日常の手触りを、魚で感じる「うみラボ」と「調べラボ」
福島・いわきに根ざし、アイデアをあらゆるかたちで発信していく。企画・編集・PR事務所「ヘキレキ舎」代表・小松理虔さんによる、いわきレター。
福島第一原発の事故が起きて、私たちの生活は変わりました。と少なくとも私は思っていて、でもそれは別にネガティブなことではなく、今までの「当たり前」とか「日常」とかをもうちょっと見直して、日常の手触りみたいなものを感じながら日々生きていかないといけないなあ、ということなのですが、それで、2013年、福島第一原発沖で魚を釣って、その放射線量を計測しようという調査チーム「うみラボ」を始めました。
「うみラボ」の厳粛な調査の様子(要は単なる釣り)。
「うみラボ」の海洋調査は福島第一原発1.5km沖で行われている。
活動3年目。2016年の活動もようやく始まり、5月1日に今年初の海洋調査に行ってきました。事故のあった原発沖ですが、釣りはやっぱり楽しくて、結果はいわゆる爆釣で、魚ってこんなに重いのかとか、こんなところに棲んでるんだとか、こうして食べるとうまいらしいとか、「汚染」とか「放射能」とか、そういうのとはだいぶ違う手触りを感じて港に戻ってきます。
筆者もヒラメを釣り上げてドヤ顔!
その手触りは、震災直後に、水を汲みにいった時のことを思い出させます。浄水場に水を組んでポリタンクに入れると、とてもじゃないけど1人では持てないくらいに重い。ビニール袋に入れようとしていた人は袋が破れ、大きなタンクに入れた人は重くて持ち運べない。そんな光景がそこにありました。私たちは、水の重さすら忘れて日常を過ごしているわけです。
九州で大変な大震災が起きました。どうやら私たちは、いつ崩れ去ってもおかしくない日常と付き合っていかなければならないようです。だから、常に「日常の手触り」を感じる機会をつくることが、日常の恵みに感謝しつつ、災害に備えることになるのではないか。つまり、日常の「おいしい」と「防災」と「地域」は、ちょっとずつ繋がっているのかもしれません。
私たちの主催している海洋調査チーム「うみラボ」は、毎月第1日曜日に行われています。6月はあいにく満席ですが、7月以降は若干席の余裕があります。福島の海の今を知りたい方、自分の生活の足下を見つめてみたい方、単純に魚釣りたい方、ご連絡下さい。放射性物質の計測データも公式ウェブサイトに掲載しています。ぜひアクセスしてみてください。
それからこの「うみラボ」に関連してもう1つ。私たちが採取した魚の放射性物質を計測するイベント「調べラボ」を、いわき市の水族館アクアマリンふくしまで開催しています。
水族館獣医が直接レクチャーしてくれる「調べラボ」。
「調べラボ」には、毎回たくさんの家族連れが訪れる。
原発沖の魚の放射性物質を計測しつつ、福島県産の魚を使った料理を振る舞っています。この料理が毎回おいしいんです。ちょっとだけ科学を学びつつ「おいしい」が体験できるこちらのイベント、一見の価値あり! こちらもぜひご参加ください。