INTERVIEW

山形・仙台・東京を移動しながら、
“手仕事”のデザインを探して
山に向かっていく

山形県
吉田勝信さん
デザイナー
居住地: 東京都→奄美大島→宮城県→山形県
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「もしもし吉田さん、こんにちは!今日はどちらにいますか?」
「どうも〜、今日は山形市内にいますよ。明日から鶴岡ですー」
山形在住のデザイナー吉田勝信さんとの電話の第一声は、いつもこんな感じ。
だいたい違う場所にいるので、まず現在地確認から入り、本題へ。

山形県川西町、山形市内、たまに鶴岡市、仙台市。そして東京。吉田さんの暮らしはとにかく移動が多い。新宿で生まれ、奄美大島で育ち、仙台へ。山形の大学へ進み、そのまま山形の地に暮らしている。
職業はデザイナー、でも吉田さんを見ていると肩書きが何かはどうでもよくなる。

その視点から描き出されるものは、土から立ちのぼり、対話をへて、結果としてデザインになり形をなす。そこに潜む思想、ビジュアルの清々しさ。とってもかっこいい。
そもそも都心ではできなくて、地域だからこそ生み出せるものってなんだろう?

吉田さんは、いつも冷静で静かに人の話しに耳を傾けながら、じっくりデザインのプロセスを構築していく。今、自分がどこにいても構わない、大切なのはこの土地の上に立っているか。
27歳の“デザイナー”に教わる、やわでしなやかな哲学にわくわくする。
未来ってこうやって作られていくものでしょう。

写真:大森克己 文:菅原良美

山形 吉田勝信

山形で体感する縄文文化
“頭より身体”のデザインに惹かれていく

3年前に山形市内から川西町に越してきました。このあたり遺跡がけっこうあるんです。最近、石器の鏃(やじり)の破片を採集に行きましたよ。抽象系の記号とかマークとか文様とか、デザインとしてみてもおもしろい。縄文文化が好きなんです。特に勉強したわけではないし、何かに影響を受けたわけでもないけれど、山形に住んでいるからっていうのは大きいかなあ。論理的じゃなくて身体的な縄文人のクリエイティビティを尊敬しているので、そこに近づけるように身をおいていたいんです。基本的にデスクワーカーですけど、同時に山に入ったり、草木染めをしてみたり、体感していきたくて。

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PCひとつあれば、作業はどこでも。こちらは自宅にて。

母が、25年くらい前から家の台所で草木染めをする「台所草木染め結工房」を営んでいて。繭から糸を紡ぎ、染めて、布を織っています。染料は、月見草とかビワの葉っぱとか。家の庭に生えているやつもあれば、河原で採集するものもあります。綺麗ですよー。母が作業をしている姿は小さい頃から見ていたけど、最近ちょこちょこ手伝い始めています。工房のロゴとか、tumblerを作るだけじゃなくて、染めの作業もやるようになって。グラフィックで型を作って染めて、てぬぐいを作ってみたり。風呂敷とかテキスタイルも作ってみたいなと思っているんです。

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仙台の実家の工房にある、歴史ある美しい織り機。

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母であり、染めの先生でもある信子さんと。作業はすべて実家の工房にて。

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ビワの葉の、あざやかでやわらかい色合い。

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吉田さんが型紙を作り手刷りした、3色の藍染めてぬぐい。 写真:本人提供

大学3年の時に、廃校を使って展覧会をすることがあって。開催にむけて地域の人と話していたんです。一度はすごく批判されたんですけど、一緒にお酒を飲んで話したり、縄綯いを教わったり、おじいちゃんやおばあちゃんと同じ文化を共有した上でこちらがやりたいことを話すと、希望が通りやすかった(笑)。そこで周りの環境のこととか土地の歴史に興味がわいてきました。

おじいちゃんおばあちゃんの生活を見ていると、今自分が暮らしている世界が捨ててきたものが見えてくる気がする。彼らがもっている時間軸とか、仕事のスピードを間近で見ていると、なんか忙しそうじゃないのに忙しそうだな〜って(笑)のんびりしているようで、日が昇って暮れるまでやることがたくさんあって働いている。手間と暇ということだと思うんですけど、それがおもしろくて。僕自身すごく影響をうけるんですよね。

文化、歴史、手仕事、民話
消え去ってしまうものを記し残す

2年前くらいからアトツギ編集室という山形を拠点にしたリトルプレスの編集もやっています。4人でやっているのですが、東京在住がひとりと、あとは山形県内でもバラバラの土地に暮らしています。みんな興味のあることはそれぞれなのですが、地域の食とか生業、手仕事とか暮らし。今、記しておかないと消えてしまいそうな物事を聞き書きしながら、冊子や旅を企画して自分たちなりに残していってるんです。

アトツギ編集室企画ツアー「森の晩餐」のロゴ・Web制作

アトツギ編集室企画ツアー「森の晩餐」のロゴ・Web制作

アトツギ手帳 vol.01 初版(現在は第2版販売中)写真:吉田勝信

アトツギ手帳 vol.01 初版(現在は第2版販売中)写真:本人提供

日本の社会が成長して豊かになったけれど、2006年頃急激に人口が減ってきた。そういう現実を考えた時に、成長曲線が上がっている時ではなく、下がってきた時にこれからの暮らしの方法論があるんじゃないかなと思うんです。成長曲線の方法論を見ていたとしても、それは下降していく世界だから。その時、じゃあどこを見るか?というと、“成長してきた世界がないがしろにしてきたもの”だと思ったんです。地域とか、村社会、手の技とか……そういうところから模範を見出していくのがいいんじゃないかと最近思っていて、自分の仕事でも意識している部分です。学生の頃は、ただ地域のおじいちゃんおばあちゃんと話せてたのしいな〜くらいにしか思ってなかったですけど(笑)。

自分自身が山に囲まれた環境の中でやっているプロジェクトや仕事を見返して思うのですが、社会や自然との関係性、もっと近いところだと暮らしも、“進歩”という名前で常に変化している。便利になること、物事のスピードがあがっていくこと、簡略化していくこと……いろいろあるけれど、本当にそれらが進歩なのかわからない。そこに小さな摩擦や、些細な嫌悪をいくつも感じています。この今の選択が本当に発展につながるのかな?ってどうしても斜め目線でみてしまうところがあって(笑)この“進歩”という流れに身を任せてちゃいけないんじゃないか、と。ちゃんと自分が納得して入り込める流れを選びたい。そう問いをもっていることが、今のデザインのスタンドポイントかなと思っています。アトツギの動きや表現も、そういうポイントから派生しているのかなと感じることが多いから。

山形・仙台・東京を移動しながら、 “手仕事”のデザインを探して 山に向かっていく
吉田勝信さん よしだ・かつのぶ/1987年、東京都・新宿区生まれ。幼少期は奄美大島で育つ。その後仙台へ移り大学入学と同時に山形へ。現在は家業である「台所草木染結工房」のブランディングや、山形県・川西町のデザインワークなど、さまざまな業種に渡りコンセプト構築からビジュアル作りまで、デザイナーとして携わる。HP Facebook twitter Instagram
(更新日:2015.05.11)
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