ある視点

日常の風景を旅してみたい

特徴のある物件だけが並ぶ、ちょっとマニアックな不動産屋「R不動産」。
彼らが住まいの次に注目したのは、日常の風景をたのしむ“旅”でした。
暮らしの中にある美しさや、手付かずの自然が残る風景を旅するために、土地の日常に入り込んで、まるで家にいるみたいにくつろげる宿がほしい……
そんな思いからはじまった「R不動産」の金沢での宿づくりの様子やコツを、
6回にわたりレポートしていきます!

vol.1 日常の風景を旅してみたい

いきなりですが宿を始めます

はじめまして、こんにちは。東京R不動産の千葉です。

 

名前の通りボクらは普段、東京で不動産屋をやっています。

特徴のある物件だけが並ぶ、ちょっとだけマニアックな不動産屋。

そして全国で9箇所に同じく「R不動産」の名前で活動している仲間がいます。

 

そんなボクらが今つくっているのが、小さな一軒家の宿。

場所は金沢の街中。すごく古くて町家っぽい建物をリノベーションしているところです。

 

そして、もうひとつ準備を進めているのが、宿泊予約のポータルサイト。

こちらも金沢でつくっている宿と同じように、一棟まるっと自分たちだけで使えるような建物を中心に、ボクらがお薦めだと思う宿だけを集めたサイトにする予定です。

 

どちらも、この夏のオープンに向けて今まさにガシガシと進行中。

間に合うかどうかドキドキですが、準備の様子をお伝えしながら、宿をやる場合の建物選びや、法規上の制限に引っかからないためのポイント、手続きや、どこにどのぐらいのコストがかかるのかなど、お伝えしていこうと思います。

 

なぜそんなことをするかというと…… 理由はまた今度ゆっくり。

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(こちらは小さな家を宿に変えて営業中。外房にある通称「ボートハウス」。目の前に広がるのは大きな“ため池”。)

 

 

R不動産って?

ボクらR不動産がどんな活動をしているかを、あえて一言で表現するなら “自分たちが好きな物件だけを紹介する”不動産屋ってことなのかなと思います。

 

そして、それを気取らず、気張らずやっていけたらと、ゆるい感じでやってきた。そんな10年ちょっとでした。

 

ボクらが活動を始めた頃、世の中では住む所を探す自由度はかなり低くて、例えば「古くて味のある建物に住みたい」なんて不動産屋に言っても、変わり者だと思われるのがオチ。理解してくれる人は、ほぼいませんでした。

 

「衣食住」とよく言うけれど、本当にその順番で暮らしは豊かになってきて、住環境を自由に選べるようになってきたのは、かなり最近のこと。

 

でも、ここ数年で住の自由度もかなり上がってきました。それは、スタイルとかデザインだけじゃなくて、場所もそう。周りでも東京以外へと移住する人がたくさん出てきて、全国各地のR不動産では、そんな人たちが大切なお客さんになっています。

(福岡R不動産では2011年から毎年、移住のための“試し住み”をしてもらう「トライアルステイ」をやっています。)

(福岡R不動産では2011年から毎年、移住のための“試し住み”をしてもらう「トライアルステイ」をやっています。)

 

衣→食→住→旅

で、衣・食・住ときたら、次は何かというと、旅なんじゃないかと…。

 

実は、そんな話はこれまでも何度か出てきました。実際に伊豆七島のひとつ、新島に魅せられて、そこで宿+カフェを始めるメンバーもいたりして。

 

考えてみると“旅”もかつての“住”と同じ。その言葉の持つ自由なイメージとは裏腹に、実際の自由度はそんなに高くないのです。観光地なら情報も交通手段も充実しているけど、それ以外の場所に行こうと思うと、情報も手段もかなり限られるし、泊まる場所も全然ない、なんてことがほとんど。

 

せっかくこんなに美しい風景のある国に生まれたのだから、いろんな場所に行ってみたいと思っても、観光地以外を訪ねるのは至難の業です。

(新島のなんにもない風景に惹かれて、宿+カフェを始めてしまったメンバーも。残念ながら閉じてしまいましたが、夏は予約が取れないほどの人気でした。)

(新島のなんにもない風景に惹かれて、宿+カフェを始めてしまったメンバーも。残念ながら閉じてしまいましたが、夏は予約が取れないほどの人気でした。)

 

 

だから宿を始めてみる

だったらそれ、できるようにしたいよね?

いつもの悪い癖だけれど、それがボクらのやり方。自分たちの欲しいものが世の中にないなら、つくればいい。だって、きっと同じように思っている人がいるはずだから。

 

ボクらが旅したいのは、誰かがつくった観光地ではなくて、日常のなかにある美しさや、手付かずの自然が残る風景、あるいは、ほっとするようなほほ笑ましい情景に出会うことができる場所です。

 

だったら、そんな旅で泊まる宿は、旅館やホテルよりも、建物一棟をまるまる自分たちで使えるような所がいい。その土地での日常にすっぽりと入り込んで、まるで家にいるみたいに、気を使わずにくつろいで旅を楽しめる宿が欲しい。

 

そう思って、ボクらは試しに宿をつくってみることにしました。

2014年夏、千葉県の外房にあった2つの家を、宿に変えたのです。

(同じく外房に建つ、R不動産のディレクターであり建築家でもある馬場正尊の家(一番手前)。家を宿に変えてみるという実験台の第1号にされてしまった。)

(外房に建つ、R不動産のディレクターであり建築家でもある馬場正尊の家(一番手前)。家を宿に変えてみるという実験台の第1号にされてしまった。)

日常の魅力を感じる旅を

そんなわけで、現在3軒目となる宿を金沢で準備中。

いや、真剣度合いでも、新たにつくっているという意味でも、実質1軒目ともいえるかも。

 

金沢は観光地でもあるけれど、あのビジネスホテル・チェーンの本拠地ということもあって、泊まろうと思うと、ついついビジネスホテルになりがち。

 

でも、せっかくなら城下町の風情と歴史を感じながら、地元の人になった気分が味わえるような、街中の一軒家に泊まれたら楽しそう。

 

ということで、まずは宿に変えるための建物探しから始めました。

その模様は、次回ゆっくりと。

(ボクも年に何度か島を旅します。この前のGWには瀬戸内海の小島へ。人口10人ほどという島には築170年の古民家を使った口コミ限定の宿が。いつかこんな島で宿をやりたい。)

(ボクも年に何度か島を旅します。この前のGWには瀬戸内海の小島へ。人口10人ほどという島には築170年の古民家を使った口コミ限定の宿が。いつかこんな島で宿をやりたい。)

家みたいな宿をつくろう!
千葉敬介

ちば・けいすけ/1972年、東京都・大田区生まれ。大学で建築を学んだ後、建築家に師事。設計事務所、CGプロダクション勤務を経て、フリーランスに。グラフィックデザイン、CG製作などを行う。2005年より東京R不動産で活動。他に密買東京、団地R不動産などの運営に携わる。

homepage http://www.realtokyoestate.co.jp/

twitter https://www.facebook.com/realtokyoestate

(更新日:2015.06.23)

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