INTERVIEW
  • 都市から山形を探訪する。「内なる感覚の中へ」【山形ビエンナーレ2018】ミロコマチコ×山フーズ・小桧山聡子対談〈後編〉

山形ビエンナーレ2018×『雛形』

私と山形、それぞれの旅へ

主催者、アーティスト、スタッフ、それぞれの視点を交差させて「山形ビエンナーレ」を深堀りする連載企画。三者三様のジャーニーのおはなし。

都市から山形を探訪する。「内なる感覚の中へ」【山形ビエンナーレ2018】ミロコマチコ×山フーズ・小桧山聡子対談〈後編〉

山形県
ミロコマチコさん(画家・絵本作家)、小桧山聡子さん(「山フーズ」主宰)

居住地: 東京都
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「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018」参加アーティストより、画家・絵本作家のミロコマチコさんと、食とそのまわりの提案を行う「山フーズ」こと小桧山聡子さんの対談企画〈後編〉は、開幕2日目の9月2日(日)にふたりがコラボレーションして行う公開パフォーマンス「山分け」の話題からスタート。公私共に親しく、同世代のアーティストとして刺激し合う仲のふたりが、互いの作品や表現に対する思い、東京と山形を行き来するなかで芽生えた気づきや暮らしの変化を語ってくれました。

《前編》はこちらから

写真:永峰拓也 文:木下美和

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絵と食、互いの表現が
動物的な感覚を呼び起こす

——今回の山形ビエンナーレは前年以上に毎週末さまざまなイベントが行われますね。92日(日)にはふたりのコラボレーションによる「ミロコマチコと山フーズの夕食会〈山分け〉」というパフォーマンスもあります。どんな内容になるのでしょうか?

ミロコマチコ(以下、ミロコ):だいぶ決まってきました。いつもこびさん(小桧山さん)のつくるものは、食なので、みんなの身体の中に入っていくじゃないですか。それがすごくうらやましいなと思っていて。その力を借りて、絵も一緒に身体の中に入っていく、食べてもらうみたいな。ざっくりとしたイメージはそんな感じ。毎回どういう形にしようかというのをこびさんと相談しながらつくっています。今回は私たちが山形でもらった食材やいろんなものをみんなで共有しよう、という感じかな。そういう意味で「山分け」というタイトルにしました。

——ふたりでパフォーマンスをするのは何度目ですか?

ミロコ:私の個展の時にケータリングは何度もやってもらっているんですけど、パフォーマンスとして一緒にするのは、今回で3度目。

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〈いきもののおまじない〉展でのライブ風景より/2017年、アルフレックス東京

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〈いきもののおまじない〉展でのライブ風景より/2017年、アルフレックス東京

——今さらですが、ふたりはどういうきっかけで出会ったんですか?

山フーズ・小桧山聡子(以下、小桧山):ふふふ(笑)。

ミロコ:ふふふ(笑)。

小桧山:私が今のアトリエを借りる前に、友人のデザイナーと何人かでシェアして使えるような一軒家を探している時期があって。自宅から近くていいじゃん!っていう物件を見つけて、何度も内見に行ってほぼそこにしようと決めていたんです。そしたら、不動産屋さんに「もう1社の仲介業者さんに抑えられちゃいました」って言われて借りられなくなってしまって……。友だちと「残念だったねー」って話してたら、その数週間後に一緒にシェアしようと思っていたデザイナーさんから連絡がきて、「友だちが新しい家に引っ越したからペンキ塗るのを手伝いに来て」と言われて、住所を聞いたら「あの借りるはずだった家!」ってなって。それがミロコさんの家だった(笑)。

ミロコ:そうなんです、私が先に抑えちゃった(笑)。

——なんとー! またすごいご縁ですね。

小桧山:その時まで面識はなかったんですけど、それ以来遊びに行くようになって、お家でごはんを作ったり、ケータリングをしたり……というのが始まりです。

ミロコ:こびさんに使われてるうちの家も見てみたかったけど(笑)。

小桧山:ははは(笑)。

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——お互いの作品や表現についてはどんな印象をお持ちですか?

小桧山:私は普段料理を作っているんですけど、“食べる”っていう行為そのものに興味があって。身体的に料理を食べるということとか、おいしいって何だろうとか。例えば、同じものを食べたとしても、食べている自分たちもなまものだから、体調や感情によって同じ味に感じなかったりするのがおもしろいなって思うんです。“食べる”って実はとても生々しい行為だったりもして。

日常生活を送っていくなかで、生々しい部分って排除するじゃないですか? 社会に適応していくために見ないように、ないものとして過ごすことが多い。でも、そういうものに触れることってすごく意味があるし、重要だと思うんです。“食べる”って、みんな1日1〜3回はやってる行為で、何も考えなくても通り過ぎちゃうんだけど、実はすごくいろんな身体の感覚を使ったりとか、生き物を食べて体内に取り入れるとか、そういう行為の時間。自分の動物的な部分と向き合おうと思えば、向き合える時間だなと思っていて。

料理を提供する仕事をしてるっていうのもあるんですけど、そういう自分の中の生々しさとか動物的な部分とか……匂いのようなものをミロコさんの絵からは感じる。だから共感できるというか、素晴らしいなと思っています。ミロコさんの絵を見ると、自分の動物的な部分が揺さぶられて顔を出すところがあって、惹かれます。

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ミロコ:私からも、そういう意識はすごくある。食べ物が身体に入っていくものとしてダイレクトにあるように、絵も見ることによって身体に入れたり感じたりすることをしたい。確かに、日々の食べることを特別なことだと考えなくなりつつあるけど、こびさんの作ったものを食べたり体験したりすると、それ(動物的な部分)を再確認させてくれる。例えば、手で食べてみたり、ちょっと違う方法や形にしたりするだけで、新しい気持ちで食べることをちゃんと意識できる。そういうことを与えてくれる人だなぁと思っています。

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都市の当たり前が通用しない
ありのままで向き合う山形での日々

——山形と東京を行き来する中で、新たに感じたことや気づいたことはありますか?

小桧山:山形ビエンナーレに参加することが決まって、初めての現地打ち合わせで山形に向かっていた時は、「芸術祭だし、こういうコンセプトでこういう作品がいいかな」と、いろいろ考えていたんです。でも実際に山形に着いて山に案内されて入ってみたら、あまりにも自分自身に受けるものが強くて、山の中で何もできない自分がいました。ちゃんと立っているだけで精一杯。東京であれこれ考えていたものが、陳腐っていうか、意味なく思えて。なので、一旦これまでの考えを全部取っ払って、山形で出会うものとまっすぐに向き合って、何を感じられるかということにだけ全力を注ごうと思いました。

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小桧山:そして気がついたのは、知ってるつもりになってるところがいっぱいあるなということ。命をいただくとか、何百回も言葉としては聞いているけど、実際体感として全然わかってなかった。わかったつもりになっていることをどれだけ排除できるか。どこかで格好つけたいと思っている部分も絶対にあって。そういうのをどれだけ無くしてそこに立って、受け取れるか、というのがすべてでした。その感覚は、やっぱり実際に山に入ってみないとわからなかったと思う。そこが自分の中で大きく変わったところかな。それからは、毎回余計なものをなるべく持たない状態で山形でのフィールドワークに臨むようになりました。でも、そうは言っても私は山形に住んでいる訳ではなく、東京との行き来の繰り返しなので、山で崖を登って山菜を採っていた次の日には、銀座でパーティーのケータリングとかしてて(笑)。

——振り幅がすごいですね(笑)。

小桧山:はい。結構毎回それが激しくて。でもその感じも良かったというか、だからこそできたっていうのもあると思います。ついさっきまで聴こえていた山の風のザワザワが、数時間後には新宿の人の喧騒に変わる。この感じって何だろうっていう振り幅がすごくて。そこから立ち上がってくるものとか気づかされるものはすごく多くて、毎回おもしろい体験でした。

ミロコ:私も似たような感覚がおおいにあって、東京から山形へ向かう新幹線の中でいつも感じています。3時間くらいかけて、だんだん、だんだん、削ぎ落とされて、裸になっていく感じ。

小桧山:うん、すごくわかる。

ミロコ:いろんなものを持ちすぎてたけど、山形に向かうにつれて意味なく感じてくる。東京にいるといろんなものがすでに当たり前にあって、それをあんまり意味なくというか、何も考えずに使いまくっている気がする。でも山形に行くと、人の営みがあって、そこに理由があっていろんなものがある。冬で雪が降るとできないからこれを準備しておかなくちゃ、とか。生きるためにすることが中心。それをすごく感じます。山形では人間力みたいなことが必要になっているなあって。今回は山形に行って絵を描くので、そういうものを感じながら作品をつくるっていうのは、東京でつくるのとはまた違うものが生まれるのではないかなと思っています。

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——ミロコさんは東京生活どのくらいですか?

ミロコ10年くらい。そうそう、でもそろそろ来年くらいには離れようと思っていています。島に。

——島?!

ミロコ:奄美大島に引っ越す予定です。ちょっと自分がナヨナヨしすぎてるから、もう少し人間力を磨かなきゃと思って。こっち(東京)だと、人間が主役みたいな気持ちにすぐなってしまうけど、本来そうじゃないところに一度身を置いてみたくて。過酷な自然にお邪魔します、という感じ。

——山形での体験が影響している部分もあるのでしょうか?

ミロコ:もしかしたらあるのかもしれないですね。あ、山伏の坂本大三郎さんの存在はなかなか大きいかもしれない。自然の中で生き残る力を持っている人。そういう人間力が必要とされる場所に住んでみたい。

小桧山:奄美大島は前々から移住してみたいと思ってたの?

ミロコ:東京を離れたいと思っていたけど、どこに行くかがずっと決まらなくて。奄美大島には去年たまたま絵の仕事のリサーチを兼ねて行ったんです。それで空港に降り立った瞬間に「ここがいい!」ってなって。すぐに物件とか探し始めた(笑)。

小桧山:えー! うそすごいね〜。

ミロコ:「ここやここや〜」みたいになって、トントン拍子に決まっていった感じ。まぁどうなることやらですけど。東京でちょっと虫がいるだけで「いやー!」とかなってるのでどうしようかと(笑)。

小桧山:あははは(笑)。

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——小桧山さんは東京以外に住むことを考えたことがありますか?

小桧山:そうですねー、ちょっと離れたいなという気持ちがここ数年生まれ始めてはいるけど、まだ全然現実的なイメージができてないです。最近、仕事を通して山形やほかの地域にも行く機会が増えてきたことで、東京の流れって異常なところがあるなって気づきました。私は生まれ育ってずっと東京だったので、都市の生活に疑いがなかったというか、スピードやものの量の多さの異常さに気づいていない部分があって。

ミロコ:わかるなあ。だから私も今後の人生は、いろんなサイクルの中に自分がいることを忘れないようにしたい。生活が一番にあって、絵を描きたい。そして1つの場所に縛られず、いろんなところに拠点があればいいよね。引っ越したら、うちのキッチンを奄美拠点としてどうぞ(笑)。

小桧山:ははは(笑)。本当に? いいなあ行きたい!

——では最後に、いよいよ開催が近づいてきましたが、今回の山形ビエンナーレで楽しみにしていることを教えてください。

小桧山:私は山形ビエンナーレにアーティストとしてもお客さんとしても初めて行くので、あの会場一帯がどんな雰囲気になるのか楽しみです。私の作品が展示される「とんがりビル」内ではライブやイベントもたくさんあるのでそれも楽しみ。

ミロコ:私は「文翔館」での設営が楽しみ。自分のというか、アーティストやスタッフのみんなが同時にそれぞれの部屋で作品をつくり上げて行く様子を見るのが好きなので、今回もその時間を楽しみにしています。

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みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018


東北芸術工科大学が主催し、山形市で2年に1度開かれるアートの祭典。山形市旅篭町にある国の重要文化財「文翔館」を中心に、市内各所で多彩なプログラムを展開。3回目となる今回は「山のような」をテーマに、9月1~24日までの週末、金・土・日曜、祝日の計13日間にわたって行われます。

会期:2018年9月1日(土)~24日(月・祝) ※期間中の金・土・日曜、祝日のみ開催会場:山形県郷土館「文翔館」東北芸術工科大学とんがりビル郁文堂書店BOTA theatergura長門屋ひなた蔵・塗蔵
料金:無料(一部イベントプログラムは有料)
アクセス:https://biennale.tuad.ac.jp/access
問い合わせ:023-627-2091(東北芸術工科大学 山形ビエンナーレ事務局)
URL: https://biennale.tuad.ac.jp

 

都市から山形を探訪する。「内なる感覚の中へ」【山形ビエンナーレ2018】ミロコマチコ×山フーズ・小桧山聡子対談〈後編〉
ミロコマチコさん(画家・絵本作家)、小桧山聡子さん(「山フーズ」主宰) みろこまちこ/画家・絵本作家。1981年大阪府生まれ。生きものの姿を伸びやかに描き、国内外で個展を開催。絵本『オオカミがとぶひ』(イースト・プレス)で第18回日本絵本賞大賞を受賞。『てつぞうはね』(ブロンズ新社)で第45回講談社出版文化賞絵本賞、『ぼくのふとんは うみでできている』(あかね書房)で第63回小学館児童出版文化賞をそれぞれ受賞。ブラティスラヴァ世界絵本原画ビエンナーレ(BIB)で、『オレときいろ』(WAVE出版)が金のりんご賞、『けもののにおいがしてきたぞ』(岩崎書店)で金牌を受賞。その他にも著書多数。本やCDジャケット、ポスターなどの装画も手がける。
http://www.mirocomachiko.com

こびやま・さとこ/「山フーズ」主宰。1980年東京生まれ。多摩美術大学卒業。素材としての勢い、料理としての勢い、美味しさ、を大切にしながら ”食べる” をカラダ全部で体感できるような仕掛けのあるケータリングやイベント企画、ワークショップ、レシピ提供、撮影コーディネート、執筆など、多様な角度から「食とそのまわり」の考察、提案を行っている。
http://yamafoods.jp
(更新日:2018.08.24)
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