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人口8人の島の記憶。香川県・牛島で、のんびり写真展開催中!

瀬戸内海に浮かぶ、人口8人の牛島。存続が危ぶまれるこの島にも、賑やかで人々の笑顔に溢れていた時代がありました。

そんな姿を多くの人に見てもらおうと、今も島で暮らすひとりの女性が写真展を企画しました。

キャプション入れる。

 

陸よりも、海の移動が
便利だった時代に栄えた島

香川県・丸亀港から北へ約8kmの沖合いに浮かぶ、牛島。岡山県と香川県に挟まれた塩飽諸島(しわくしょとう)と呼ばれる大小28の島のうち、牛島は周囲約4.2kmの4番目に小さな島です。現在の人口はわずか8人。商店も自動販売機もない島ですが、東側では瀬戸大橋を、西側では塩飽の島々を望むことができるうえ、目の前の海を大型船が行き来していることもあって、隔絶されている感じがしないのが不思議です。

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島の南側からの景色。海の向こうに丸亀の町が広がっている。

島内のふたつの集落をつなぐ道の途中には、ほぼ自給自足をする人たちの畑や田んぼ、季節の花々、かつては特産地だったという温州みかんなどの木が。湧き水も豊富で、ほんの数分歩いただけでも土地の豊かさを感じられます。

今でこそ8人しか住んでいませんが、この静けさが信じられないほど活気に満ちた時代が、牛島にはありました。

塩飽諸島が特別な地域になったのは、戦国時代のこと。塩飽水軍が豊臣秀吉の朝鮮出征で活躍したことにより、江戸時代末期までどの藩にも属さない独立自治が認められていました。塩飽は廻船業で栄え、「内海の海上王」として一目置かれた豪商・丸尾五左衛門は牛島を本拠地に。ほかにも多くの船持ちが牛島に住んでいました。

18世紀半ば以降、廻船業は衰退し、船大工だった人たちは他国へ出稼ぎに。高い技術を生かして社寺や民家などの建築を手がけ、塩飽大工と呼ばれるようになりました。戦前は上海や台湾にまで働きに行った人もいたそうで、今よりもずっと海を自由に行き来していたことを物語っています。

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この島が好きだから、
元気な時代を人々の記憶にとどめたい

島が衰退したといっても、終戦直後はまだ200人ほどが住んでいました。牛島で生まれ育ち、20年ほど前にアメリカ人の夫とともにUターンしてきた横山敬子さんは、牛島がまだ子どもたちの元気な声で溢れていた時代を知るひとり。

服飾デザイナーとして島にアトリエを構え、その傍ら古民家を利用した島で唯一のゲストハウス「アイランドガール」を営んでいる横山さんには、長年温めてきた夢がありました。

「昭和42年に島の小中学校が廃校になり、隣の本島に統合されたのですが、昭和52年に校舎を解体することになったんです。自治会長をしていた父が、学校にあったアルバムを預かることになり、実家に保管されていたので、いつかいろんな人にこの写真を見てもらう機会ができたらいいなと思っていました」

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横山さんは、12年前に18人いた島民のポートレイトを撮影したことがきっかけで交流のあった、写真家の石井孝典さんに相談。こうして、島の集会所で写真展を開催することになりました。

展示されている写真は、昭和初期から昭和40年代くらいまでの80数点。緊張した面持ちの集合写真や、運動会でパン食い競走をするお父さん、着物姿で綱引きをするお母さん、それを見て笑顔が弾ける子どもたち。あるいはお祭りの風景や、何気ない日常の一コマ。牛島のことを知らない人が見ても、父や母、祖父母などから聞いた昔話が記憶の片隅から立ち上がってくるような、懐かしさや温かさを感じてしまいます。

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「いつかと思いながら、形にするまでずいぶん時間が経ってしまいました。島の将来のこともそうだし、写真に写っている人も高齢になって、これが最後のチャンスかもしれないと、ようやく実現することができました」

写真展に足を運んだ人たちは、若かりし頃の父親の姿を偶然発見して感動したり、島がこんなに賑やかだったことを知って驚いたり、写真のなかの笑顔に元気をもらったり……。今は島を離れてしまった人が、「うちにもこんな写真があった」と横山さんに昔の写真を送ってくれたり、展示されている写真の撮影時期や撮影者を特定してくれるような人も。やっぱり写真は人に見られてこそ意味があるようで、この写真展からもじわじわと新たな可能性が生まれています。

「都会と違って簡単に来られるような場所ではないから、しばらくは期間を決めずに展示したいなと思っています。そしたら島の観光名所がひとつ増えますしね」

かつてそこにあった、賑やかで温かい風景と笑顔を集めた写真展。牛島らしくのんびりと開催中です。

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写真:石井孝典 文:兵藤育子

INFORMATION

牛島の昭和 写真展
開催期間
:2017年秋~
開催場所
:牛島集会所(香川県丸亀市牛島385)
アクセス
【岡山駅から】
岡山駅〜(電車約40分)〜丸亀駅〜(徒歩5分)〜丸亀港〜(フェリー約15分)〜牛島里浦港(*フェリーは1日2往復)
【高松駅から】
高松駅〜(電車約30分)〜丸亀駅〜(徒歩5分)〜丸亀港〜(フェリー約15分)〜牛島里浦港(*フェリーは1日2往復)
公式HP:http://ushijima.ictjp.com/

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ゲストハウス「アイランドガール」
香川県丸亀市牛島小浦 1泊3000円 (4名~)
TEL:0877-27-3818

 

(更新日:2017.11.10)
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