特集 いま、自ら仕事をつくる人

地域とひとの出会いが、 幸せなものであるように。 【復興支援専門員ってなんだ?編】

ここで伝えたいことはふたつ。ひとつは、あなたが「地域おこし協力隊」や「復興支援員※」になるという選択は、次なる人生の素敵な一歩になりうること。もうひとつは、やるならぜひ福島県がいいだろうということ。なぜなら福島県には、全国的にもめずらしい「地域の担い手と地域との出会いをできるだけ幸福なものにしよう!」という狙いをもった仕組みとサポーターが存在しているから、です。

※復興支援員:東日本大震災からの復興に向けた人的な取組み。被災者の見守りやケア、地域おこし活動の支援等の「復興に伴う地域協力活動」を通じ、コミュニティ再構築を図ることを目的としている。平成29年には、岩手・宮城・福島の3県で、350人超の復興支援員が配置されている。

写真:熊谷直子 文:空豆みきお

「地域の担い手」という職業は
チャレンジと可能性に満ちている

地域おこし協力隊と復興支援員のことを合わせてここでは「地域の担い手たち」と呼ぶことにします。彼らはいま、人口減少や高齢化や地場産業の衰退に悩んでいる日本中のまちから強く求められている存在。あらゆるまちが、まちを元気にしてくれるひとを手招きして呼んでいます。

まちはそれぞれ「廃れゆく伝統産業の技術を継承してほしい」「まちの魅力を情報発信してほしい」「空き家を利活用した交流施設を運営してほしい」などの要望をもっていて、それに応えてくれるひとがほしい。アーティストや職人、なにかしらの特殊なスキルや資格をもったひと、ローカルの暮らしを楽しみながら働きたいひと、さまざまなひとに来てほしい。そういうまちが今、日本中にたくさんあるのです。

そんな状況だからこそ、人生の次のステップを模索するひとにとって「地域の担い手」になることは、条件に恵まれたチャレンジになりえます。

「就職・転職」として考えても、業界もないから間口は広いし、あなたが「やりたい」と希望さえすれば喜んで迎えてもらえる可能性はあるし、そしてお給料ももらえるし。地域で働き暮らすという思いきった体験の入り口にできるのもいい。精一杯やってみて、もし成果をあげたらまちのひとたちは喜んでくれるし、地域に役立つリアルな実感に満たされるし。そんなふうに考えれば、とてもいい条件がいろいろと揃っているようにも思えます。

地域の担い手と自治体の
マッチングを幸福なものにするために

しかし一方で、まちが求める人物像やニーズが千差万別だからこそ、不幸なマッチングが起きているという現実もあります。

そもそも見知らぬまちに移住してまったくのゼロスタートから行動して成果をあげるというのは簡単ではありません。受け入れてくれるまちの自治体担当者とか地域のひととか、周りのサポートがどうしても必要です。けれど自治体側にサポート体制が整っていないとか、移住してきたものの実際なにをして良いかわからず途方にくれてしまうとか、地方暮らしの想像と現実のギャップに苦しんだりして、任期満了を待たずしてまちを去ってしまうというケースも数多くあるのです。せっかく互いにめぐり合い移住までしたというのに、本当に残念なことです。

そんななか、「自治体と担い手のミスマッチをできるかぎり生まないための支援の取組み」が福島県で展開されています。ご存知でしょうか、福島県に復興支援専門員と呼ばれる人たちが存在することを。この復興支援専門員の方たちは、市町村のボーダーをこえて福島県全土にわたって、「地域の担い手」たちと自治体担当者を包括的にサポートするという役目を担っています。

「地域の担い手」に興味をもっているひとと自治体をつなぐきっかけをつくったり、地域暮らしに触れてもらう機会をつくったり、「地域の担い手」のための研修会や自治体担当者のための勉強会を企画したり。

いわば「地域の担い手」がうまく地域に馴染み、いいパフォーマンスを発揮できるようにと、自治体の枠を超えて裏方からそっとその舞台を整えてくれているような存在。それがこの復興支援専門員と呼ばれるひとたちなのです。

いわき市で地域おこし協力隊として活動する平山さんご夫妻(中央)と、復興支援専門員の瀧口直樹さん(左)山田吏依子さん(右)

地域の担い手のチカラが
福島の未来の風景を変えてゆく

福島県復興支援専門員の山田吏依子さんは言います。

「『地域の担い手』にチャレンジするひとの多くは、自分のスキルをどう活かせるか真剣に考えています。だから『どんなひとでもいいから来てよ』というまちではなく、『うちのまちにはこういう課題があるから、こういうことをやってほしい』とミッションを明確にしているまちが選ばれる傾向にあります。そのまちがどこにあるかということ以上に、活動内容が自分に合うかどうかが大切なんです。

ですから、実際に『地域の担い手』が定着して着実な成果をあげている自治体側というのは、地域の資源や課題をしっかり見つめ直し、掘り起こして、募集内容やミッションを明確にしているところが多いのです。そして、いいひとにまちに来てもらったらしっかりとサポートして地域に溶け込んでもらうようにできれば、予想をはるかに超えて面白いことが起きはじめるんです」

山田さんたち復興支援専門員は、そうした幸福なマッチングをひとつでも多く実現したいという想いから、受け入れ側の環境をどう整えていくか、いい人材に『地域の担い手』として福島に来てもらうにはどうしたらいいか。来てくれた『地域の担い手』たちが求めている支援とはどんなことか、と考えながら後方支援をつづけてきました。

福島県小野町の地域おこし協力隊、菅原守さん(左)と、復興支援専門員の瀧口さんと山田さん。菅原さんの小野町案内で、東堂山・満福寺へ。

もうひとりの復興支援専門員の瀧口直樹さんは、福島の現状と合わせて、次のように語ります。

「福島には、『地域の担い手』のチカラを求めているところがまだまだたくさんあります。必要とされているチカラを必要とされている地域にうまくマッチングさせることができれば、福島はますます『復興』そして『創生』へと向かい、まちの風景はさらに変わっていくでしょう。その意味で、私たちの仕事の先には大きな可能性があると考えています。ぜひ、多くのみなさんに福島の『地域の担い手』になっていただきたい。そして、そうした方々にできる限りのサポートを提供していきたい、というのが私たち復興支援専門員の願いなのです」

 

→ 【復興支援専門員の仕事を追え!編】に続く。

 

編集協力:ふくしま連携復興センター

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(更新日:2019.03.28)
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都市から地域へ。自らの選択で住む場所を移動し、自分の手を動かして「暮らし」と「仕事」を生み出した人々。地域に根を下ろして見えてきたものとは。
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