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『東北食べる通信』『雲のうえ』『ヨレヨレ』…… 話題の地域メディアの裏側を取材した書籍『ローカルメディアのつくりかた』発売中!
雑誌や書籍など紙媒体の苦戦が続く中、個人出版社や自治体などが地域で発行するフリーペーパーや雑誌が増えつつあります。小規模でありながら、話題を集めるメディアが各地に広がり、たとえば食べ物付きの情報誌『東北食べる通信』、北九州市が発行するフリーペーパー『雲のうえ』、お年寄りの介護施設に編集部を構え、そこで繰り広げられる物語をまとめた雑誌『ヨレヨレ』など、なんか聞いたことがある、手に取ったことがあるという人も多いのでは?
そんな全国のユニークなローカルメディアの作り手たちを1年かけてじっくり取材し、まとめた書籍『ローカルメディアのつくりかた』が発売されました。著者の影山裕樹さんは、東京生まれ、東京育ちの編集者。これまで、美術書、カルチャー書などを数多く手がけてきましたが、ここ数年はローカルメディアのおもしろさに注目。メディアや編集のフィールドが東京から地方へ広がっていることを実感し、全国のローカルメディアの作り手たちを訪ねるようになったそうです。
取材を進める過程で影山さんはあることに気がつきます。
「ローカルメディアは出来上がったそのものより、コンテンツ、デザイン、流通など、その制作の過程がどれほど豊かであったか、そこに魅力がつまっている」
本書では、10媒体ほどのローカルメディアが紹介されていますが、その制作過程や作り手の思い、予算の調達方法、流通まで、どれもまったく異なるという点が、実にユニーク。
一人で広告営業から制作までをこなすシニア向けフリーペーパー、地域限定販売・お取り寄せ不可という温泉街の書籍、お年寄りの介護施設に編集部を構え、そこで繰り広げられる物語をまとめた雑誌、1号の制作に1年半かける広報誌……。ここで紹介される事例は一般的なメディアの常識からは逸脱しているけれども、その地域、読み手にはとても喜ばれている、という点だけは共通していまます。
メディアとは本来、一方通行ではなく双方向である。それを再認識させられるモデルケースが随所に盛り込まれています。そして、この先ローカルメディアはますます賑わうことになるだろうと、この著者の言葉からも伝わってきました。
「誰もが知っている観光地をことさらに取り上げるよりも、匿名の人々のユーモアある語り合いこそが、急速に失われつつある地域の人々のつながりを育んでいるように思う。ローカルメディアは、ささやかだけれどあたたかい、現代版“寄り合い”の場(プラットフォーム)なのである」
今後、ローカルメディアを立ち上げたい、地域の情報発信に関わりたいという方におすすめしたい一冊です。
文:孫 奈美
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影山裕樹(かげやまゆうき) 編集者/1982年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、雑誌『STUDIO VOICE』編集部を経てフィルムアート社に入社。『じぶんを切りひらくアート』『野外フェスのつくり方』などの書籍を手がけた後に独立。2010年に「OFFICE YUKI KAGEYAMA」を立ち上げ、書籍の企画・編集、ウェブサイトや広報誌の編集、展覧会やイベントの企画・ディレクションなど幅広く活動している。プロデュース・編集した書籍に『地域を変えるソフトパワー』『秘密基地の作り方』、著書に『大人が作る秘密基地』、共編著に『十和田、奥入瀬 水と土地をめぐる旅』など。
portrait: Mika Mitamura
INFORMATION
書籍『ローカルメディアのつくりかた』
著:影山 裕樹
(2,160円(税込)/学芸出版社)
発売中