INTERVIEW

「10年目、私の巣づくり」
vol.2:みせづくりはまちづくり
〈大分県・別府市〉

大分県
宮川 園さん
たべもの建築家、「BASARA HOUSE」カフェオーナー
居住地: 熊本県→東京都→神奈川県→大分県

別府に移り住んで10年。

宮川園さんは今、じっくりとこの町で自分なりの巣づくりをしている。

「私は、この町で暮らしながら、自分がやりたいことをゆっくりやってきたんだよね」

前回、そう話してくれた園さんは、この町でゆるやかに、時に激しく移り変わりながら作ってきた自分の生活や仕事について話してくれた。

今もその只中にいながら、新しいプロジェクト「BASARA HOUSE」をスタートさせた。この町を通じて出会った仲間たちと始めたチャレンジだ。

“育ち続ける、作り続ける家を、手づくりしていく”

町と、人と、建物と、空間と、料理と、記憶と…
園さんは、どうしてこの町でクリエイトし続けるんだろう?

 

写真:熊谷直子 文:菅原良美

新しい仲間たちと
育つ家をつくり続ける

山田別荘の隣に10年以上空き家になっていた物件があって。それを女将のるみさんが借りることになったの。元クリーニング屋さんだったんだそうなんだけど、2階建ての建物で、104坪もあって。私も何度もあの物件の前を通っていたけど、こんなに奥行きのある物件だなんて気がつかなかった。

ここを、新たにどんな場にしたいかと考えた時、山田別荘の“別荘”として、2階の部屋を宿泊できるようにして、アーティストたちがここに滞在しながら、作家活動して、作品を残して行ってもらう場にできたらって。小説、写真、音楽、書、木工、和紙…どんな作品でもいいんだけど、人が来て何かが生まれるたびに、ここも一緒に育っていくような場にしたいとルミさんに話したら、すごくいいねって言ってくれて。

そこに、別府でさまざまなプロジェクトを手がける清川進也さんが、前から私と仕事をしたいと思ってくれていたそうで、入っていただくことになりました。

清川さんは福岡県出身で、仕事の拠点は東京だけど、これからも別府で仕事を続けていきたいから別府にオフィスを構えて仕事を作って、町に還元したいと話してくれて。

そこから、るみさん、清川さん、私の3人体制で動き出した。 育つ家、作り続ける家を作っていこうって。

山田別荘・女将のるみさんと。

「BASARA HOUSE」の“バサラ”は、清川さんの出身地、福岡県の飯塚の方言で、“かぶく”っていう意味があるんだって。より良くなるとか、超いい!を、バサラいい!っていうんだって。すごくいい意味だし、カオスな別府の町にもぴったりだなって思って(笑)。



まず、この建物をリノベーションすることから始まりました。るみさんとは「この築80年の建物自体にコンセプトがあるから、無理やり新しくせず土台を残しながらリノベーションして行こう、そうしていくうちにまた新しいアイデアに出会うかも」って話をしていて。

大工さんにもそう伝えて、古くなったベニヤ材を剥がしていったら、褪せたピンクとブルーの壁が出てきて……元遊郭だったことが分かったの!鳥肌たったよ。今思うと、大工さんも下見の時から、なぜかこのベニヤを剥ぐのを楽しみにしてて(笑)。2週間くらいかけて工事したんだけど、もう出てくる出てくる(笑)! 床板を剥いだらタイルが出てきたり、2階もピンクの壁の部屋があって、ああこれは遊郭だったねって確信した。建物のもとの姿が見えるにつれて、どんどん空間が生き生きしてきて。

古材を使うってことは、バラバラな寸法のものを新しい家に合わせて使うから、すごく手間だし、新しい建材を使うほうが良いと言われることもある。
でも私は、現れてきたものをなるべく活かしたかったから、タイルもキッチンのカウンターの下に置いてもらったりしたの。

大工さんたちは、古材は錆びた釘もひとつ残らずとっておいてた。「こういう古材も建具ももう2度と作れないもの、作れないから宝物なんだよ」って。

私自身、そういうことを大学で学んできたから、「もう完璧です!」って(笑)。そうやって価値を分かってもらえる人たちにここを作ってもらえることが、すごくうれしかったなあ。彼らだからできた仕事だと思う。レスキューした建材も愛情をもって使ってくれたし、空間とコミュニケーションをとりながら、もとの建物を活かして細かく作り込んでくれた。

生きてる素材を使うと、建物は生きる。コンクリートや鉄はいずれ朽ちて使えなくなるけど、木はずっと呼吸を続けて生きているから。

私のまちづくりは
私たちのみせづくり

1階のカフェのメニューは、季節によって変えていく予定だよ。私がいろんな土地へ出かけることも多いから、タイに行ったらタイ料理、フランスに行ったらフランス料理とか、その国で食べたものの影響からメニュ—が作れたらおもしろそう。イベントやパーティーもやっていけたらなと思ってる。

知り合いの農家さんの固定種野菜を料理に使っていて。私の周りに農家さんが多いから、手助けになる場にもしたいから。販売もしているんだけど、ここに来て、野菜を置いていってもらえれば、すぐできることだからね。

私の中で、まちづくりは“おみせづくり”だと思うから、店を作り続けているのかな。私たちがやっていることを見た周りの人が「おもしろそう!」と思って、また新しいお店ができたり、それがいろんな町に分散されていったらいいなって。

土地や、建物の価値もあるけれど、そこを育てる人がいるから、人は集まるんだと思う。それがここの、私たちの価値なんだって思っています。

 

 

vol.3:「るみさんと松尾さん」につづく

 

 

「10年目、私の巣づくり」 vol.2:みせづくりはまちづくり 〈大分県・別府市〉
宮川 園さん みやかわ・その/たべもの建築家。1987年、熊本県天草市生まれ。東京、神奈川で育つ。東京造形大学で建築を学び、別府市浜脇のまちづくりプロジェクトへの参加をきっかけに別府に訪れる。2010年より移住。〈BEPPU PUROJECT〉に入社後「SELECT BEPP」店長、「スタジオ・ノクード」主宰、「スパイス食堂クーポノス」店長などを経て、現在は「BASARA HOUSE」のカフェオーナー、〈たべもの建築家〉として、パーティーのケータリングや出張料理など、食を通じて、人が集まる機能や装置を生み出し、場作りを行っている。
www.instagram.com/sono_noqoodo

『BASARA HOUSE』
住所:大分県別府市北浜3丁目2
電話:‭070-2304-5195‬
https://www.facebook.com/Basara-House-BEPPU-392113911278824

 
(更新日:2019.04.10)
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