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対馬のはなし

vol.6 道をつくるところからはじめた、対馬の藻塩づくり

灘塩工房の代表・権藤光男さん。藻塩の原料となる海水採集地にて。[写真:志鎌康平]

灘塩工房の代表・権藤光男さん。藻塩の原料となる海水採集地にて。[写真:志鎌康平]

粒が大きく、色の濃い「藻塩」の魅力

対馬のお土産といえば、あんこをカステラで巻いたロール状の和菓子「かすまき」、そして以前もご紹介した「原木しいたけ」が有名です。でも、旅慣れた人におすすめしたいのが、島内に2軒ある塩工場で炊き上げられた「藻塩」。

 

藻塩と聞いても、あまり馴染みがないという人も多いかもしれません。藻塩は、全国数カ所の地域でつくられていて、特徴はほのかに色がついているところ。天ぷらやお刺身など、シンプルな料理に使うのがおすすめです。また、スープに使うと、海藻由来の旨味も一緒に溶け込み、料理がワンランクアップするともいわれています。

 

日本各地の藻塩の中でも、権藤光男さんがつくる塩は、ゆっくり炊き上げるので粒が大きく、海藻由来の色が濃いのが特徴。今回は、そんな知る人ぞ知る対馬の塩づくりの開拓者、権藤さんの工場にお邪魔しました。

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対馬の青く澄んだ海が、藻塩のおいしさの秘密。

道路から手づくりした、藻塩工場

「対馬中をまわって、この場所を見つけたんですよ」と話してくださった、権藤さん。対馬全島のなかでも、一番海水が透き通っているといわれる、対馬のさらに離島にあたる赤島の入り口にさしかかる辺りに、権藤さんの藻塩工場はあります。

 

「ここは道路も何にもない場所だったんだけど、藻塩をつくる場所として、ここしかないと思ったんです。だから、この工場は、道路から自分でつくったんですよ。建物も、もらった真珠養殖の作業小屋を島から船で運んできて、一人で建てました」

このお話を聞くだけでも、塩の美味しさが倍増しそうです!

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工場から上を見上げると、対馬の離島・赤島へ続く赤い橋が見えます。

雑木林と岩盤層が浄化する、対馬の海

「この場所に移ってもう11年になります。塩をつくりはじめる前は、島内でチャンポンなんかを出す定食屋をやっていたんです」

家族経営の食堂をやっているときから、塩づくりに取り組みはじめたという権藤さん。今の工場をつくる前にも、別の場所で塩づくりに挑戦しましたが、赤島の付け根のこの場所を見つけたことが、現在の塩づくりにおける最大のこだわりだといいます。

 

「きのうも雨でしたけど、もうこんなに青く澄んでるでしょう? 雨が降って海水が濁っても、一日であっという間にきれいになってしまうんです。その秘密が、雑木林が育つ岩盤層にあります」

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岩盤の上に、雑木林がへばりつくように広がっています。

対馬は森の島。島の約90パーセントが森林で、その残りわずかのところに人々はまちをつくり、田畑を耕しています。

「対馬の魅力は雑木林と海との関わり合い。そして、対馬は土が少なく、岩肌なんです。だから大雨が降っても、海は濁らないんです。これが、対馬の塩の品質であり、味にもつながっています」

塩の話を聞きに来たのに、森の話になってしまうのが、対馬のすごいところです!

 

海藻の旨味を凝縮させる、こだわりの炊き上げ方法

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アラメ・昆布・ひじきの3種類の海藻が、藻塩の色と旨味の素となります。

権藤さんの藻塩のおいしさの秘密は、海水だけではありません。アラメ、昆布、ひじきといった、対馬で穫れた3種類の海藻を、こだわりのバランスで炊き上げます。

 

「全国でも藻塩をつくっているところが何数カ所かあるけど、こんなにたくさん海藻を入れてる塩はないんじゃないかなぁ。芯からエキスを取り出すために1日がかりで弱火でじっくり炊き上げて、手間と時間がかかる焼き塩になるように仕上げていきます」

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炊き上げる装置もご自身で制作。独自の屋台風釜です。

権藤さんが語る、藻塩づくりの夢

前回の連載でご紹介した、海の資源も問題に直面していましたが、天候の変化や、林業の産業構造が崩れ、人口が減って管理が思うようにいかない中で、藻塩づくりも問題に直面しています。
「メインに使っているアラメ、またひじきも、量がとれなくなってきました。対馬は今、沿岸海域の海藻が死滅する現象『磯焼け』が深刻な問題になっていますが、なんとか漁師の人たちにお願いして、増産に挑戦してもらっているところです」

 

 

5人の子宝に恵まれた権藤さんのお子さん2人は、対馬にあるもうひとつの塩工場にお勤めです。

「自分は今76歳ですが、工場を建て直しているのは、息子たちのためです。子どもたちに引き継げるようにがんばっていますけど、自分もまだ現役」と、笑います。

工場に続く急斜面も、これから直して、バスが入れるようにして……と、夢を語ってくださる姿に、わたしも一緒になってわくわくしてしまいました。

 

生きていく上で欠かすことのできない塩ですが、日常の必需品ほど、つくっている人の顔が見えるものを使うのは気持ちのいいものです。ぜひ、ご興味のある方はお手に取ってみてください!

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炊き上げる設備も権藤さんの手づくり。権藤さんはマッドサイエンティスト?!

INFORMATION

対馬の灘塩工房

 

権藤さんの藻塩を購入するなら、「対馬観光物産協会ネットショップ」から。対馬空港、中心部の厳原町(いづはらまち)にできた観光情報館「ふれあい処つしま」でも購入可能です。

対馬のはなし
中山晴奈

中山 晴奈/1980年、千葉県生まれ。フードデザイナー。筑波大学、東京芸術大学先端芸術表現専攻修了。美術館でのワークショップやパーティーのスタイリングをはじめ、日本各地の行政と資源発掘や商品開発などの食を通じたコミュニケーションデザインを行う。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、NPO法人フードデザイナーズネットワーク理事長。
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