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対馬のはなし

vol.1 ヒヨドリの分を取っておく、対馬の豆酘みかん

国境の島に通っています

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かれこれ3年ほど前から、大学の研究員として、地域支援の仕事で通いはじめた長崎県対馬市。釡山から49.5km、博多から138kmという距離にある国境の島です。たとえがわかりにくいかもしれませんが、49.5kmといったら私の生まれ育った千葉県松戸市から、羽田空港までの距離ですよ。車をぶっ飛ばせば1時間弱。対馬から釡山まで、がんばる人はカヤックで行くこともできるくらいの、本土(日本)よりも韓国に近い島です。(ちなみに、カヤックで行き来するには事前に届けが必要!)

 

わたしの仕事は、地域の商品開発を通じたリーダー育成です。簡単に言えば、住んでいるところの良さについてあらためて気づいてもらって、発信力を高めてもらう。また全国に仲間づくりをしてもらうのをサポートする仕事です。伝えたいことが明確になったり、仲間ができたりすると、地域ががぜん元気になる。そんなことをしています。結果がでるまですごく時間がかかるし、数値に現れにくいことが多いです。対馬では森林資源を食で伝えるようなPR事業もしています。

 

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離島の悩みって

離島に詳しい方には当たり前のことですが、島で商売をすると、流通にハンディがあります。配送料が高い上に、時間もかかりますよね。また、意外と難しいのが島時間と本土の時間の進み方。発送が遅れるのは当然でしょという島のライフスタイル。だから、流通を含めて考えると商品開発って困難を極めます。でも、こういったことをクリアすると、逆にオリジナリティのある商品になるものです。

 

逆に、島内に入れるのもなかなか大変です。対馬は平地が少なく、田んぼができる場所が少ないことや、酪農をしている人、納豆工場なんかのデイリープロダクトもないものだから、台風の前後は牛乳がスーパーから消えます。なるべく影響を受けないようにと、島の人は小さな畑を持っていて、自分の家用の野菜は確保している場合が多いです。

 

隣の島の壱岐はそういった納豆をはじめとする日常の商品が島内で自給できるようにしていたり、日本最大の離島である佐渡も佐渡牛乳という会社があり、バターやチーズまで作っています。島ぐるみで「なんかあったとき」への備えがしっかりしているように思います。が、対馬は魏志倭人伝の頃からモノや人がひっきりなしに出入りしてきたので、そのあたりの危機感はあまりないのかもしれません。

 

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島の人のための、島のみかん !

離島って、どんなイメージを持たれていますか?なんでも自給自足?魚がおいしい?そうそう、そんな感じです。でも、意外に都市部にいると想像しにくいのが甘いものが手に入りにくいこと。オシャレなお菓子なんかを手土産にすると、みんなすごく喜んでくれます。「かすまき」という伝統菓子がありますが、ガツンとした甘さで島民のみなさんの甘いものへの欲求を満たしているのでは… と思ってしまいます。

 

そして、やっぱりくだもの、食べたいよね?野生のビワなんかもあるけど、そんなに甘くないし… というわけで、約40年前に「温州みかん」を島内用に作りはじめた地区がありました。豆酘(つつ)です。

 

豆酘は対馬でも南側の急斜面の地域。日の当たりがいいので、もしかしてみかんが育てやすいのでは?と数人の村の人が気付き、情熱を捧げたのがこの「豆酘みかん」です。対馬みかんという人もいます。

 

みかんには当たり年と外れ年があります。「多く採れすぎた年は博多にも出荷するけど、まぁあんまり出さんなー。基本は島内だけで消費するわ」とは、豆酘みかん生産組合の組合長 阿比留正さんのお話。島内消費といっても、島民が食べるだけでなく、島外の家族や知り合いに宅急便で送りまくるんだそうです。1年に1度の対馬の果物、島外に出た人には余計に恋しいのかもしれません。

 

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対馬のみかんは腐らない?!

「東京なんかに送るのは緊張するよ。ちょっとでも傷がついてるやつはおくれんけん」えー、どういうことですか?と聞いてみると、みかんの4大傷は「木との擦れ」「カメムシ」「小鳥」、そして「選果機」。

各農家に1台はあるみかんの選果機は、はじめブラシで磨かれ、回転する穴のあいたドラムを転がりながらサイズが分かれて箱に入っていきます。この最初のブラシのところで、みかんはピカピカに。でも、ここで目に見えない傷が付くんだそうです。そこから、いわゆる青カビのような菌がはいってしまうそう。

 

昨年、規格外品の小さな豆酘みかんを購入しました。あまりにいつまでたってもカビてこないので、おなじみ木村さんの奇跡のリンゴかこれは?と感激しました。が、そうじゃなかったんですね。たぶん、選別機にかける間もなく仕分けられたみかんだったんだと思います。たしかに、ピカピカしてなかった。

 

対馬のみかんは酸が強めです。豆酘では12月中旬に収穫がはじまりますが、収穫時は酸っぱい状態。その後、各農家の保存倉庫に置いておくうちに、酸が糖に変わって甘くなるんだそうです。それが甘くなった時期に出荷します。酸が強ければ、じわじわ糖に変わっていくので、腐敗しはじめるのは遅くなります。スーパーのはある意味完熟。だからすぐ痛むんですね。ちなみに、5月まで保存できるということは、半年も倉庫に眠らせられるってことです。すごい。

 

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ヒヨドリの分を取っておく

今年ははずれ年だそうで、3000tの生産量。昨年は7000tだったそうです。みかん農家ってけっこう不安定なんだな。豆酘のみかん農家は今では30軒。平均年齢は70歳近い。でも、数年前に40代の若者がお嫁さんを連れて帰ってきました。小森農園の小森さんです。

 

小森さんは、実は半漁半農の対馬らしい仕事の仕方をされてます。どうやら朝は船に乗り、午後はみかん畑らしい。対馬の人は働き者です。こういったダブルワークは昔々、防人がいた頃からで、半分防人して、半分農家をしなさいというのが推奨されていたというのだから、いろんな意味で先端的な場所でした。

 

小森農園では、対馬で唯一?のみかん狩りができます。「みかん狩りは枝を傷つけたりするから、木には良くないけど、みんな楽しみにしてるけん。鳥に食わせるよりは、みんなに喜んでもらいたいし、なにより、一度来てくれた人はまた直接買いにきてくれる」と小森さんは言います。

 

対馬のみかん農家の最大の敵は、ヒヨドリ。おいしい木を知っていて、おいしいタイミングで総攻撃をかけてくる。「みかんは鳥との戦い。だから、ヒヨドリ用に1本みかんの木を取っておく。1本木があれば、他のみかんに手を出さない」。分け合うことで解決する、島らしい考え方かもしれません。

 

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甘いみかんの見分け方って? !

甘いみかんってどうやって見分けるんですか?とはじめにお話をうかがった組合長・阿比留さんに尋ねてみると、「対馬のみかんは甘さでランク分けしないんやわ。糖のチェックの機械は対馬にはないけん」ということで、味にばらつきがあるんだそう。なんとおおらか… 「甘いかどうかは俺が見ればわかる」えー?人間センサー?と驚いていると、皮のふっくら感と、大きさ、色で、総合的に甘いかどうか判断できるんだそう。

 

すっかり第2の故郷となっている対馬のいいところは、緩やかな関わり合いで、島内の絶妙なバランスを保ち続けていること。自然体で、無理をあまりしないので、外から見ると「ゆるい」と言われてしまうかもしれません。みかんもヒヨドリにあげちゃうし。でも、限られた資源の中で、より持続的に活用し、生きていくのに、人間も動物もないんですね。また、おいしいの基準も、ひとつじゃない。島にいるとホッとするのは、多様さを認めてくれる場所だからかもしれません。

 

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次回は、森林資源のしいたけについてレポートします!

 

 

INFORMATION

_DSC0309小森農園
対馬市厳原町豆酘2948
電話番号 0920-57-0009
みかん狩り体験は11月中旬から12月20日頃まで
入園料 中学生以上一人200円(小学生100円)
収穫したみかんは、1kg200円で買い取りできます。

対馬のはなし
中山晴奈

中山 晴奈/1980年、千葉県生まれ。フードデザイナー。筑波大学、東京芸術大学先端芸術表現専攻修了。美術館でのワークショップやパーティーのスタイリングをはじめ、日本各地の行政と資源発掘や商品開発などの食を通じたコミュニケーションデザインを行う。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、NPO法人フードデザイナーズネットワーク理事長。
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