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身体の数だけ、語りの形がある。展覧会「語りの複数性」、〜12月26日(日)開催中。@東京・渋谷
物事を受け取り、表現する方法は、ひとつではありません。視覚を使わずに見る人、手話を使って話す人がいるように、人の身体の数だけ、“語り” は存在します。それは、誰もが持っている、「自分と異なる他者や物事とともに生きるための能力」と言えるでしょう。
現在、そんなさまざまな「語り」の形を表現する展覧会「語りの複数性」が、〜2021年12月26日(日)、東京都渋谷公園通りギャラリーにて開催中です。
今回の展覧会では、大森克己、岡﨑莉望、川内倫子、小島美羽、小林紗織、百瀬 文、山崎阿弥、山本高之の8人のアーティストによる、写真、絵画、模型、描譜、映像、音といったさまざまな形態の「語り」の表現作品が展示されています。
美術展は初参加だという小島美羽さんは、故人の遺品整理や孤独死のあった現場などを片付ける遺品整理クリーンサービスの従業員。孤独死は誰にでも起こり得るということを知ってほしいと、さまざまな「孤独死現場」の特徴を組み合わせたミニチュア作品をつくり続けています。もうそこにはいない故人によって残されたものの一つひとつが、静かなメッセージを放つ作品です。

終の棲家(2019年)/小島美羽 撮影:加藤 甫
日常の中で心を動かされた音や、音楽を聴き浮かんだ情景を五線譜上に描く「score drawing」というドローイング作品を手掛けるアーティスト、小林紗織さん。色や形が流れるように変化するドローイングは、映画『うたのはじまり』の絵字幕でも注目を集めました。

映画『うたのはじまり』絵字幕(2019年)/小林紗織

「語りの複数性」会場風景 撮影:木奥惠三
彼女の新作は、自分史を譜面に落とした30mに及ぶ作品。目で見る「音」からは、どのような「語り」が生まれるのでしょうか?
固有の感覚や経験に裏打ちされた表現や、他者の経験する現実を自らの身体をもって受け取り、表現する作品たちは、鑑賞者の想像力によって変化し、それぞれに独自の体験をもたらしてくれることはず。受け取る人の数だけある「語り」を、ぜひ自らの身体で感じてみませんか?

心眼 柳家権太楼(2019)/大森克己

目(2014年)/岡﨑莉望

はじまりのひ(2018年)/川内倫子
>>展覧会参加アーティストの写真家・大森克巳さんの「雛形」の連載も、ぜひチェックしてみてください。
写真家・大森克己さんの連載
室内楽団「長岡京室内アンサンブル」が音楽と向き合う姿を写真と文章で伝える大森さんの連載、「長岡京室内アンサンブルの音楽とことば」。
期間:~2021年12月26日(日)11:00~19:00
※月曜日休館
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室 1、2及び交流スペース(東京都渋谷区神南1-19-8 渋谷区立勤労福祉会館 1F)
アクセス:渋谷駅B1出口より徒歩5分(東急東横線・田園都市線・東京メトロ半蔵門線・副都心線にて)/渋谷駅ハチ公改札口より徒歩8分(JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン・京王井の頭線・東京メトロ銀座線にて )
入場料:無料
出展作家:大森克己、岡﨑莉望、川内倫子、小島美羽、小林紗織、百瀬 文、山崎阿弥、山本高之
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