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  • 山形県・村山市の暮らし体験記vol.2《地域のデザイン事務所におじゃましますの巻》

山形県・村山市

暮らし・働き体験記

東京を拠点に活動するグラフィックデザイナー、北原可菜さんが、山形で暮らして働いてみた!

山形県・村山市の暮らし体験記vol.2《地域のデザイン事務所におじゃましますの巻》

山形県
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今日から山形のデザイン事務所「akaoni」で数日間お世話になる。村山駅から、2両編成の短い電車に乗り込み山形駅へと向かった。「私と同じくらいの歳の人はあんまり乗ってないな......」学生とおばあちゃんに挟まれる私。足元には部活用のおっきいバッグがゴロゴロ転がってる......私が知っている通勤の光景とは程遠く、なんだか和やかなムードだ。窓の外に私の視界を遮る高層ビルなどなく、ただただ黄金の田んぼが目の前を通り過ぎてゆき、(ちょうどこの頃は、新米の収穫時期で、稲穂はたわわなのでした)、山形駅に到着。美味しい空気を吸い吸い、「akaoni」の事務所へと向かったのです。

イラスト・文:北原可菜

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9/26(月)

「akaoni」は、「アカるくすなオニ」をモットーにした山形市内のデザイン事務所。紙媒体の制作から、WEBサイトの制作、コピーライト、写真撮影までそれぞれのプロが集まっている。

着くやいなや、マネージャーの中村さんが運んできてくれたのは、ぴかぴかのシャインマスカット!  山形県内の「清六ファーム」さんのもので「akaoni」がパッケージやブランディングを担当しているという。さっそくのおもてなしに感動していると、お次はコーヒーが……。これまた「akaoni」がパッケージをデザインした「オーロラコーヒー」。こんな風に、自分のデザインしたもので誰かにおもてなしをしたり、その土地の話で盛り上がったり、土地と人がデザインというツールによってつながっていく光景にひとり感動していた。そして、「美味しいもの」の持つコミュケーション力の高さヨ……!

とういわけで、「akaoni」のアートディレクター・小板橋さんの考えた、私の「akaoni」滞在期間の仕事はざっとこ んな感じ。

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今「akaoni」で動いている案件のデザインを見せてもらい、ブラッシュアップするにはどうしたらいいか、担当のデザイナーと一緒に考えるというもの。なんというか「北原可菜ちゃんのデザインお悩み相談室〜」的な感じである。そして、「akaoni」の事務所が入っている「とんがりビル」の広報誌、「とんがり通信」の企画・編集・デザインをお手伝いすることに……わ〜〜〜ん!

東京では編集、デザイン、DTP 作業と “完全分業制スタイル” の私にとって、まるっと全て一人やるということはほとんどなく、一瞬、戸惑ってしまった。もしかして、地方のデザイン事務所は、“ なんでもやりまっせスタイル ” が、あたりまえなのだろうか……

 

9/27(火)

さっそく「可菜ちゃんのデザインお悩み相談室」が始まった。

難波さん、小谷さん(お二人はデザイナー)「もっと誌面がかっこよくなるにはどうしたらいいですか〜?」

私「(なんというストレートお悩み……)見た目をかっこよくすることより、 まず編集内容をしっかり見つめ直したら、いいのかも??」

聞くと、「akaoni」には編集者がいないため、小板橋さんやデザイナーさんたちが編集業務もやっているという。この時、「最高の編集者こそ、最高のデザイナーだ」と、昔、私の働いていたデザイン事務所のボスが言っていたことを思い出した。“編集” こそ、デザインの基本。編集ができんとデザインもできん! というのだ。そう考えると、編集〜デザインまで請け負う地方のデザイナーは、誌面全体に対して一步踏み込んで考えることが できるし、デザイナーとしてはとてもよいスタイルだなあと思う。でも、編集からデザインまでまるっと提案しなければいけない、高い能力を求められているため、若いデザイナーたちは、編集者がいない現場で、編集とは何かをつかみきれず苦労しているのかなあと感じた。

最初に思った通り、地方は “なんでもやりまっせスタイル” が基本なのであった。大変だああああ……そして地方でいいデザインをずっと生み出し続けるためにも、若手のデザイナーを育てていくことは、地方のデザイン事務所の課題なのかなあと、しみじみ感じた私なのでした。

とはいえ、わざわざ東京から山形の「akaoni」で働きたいとやってくる若いデザイナーはあとを絶たない……そんな「akaoni」の魅力かはどんなところにあるのか、みんなの仕事のスタイルなどを聞きつつ、探ってみることに。

 

9/28(水)

とういわけで、本日は「〜akaoni と可菜ちゃんの大質問大会〜」なのですっっ!

後藤さん(デザイナー)「 akaoniは東京のデザイン事務所と違う感じする?」

私「事務所の周りの環境は東京と違いますけど、一歩とんがりビルに入ると、なんだか一緒ですね。所変われどデザイナーの人の雰囲気や、好きな空間の感じは同じなのかも。なので、すんなりakaoniに溶け込んじゃってます・笑、居心地いい…………」

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私「違うところといえば、仕事のクライアントですかねえ。私は全国で売られているような雑誌を作っていて、クライアントは大手の出版社ということが多いのですが、akaoniは山形のクライアントも多くて、その土地のものをデザインする、ということがやはり多そうですね。そもそも、山形という地方でグラフィックデザインの仕事って、ありますか?」

小板橋さん「 地方にも、デザインの仕事はたくさんあるよ!」

私「ほ、ほんとに…………」

小板橋さん「山形は文化的に豊かで、デザインするモノが多いのかな。 それに対してデザイナーの人数はあっていないのかも」

東京だと無数にいるグラフィックデザイナーの中から、自分のデザインにたどり着いてもらうのはなかなか難しい。ただ、地方だと数少ないデザイナーの中から、自分を選んでもらえる確率は上がる!というわけ。確かに……。akaoniは山形のデザイン仕事をどんと請け負っているため、仕事がたくさんあるようだった。ただ、大きなクライアント仕事もあるけれど、小さな企業や個人の生産者の人からの仕事、というのが多そう。私がakaoniにいる間、小板橋さんはひっきりなしに外に出かけていたが、より人に寄り添いながら、丁寧で細やかに対応しているんだろうなあと思う。クライアントとデザイナーがきちんと顔を見合わせながら信頼関係を築き、丁寧にものづくりをしている感じだ。東京だとどうしても、ビジネスチックな仕事が多い。だから、こういう仕事のやり方はとてもすがすがしくて、憧れるな〜と。

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私「では、根本的な質問ですが、山形でデザインをしている一番の理由って?」

空豆さん(お手伝い)「“水”、“空気”、“食べ物”がうまい!  あとは“自然”。それにつきるね〜!」

やっっ、や、やっぱり。山形の一番の魅力はそこだと薄々感じていましたヨ……。初日に村山市で食べた「米」で、山形の食のレベルの高さをまざまざと見せつけられ、芋煮会や旬のフルーツなど、 数々の食のおもてなしで完全に心を掴まれてましたから。夜遅くまで働く、東京のデザイナーの乱れがちな食生活からすると、山形の食生活の安定感には羨望の眼差しなのでした。

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といっても、「akaoni」のみんなも、夜遅くまで働くというのは、あまり東京と変わらなそうだった・笑。ただ、帰り道に満員電車でぎゅうぎゅうにもみくちゃにされるようなことはなく、す ーっと自転車で山のふもとにある家に帰り、大きな山々を窓の外に見ながら眠る。疲れたら近くの温泉に行ってカラダを癒し、休みの日には山を歩く。いつも、暮らしの中に、すっと自然を感じることで、嫌なことがリセットできたり、リフレッシュできると言っていた。大きな自然がそばにあるだけで元気になる! 人って単純!

私の理想は、生活と仕事はもっとひとつづきであってほしいし、もっと自然の流れに素直に暮らすことだ。だけど、自然と共存しながら生活し仕事をする、人間としてあたりまえのようなことが東京ではなかなか難しいのだ。でも、「akaoni」の人たちはそれがあたりまえにできていて、それに加えて美味しいものが身近にごまんとある!しかも、私が一番不安に思っていたデザインの仕事もたくあんある! というのなら……なんだか、楽園のような場所に思えてきた。そして私の山形移住への思いは一層高まるのであった。

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質問大会も終え、私の業務もようやく終わった………というわけではない!「akaoni 」の 小板橋さんと、『雛形』編集部のよっちゃんと連絡を取りながら、東京に戻った今も「とんがり通信」のデザインを現在進行チューなのです。“なんでもやりまっせスタイル” に四苦八苦しながらも、おもしろい企画を考えているところ。この記事がアップされるまでには完成しているのだろうか。

というわけで、次回は、山形はみ出しコラム! ここで伝えきれなかった、山形で食べた美味しいものたちについて、もうちょっと語らせていただきます!

 

つづく

 

 



編集協力:山形県
すまいる山形暮らし情報館
https://www.pref.yamagata.jp/ylife/

イラスト・文:北原可菜
山形県・村山市の暮らし体験記vol.2《地域のデザイン事務所におじゃましますの巻》

きたはら・かな/グラフィックデザイナー、イラスレーター。1984年、神奈川県生まれ、そののちすぐに福岡県へ。高校まで北九州市で育つ。東京造形大学を卒業したのち、CONCENT、Capを経て、現在デザイン事務所「Cumu」に所属しながらフリーランスのデザイナーとして働く。マガジンハウスの雑誌のエディトリアルデザインを中心に活躍しながら、自費出版の書籍、店舗のグラフィック、雑誌のイラストレーションなども手掛ける。食べることが大好きで、山形で出会ったシャインマスカットの虜に。kitaharakana.tumblr.com

(更新日:2016.11.24)
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