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社会文芸誌『たたみかた』創刊! 第一弾の特集は“福島県”。でも福島のことはあまり書いてない…?
福島・いわきに根ざし、アイデアをあらゆるかたちで発信していく。企画・編集・PR事務所「ヘキレキ舎」代表・小松理虔さんによる、いわきレター。
2011年の3月に、東京電力福島第一原発事故が起きた福島県。原発事故から6年が経過しましたけど、みなさんの「福島県」に対するイメージって、どんな感じでしょうか。おお、復興頑張ってるよね。いろいろ大変そう。食い物うまそうだなあ。色々あるでしょうか。それとも正直「あんま興味ない」って感じでしょうか。
福島にいると「みんな無関心だよな」って愚痴っちゃったりもしますけど、でも、一歩福島から外に出て東京に行ったり、どこか地方に行ったりして人と話すと、ちゃんとみんな福島のことを考えていてくれていて。無関心なんじゃなくて、関心があるからこそ、簡単に「こうだ!」って言えずに、押し黙っていた人たちも多いんじゃないかなって、思うんです。
そんな人たちに、今までとは違う思考回路で福島のことを考えてみようって雑誌が、先月創刊されました。神奈川県逗子市に暮らす夫婦が営む出版社「アタシ社」が制作している『たたみかた』という雑誌。創刊号の特集テーマはなんと「福島」です。ガチガチのオピニオン誌(?)じゃない。表紙を見たらわかると思うけど。
福島特集と言っても、復興政策について論じるわけでも、原発事故についてまとめるのでもなく、哲学や宗教、地方暮らし、食といった、ぼくらの日常に根ざしたテーマで福島を捉えた中身になっています。なんで正しさってぶつかっちゃうんだろうとか、なんで思わず何かを主張したくなっちゃうんだろうとか。そして、そういう内省や思索を助けてくれるように、写真がたっぷり使われていて読みやすい。
福島特集と銘打っておきながら、たぶんこの「福島」というのは「福島県」ではなくて、ぼくらが考えるのを避けてきた「ぼんやりとしたもの」の象徴なんじゃないかと思っています。本当は目を向けなくちゃいけないのに、見ないでいた、そして避けていた、そういうもの。それを、ことさらに「知れよ」ってんじゃなく、いろんな人たちの言葉から、浮かび上がらせていく。
雑誌名の『たたみかた』という言葉を聞いた時、
それは、この「雛形」
読後は、そうだなあ、昆布だしみたいな雑誌です。粉末で簡単に済ましちゃうのもいいけれど、凝り始めたらきりがなく、そしてやっぱり料理には欠かすことができなくて、じんわりとしみ込んでいくような。書店で見かけたら、ぜひ手に取ってみて下さい。ぼくもエッセイを寄せています。
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「アタシ社」のミネシンゴさんの記事 |「小さな美容室ができること」第一話『群青』(長野県松本市)サロンから生まれる、街の社交場
- 小松理虔 こまつ・りけん/1979年、福島県いわき市小名浜生まれ。福島テレビ報道部を経て、2006年より中国上海で日本語情報誌の編集・通訳として活動。2009年に帰国後、小名浜で地域にまつわるさまざまな企画に関わりながら、企業の広報として地域産品のマーケティングや商品企画、広報PRにたずさわる。2015年4月に独立し、ヘキレキ舎を立ち上げる。http://www.hekirekisha.com/
INFORMATION
雑誌『たたみかた』創刊号(福島特集)
2017年4月15日発行
編集長:三根かよこ 写真:ミネシンゴ
編集:小野ヒデコ 発行:アタシ社
価格:1,400円+税
www.atashisya.com