INTERVIEW
  • 書籍「サムガールズ〜あの子が故郷に帰るとき〜」発売決定! シソンヌ・じろうインタビュー

シソンヌ・じろうが実在する10人の女性の半生を妄想で描いた短編小説

『サムガールズ 〜あの子が故郷に帰る時〜』

女性のポートレートをもとに、じろうさんが出会ったこともない女性の半生を妄想で描く!『雛形』の人気連載「あの子が故郷に帰るとき」をまとめて、一話書き下ろしを加えた書籍が発売します。

書籍「サムガールズ〜あの子が故郷に帰るとき〜」発売決定!
シソンヌ・じろうインタビュー

東京都


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先日もチラリとお伝えいたしましたが、2017年より連載を続けてくださっていた、シソンヌ・じろうさんの“妄想”短編小説「あの子が故郷に帰るとき」が、この夏、書籍になって発売することが決まりました。うれしい!!

会ったことのない女性の一枚のポートレートから“妄想”する物語は、どんな風に描かれてきたのか。勝手に(快諾いただきつつ)妄想された女性たちから、結果的に「これが本当の私なんじゃ……」と愉快な混乱を招くほどのリアリティを招いてしまった“帰郷物語”はどうやって生まれたのか。書籍化にあたり、8月のシソンヌ単独公演前の忙しいじろうさんをつかまえて、摩訶不思議な連載について振り返っていただきました。

写真:加瀬健太郎 文:菅原良美

生まれた背景、青春時代、帰郷…
“妄想”がリアルな物語になっていくまで


——この連載は、会ったことのない女性のポートレートと、名前・年齢・居住歴という最小限のプロフィールだけをじろうさんにお伝えして、“あの子”の半生を妄想して物語を作ってもらいました。実際に、どんな風に書き進めていったのです
か?

じろう:写真の顔を見て、パッと話を思い付く方もいれば、そうでない人もいましたね。物語に関する情報は写真から得るしかないので、ギターを持っている人はギターの話になるし、毛皮をかぶっている人はそれに関連づけた話になっていて。

第4話「ギターに出会って変わった私の人生」より

第4話「ギターに出会って変わった私の人生」より

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第5話「冬子と元・冬子」より

——被写体になっていただく女性たちは、写真家の志鎌康平さんと編集部で相談しながら決めていったのですが、彼女たちの本当の“居住歴”は、物語の大事な要素になると思っていたので、なるべく特徴のある方に協力していただくようにしていて。

じろう:居住地はなるべく追うように構成していました。生まれた背景から、どんな風に育って、中学校時代をどう過ごして……と、細かく設定していくのは大変でしたね。中には居住地がめちゃくちゃ多い方もいたので諦めたこともあったし。これは無理だ!って(笑)。最初から、物語の大筋を決めて書くっていうよりも、書きながら思い付いたことをバンバン入れていく感じでしたね。ネタを作る時もそうなんで。

——海外を経由している方にも何人か登場してもらって。

じろう:けっこういましたね。後半に出てくる人は、ほとんど海外を経由していますよね。海外は、留学など行く理由付けが似てしまいがちだから、そこが難しかったですね。今はけっこう海外に住む人って多いんだなって思いましたね。自分はずっと日本にいるので……

——英語が好きで高校までECCに通っていたんですよね(笑)。

じろう:はい。いいなー留学したかったなーって思いながら経歴を見てました(笑)。_DSF9520

——女性たちのキャラクターも、一人称が「私」や「あたい」だったり、口調や語尾の言い回しなどの微妙な変化で、それぞれのパーソナリティを際立たせていましたね。

じろう:一応そのつもりで書きました。一冊通して読んだ時に、主人公同士のキャラクターが似ないかなって心配だったんですけど……。

——まったく似てないと思います!

じろう:それはよかったです。全話通して読んでみると、前半に書いた話と後半に書いた話は違いますよね。前半は“お笑い”として書いている要素が強いと思います。表現としても、文字で笑わせようとしている感じが、前半は多いんですよね。後半は全体の雰囲気自体を面白くする方向にシフトチェンジしていっている様子が読み取れますね。……しかし、修行の一年でした、この連載を書くことは(笑)。

——それは、すいませんでした!

じろう:いやいや、こういう自分にとってカロリー高いことをやらないと成長していかないんで(笑)。

——文字量を見ても、前半は多くて後半にかけてコンパクトになっていっていて。文字数だけでなく、物語が進んでいくスピード感もくるくる変化していて、毎回原稿をいただくたびに。すごく練られているんだろうなあと感じていました。

じろう:書く技術が上がっていればいいですけどね。でも、打った文字数は嘘をつかないと思うんで。文字を打てば打つほど得るものはあると思うんです。今回に関しては、自分がネタを作っていく上でも良い経験をさせてもらいました。

——ありがとうございます。確かに、シソンヌのネタにも通じるような人間の細かい描写の面白みや、心情の機微にグッときてました。実際に本人から「これが本当の私かも……?」という感想もいただいたり。

じろう:ああ、そういう感想いただきましたね。そんなことあるか!って思ってましたけど(笑)。自分のこれまでの経験をもとに書いた部分もあるけど、とにかく、写真の中の人になりきって書いていました。

——特に、小さい頃の記憶って曖昧で。自分の記憶というか、写真に写っている情報や、両親から聞いた話で形成されていることが多いのかもなと改めて思いました。そうして読んでいくと、「あれ?今までの私の記憶は嘘で、ここに書かれているのが本当か!?」と、パラレルワールドに陥る人もいたり……

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じろう:確かにねえ。そういう感覚で読んでもらっていたんですね。最初にいただくプロフィールで、年齢も教えてもらっていたので、冒頭に「私は何月何日生まれ」って誕生日を書くことにはまっていたんです。いつか当たるんじゃないかなって(笑)。でも途中から、無理だと思って諦めました。これは当たらねーだろうって(笑)。

——第5話の『冬子と元・冬子』に、アラスカンマラミュートという犬種が出てきますが、後日、主人公の女性がじろうさんが私の一番好きな犬種をどうして知っていたのでしょうかと言っていました。

じろう:何かしら書くと当たるもんすね(笑)。僕も知らなかったですもん、アラスカンマラミュートって犬のこと。

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——第3話 『私のばあば。私はばあば』の主人公の方からも、小説の中にあるエピソードと似たような体験をしたと教えていただいたり……。

じろう:ああ、撮影のちょっと前におばあちゃんが夢に出てきたって書いてくれてましたね。そんなことあるんだなって思いました。このふたつの話は、不思議と自分の中でも残ってるんですよね。ドラマの撮影で栃木方面に電車で行く時、熊谷を通ると「あ、冬子がいたところだ」って自分でも思ったり(笑)。「あいつ、ここで暑さに苦しんでたんだな」って。

——あの子たちが生きる土地に関してもいろいろ調べてくれてましたよね。

じろう:妄想小説なので、何を書いてもいいっていうのは、自分のルールのひとつとしてあって。正解じゃなくても妄想して書いてるから。でも、一応その土地の特産品を調べてみたりしましたね。なので、リサーチはしたりしなかったりです。第9話の 『夜行バスに揺られて』では、どれだけ調べても伊達市から埼玉県に行くバスは見つからなかったですけど(笑)。でも、まあいいやと思って。

——第8話『ラッキー集め』も反響が大きかったです。

じろう:ああ、意外ですね。わりと男目線の話になった気がしてたので。昔、僕が住んでいた家の近所にクジ屋さんがあったんですよ。同級生の子の家だったんですけど。そのあたりは自分の中の記憶だけど、誰かしらのところにもあったんじゃないかなと思って。

——『ラッキー集め』の主人公の方は、昔からの友人になんの疑いもなく“こんな過去があったんだね”って感想をもらったと伺いました(笑)。それぐらいドキュメンタリーになっていたんですね。

じろう:確かに、“妄想小説です”という説明に気づかず、「私の話、こんな風に載ったよ」って紹介されて読んだら、実話だと思って読むでしょうね(笑)。そう考えても、連載の中盤あたりから、話のリアリティが強くなっているんだと思います。前半はふざけながらも「そんなことあるか!?」ってイメージのものを書いていたと思うんですけど、中盤から、全体的にトんでる話でもリアルな雰囲気がベースにあって。

——普通なのに、どこか狂ってる感じがありますね。

じろう:やっぱり、人間はどこかしら狂ってるところがありますからね。人には言わずに自分の中だけで成立していることで、他人に言わしたらそれは狂ってるよっていう変なクセとか趣味志向とか……誰しも持っていると思うんで。

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——そうですよね。この中盤からリアイティが増してきているのは、意識して表現していったのですか?

じろう:書いていくうちに、話を落としこんでいく地点が高くなっていったんじゃないですかね。ネタとしてではなく、ひとつの作品としてその人になって書くっていう度合いが強くなったからそうなったのかもしれないですね。普段書くコントのネタでも、あんまりトびすぎない、リアルな感じはあると思うので。脚本だからこう書く、ネタだからこう書くっていう棲み分けは自分の中でないんですよ。いつもなんとなく思い付いたものを書くっていうだけなんで。

——連載を始めてもらった一年前から、どんどん“書き仕事”が増えていると聞きました。コントのネタ書きはもちろん、ドラマ「卒業バカメンタリー」(日本テレビ系)の脚本や、映画「美人が婚活してみたら」(2019年公開予定)の脚本も手がけていますよね。雑誌「Tarzan」でも連載が始まっています。

じろう:そうですねぇ……去年一年は書いている記憶しかないぐらい、どこいってもパソコン開いてやってました。舞台の本番前は、小道具のデスクみたいなのを使って書いたり(笑)。なんやかんや書くのが好きなんだと思いますね。これだけやれてるってことは。舞台に出るのも楽しいですし書くのも楽しいから、大変ですけどすごくやりがいは感じますね。外に出て無理矢理書く環境を作ってます。家にいると一切書かないので。

——今年の年始に掲げた抱負なんでしたっけ……

じろう:ああ、今年は「〆切を守る」……一発目の提出物の原稿で〆切をやぶりましたね(笑)。

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——(笑)。じろうさんは青森県の弘前市出身ですが、この“帰郷物語”というテーマで、ご自身の故郷に対する想いや記憶などを込めた部分はありますか?

じろう:子どもの頃、ハスキー犬を連れている近所のお金持ちの女の子とかいたり。当時ハスキーを飼っている人なんて一人もいなかったので本当にびっくりしたんですよ。あんなでっかくて狼みたいな犬で。僕も大学のグラウンドで犬を飼ってたので離して遊ばせてると、そのハスキー犬の飼い主も連れてきて、離して遊ばせたりして。もう、ウチの犬がハスキーを怖がっちゃって(笑)。ハスキーは楽しくて追っかけているんでしょうけど、ウチの犬は尻尾を下げて逃げ回ってたんで。あいつらが暴れるさまの描写とか入ってますね、じゃれあってるけど襲っているようにしか見えないとか。
あとは、主人公たちが、東北の田舎の人が多くて、僕も田舎っぺで東京出てきているんで、初めての東京の怖さみたいなのもはありましたからね。すごく実家に帰りたくなる瞬間とか、お母さんと電話したこととか。たまに見かける地元ナンバーの車を見つけて実家が恋しくなるとか。東京で青森ナンバー見ると、「ああこの車は青森から来たのかあ」とか。そういう瞬間にちょっとだけ救われる感じがするというか、勇気をもらうことはあるんですよね。

——撮影自体も、なるべく被写体の方の地元だったり、ふだんよく行っている場所とか、生活圏内の中で撮らせてもらうことが多かったです。じろうさんのそういう感性に合うかなと思って。

じろう:そうですよね。第7話の『こうた』も、なんてことない商店街の、なんてことない電気屋さんの前の写真だけど、写真をみてすぐに「こういう話にしよう」って思いましたね。

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——写真もどんどんリアルになっていって、それも良い作用だったのかもしれないです。そして!これまでの連載にもう一話、スペシャルな書き下ろしを加えて、「サムガールズ あの子が故郷に帰るとき」というタイトルに改題し、書籍としてこの夏(8月24日発売予定!)みなさんのもとにお届けします。どんな時に読んでもらいましょうか。

じろう:はい。短編だし、特に難しい話もないので、寝る前に読んでもらうのは良いんじゃないかと。どの話のどの部分で読んでも止めても好きに読んでもらえたらと思います。最後の“あの子”の書き下ろしは今までにない新しいやり方で執筆しますので、楽しみにしていてください。

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Somegirls_11thサムガールズ - あの子が故郷に帰るとき』著・じろう(シソンヌ)
2018/8/24(発売予定)


貴女は貴女。私も、貴女です。――じろう

実在する10人の女性の半生を妄想で描いた、芸人シソンヌ・じろう初の短編小説!人気お笑いコンビ・シソンヌのじろうが、ローカルライフWEBマガジン「雛形」で連載した妄想短編小説「あの子が故郷に帰るとき」を待望の書籍化! 
本書は写真家の志鎌康平氏が各地で撮り下ろした女性ポートレートをもとに、著者が妄想だけで、出会ったこともない全国各地の女性たちのバックストーリーを描き出すという、自身初の短編小説集です。書き下ろしも含む全10作品を収録!
お会いしたことのない女性の写真を眺めながら勝手にその人の人生を綴りました。 発行:ヨシモトブックス   発売:ワニブックス  ご予約受付中!

書籍「サムガールズ〜あの子が故郷に帰るとき〜」発売決定! シソンヌ・じろうインタビュー
じろう

青森県弘前市出身。2006年4月に結成したシソンヌのボケ担当。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。東京NSC11期生。2014年第7回キングオブコント王者。演技力の高いコントを得意とする。著書に“川嶋佳子”名義で自身初の日記小説として書籍化した『甘いお酒でうがい』(KADOKAWA)がある。2018年8/1~26まで赤坂RED/THEATERでシソンヌライブの一カ月公演も決定している。
http://sissonne.jp/
(更新日:2018.07.12)
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