ある視点
vol.3 イカゴーランド?!対馬名物「たたきいか」
傷つきやすく、流通が難しいイカ
お刺身の盛り合わせの中でも、名脇役で、いい仕事をしてくれるのが、白くて透明なイカ。透明で、パリっとしたイカの活け造りなんて、ちょっとした憧れですよね。イカは、実は見た目よりも繊細です。網で大量に揚げると傷がつき、死んでしまうと言われ、また揚げた後にお互いに噛み付いたりすることもあり、きれいな状態で出荷するのが難しい魚貝類のひとつです。では、イカの活け造りってどうやってるの?「それはもう、1匹1匹釣り上げるしかないんです。」と、イカを通じて島のPRに奮闘している吉村高浩さんが教えてくれました。
日が落ちると輝く、対馬の海
対馬は実は全国でも屈指のイカの漁獲量を誇ります。
「イカは養殖ができないんです。
立てるって、イカを立てるんですか?
「いやいや、立てるって並べるっていう意味なんですよ」
対馬では、日が落ちると海上が光り輝きはじめます。実はこれ、イカ漁の船の灯り。煌煌と光るライトに、イカ達が集まってくるんですね。そこに小魚に似た疑似餌を下げて、釣り上げます。
イカゴーランド?!
「たたきいか」の作り方
高浩さんのお宅では、お父さんがイカ釣り漁船で午後3時頃に出航、翌朝6時頃まで釣っては箱に詰めるという作業をして帰宅します。そうすると高浩さんが、その一部を預かり、干す作業、そして叩く作業に取りかかります。この「たたきいか」が、対馬の名物でもあり、
「たたきいか」がランドマーク?とはどういうことかというと、
ばあちゃんの石
原始的な加工方法
そして、このあとの加工もユニークです。対馬では、
この石、各家庭の庭先や小屋の中にだいたいひとつはあって、この石の上にイカを置き、ハンマーを使って丁寧に全体を叩いていくんです。こうすることで、繊維が壊れて柔らかくなるんですね。それにしても、なんて原始的な加工だろう!
「うちの石は、ばあちゃんの頃から使っているから、30年くらいかな」と、笑う高浩さん。
それと同じぐらい驚くのが、原材料表示。パッケージに入れる際に貼るラベルには、「原材料 イカ」。以上!味付けも、添加物も何もない。ただのイカ。実は、こういうものほど流通がしにくく、
イカ文化を広めるイカ王子
高浩さんに、お父さんと一緒に漁に出ないんですか?と尋ねてみました。
「最近は漁獲量も減ってきているし、油代も高くて、イカ漁は年々縮小しているんだよね。でもこの宝物みたいな対馬のイカ文化を、価値をわかってくれて、少しでも値段が高く売れるところに持って行けたらと思ってます」
高浩さんは、あえてお父さんと一緒に船には乗らず、「たたきいか」の生産を手づくりで進め、そして自分で売りに行くところまで行っています。もちろん、売りに行ったときにお客さんに説明できるように、船に乗ることもあるとか。自称イカ王子というキャラクターで、福岡や関西を中心に販売も自ら行っています。
家族でイカ文化を守る
イカ三昧の民泊
また、高浩さんのお母さん・明美さんと、お嫁さん・ひとみさんは
介護福祉士を経て、8年前に対馬に帰ってきた高浩さん。今はお嫁さんも一緒になって、家族みんなでイカのおいしさを通じて、対馬の魅力を広めようと奮闘しています。
次回は、島中のおじさんたちが楽しんでいる、日本ミツバチの養蜂についてご紹介します!
民泊 吉栄
長崎県対馬市豊玉町千尋藻240-2
☎︎0920-58-0265
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中山晴奈
中山 晴奈/1980年、千葉県生まれ。フードデザイナー。筑波大学、東京芸術大学先端芸術表現専攻修了。美術館でのワークショップやパーティーのスタイリングをはじめ、日本各地の行政と資源発掘や商品開発などの食を通じたコミュニケーションデザインを行う。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、NPO法人フードデザイナーズネットワーク理事長。
https://www.facebook.com/haruna.nakayama.336
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http://fooddesigners.net
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