところ」と認知されていたことで「カブトガニ」を使うことにし、和菓子屋時代の名残として外壁に取り付けられていた「カブトガニ餅」の看板文字をトレースし、ロゴマークに再活用しました。

 

 

現在は毎週日曜の朝9時〜15時までオープン。正直、駅のまわりは閑散とし、日曜日にもかかわらず通る人もまばらだったけれど、利用者がゼロだったという日は一日も無かったとのこと。地域コミュニティの活性化だけでなく、地元の人たちと遠方から足を運ぶ人たちとの交流点として、古代から姿形を変えることのなかったカブトガニのように、末永く愛される空間になってほしいものです。

 

カブトガニ外観

写真、文・ミズモトアキラ

 

(更新日:2016.07.27)
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