特集 「九州竹細工探訪記」

『九州竹細工探訪記』 vol.2日之影町で出会ったもの 文・絵◎ゴロゥ

別府市在住・グラフィックデザイナー&イラストレーターで、竹細工職人修行中のゴロゥさんが、竹細工のある暮らしを目指して九州に旅に出た!
2015年、鳥取に暮らしていたゴロゥさんに取材させてもらった日から早4年(おひさしぶり!)。住む場所、生活、働き方も変化した今の心持ちが綴られた旅の記録をお届けします。持ち前の、いきいきとした思考と好奇心、具体的な“暮らし”のイメージをたずさえて。
それいけ、ゴロゥちゃん!

vol.1:日之影町に行く前に

絵・文:ゴロゥ


わたしにとって日之影町というのは〈竹細工の町〉です。
竹細工職人の廣島一夫さんや飯干五男さんが暮らした場所であり、そしていま小川鉄平さんが暮らしている町。竹の学校のクラスメイトたちには、行動力がある人が多く、いろんな人に会いにいったり話を聞きに行く人も多い。

そんな中でたまたま、日之影町へ小川鉄平さんに話を聞きに行く、という企画が持ち上がっていたようで、しかも誘っていたメンバーが用事があって行けず、車の席に空きが出てしまった、それで「ゴロゥちゃん行く?」とわたしにお誘いが回って来たのでした!ありがたや!!

秋のドライブなんてのは、それだけでたのしいですね。

日之影町を最初に知ったのは第一話の絵日記にちょっと出てきた勢司恵美さんのクラウドファンディングのおしらせから。〈gallery KEIAN〉さんでの『日之影の竹細工職人 廣島一夫の仕事』という本をつくるためのもの。ちょうど竹細工をはじめて、仕事にしていきたいなと考えていた時期だったので、竹細工を志すものの端くれ、ぜひ寄付をしよう!となり、トークショーチケットのついた1万円の寄付ボタンを押したのでした。

トークショーで聞いた話、そこで見た竹細工。観に行った日はそれぞれに興味を惹かれて見入ったり聞き入ったりしてはいたけれど、ぐっと残っているものといえば、いまもここにあるものはそんなに多くないような感じがします。

まだ何を見たらいいのか、何を聞いたらいいのか、その目や耳ができてなかったんだろうな。(実はその時トークショーに来ていたのが小川鉄平さんと稲垣尚友さんで、その頃はよくわかっていなかったけれど、今、大変に興味のあるお二人なのでした。なんてことだろうか!)

そんなわけで、ひょんなことから日之影町に行けることになったわたしは、具体的にそこで何を見聞きしたいのか、そんなこともぼんやりしたまま車に乗り込んだわけです。

すばらしいものに触れるほどに、じぶんの現在地を突きつけられます。もどかしくありつつ、大事なこと。

“日之影町は宮崎県の北部に位置し、九州の百名山に名を連ねる傾山などの山々と、深いV字谷を形成した渓谷が大自然の美を織り成す自然豊かな町です。”

日之影町観光情報のウェブサイトにあるように、折り重なる山たちと、その山を切り裂くように流れる渓谷、その高低差がすごく、独特のうつくしい風景が広がるふしぎな場所でした。日之影の三大橋と呼ばれる高さ100メートルを超える場所にある橋の他にも、大小たくさんの橋がかかっていて、それもまた日之影町の名物のよう。

「具体的な目的地を決めず、出会いながら先行きを決めていくって旅っぽい!」

〈日之影〉という名前なので、山に阻まれて暗くある場所なのかなと思っていたけれど、全然そんなことなく抜けるような気持ちのよい場所。

不思議に思って名前の由来を調べてみると〈影は古語では光のこと〉だそうで、月影が月明かりであるように日之影は日の光のこと。どおりで当日も光さす一日だったんだな。

つくられた竹細工よりも、その職人さんの暮らしが見えるものに教えてもらうことがなんだか多い。

この「険しい山の斜面において営まれる農業」において重要な役割を担う道具、それが〈かるい〉と呼ばれる竹の背負いかごである。〈かるい〉は「背負う」という意味の方言「からう」に由来している。

この土地だからこそ生まれた竹細工〈かるい〉。今回はそれを見に来たと言ってもいいくらいのもの。『雛形』で小川鉄平さんのことを取材されてた記事の中で詳しく書かれているのでぜひそちらを読んでもらえたら。

この場所で話してくれている、という風景全体が、わたしに大事なことをたくさん教えてくれた。

〈この土地だからこそ生まれたもの〉。わたしの中で最近とても興味深く思っているテーマの一つ。そのものが生まれた場所で、観て触れるというのはとても大事なことなのかもしれない。

今まで様々な場所でつくられる竹細工を観て来たけれど、今回日之影町で実際につくるひととともに出会えた竹細工は、今まで観て来たものとはなんだか違う感じを与えてくれたように思う。実際につくっている場所で聞かせてもらう話はその内容だけじゃない、その場所から立ち上ってくる〈ことば〉があるように感じた。そして、そういう部分から多くのものを得たりするのかもしれない。

本当に、いろんなところでいろんなひとがそれぞれの暮らしをしてるんだなあって。誰かの暮らしを垣間見る時に、当たり前のそんなことを想ったりする。そして、そんな誰かの暮らしに触れた時「それじゃあわたしは?」って問いが撒かれる。

今回の2018年11月の旅から少し時間を開けて、2019年1月のわたしの中で、その問いはどんな風に伸びて行くことになったのだろう。

夜道があまりにも怖く、〈四文字縛りしりとり〉という遊びでどうにか切り抜けたわたしたちです。

 

つづく

PROFILE
ゴロゥ/グラフィックデザイナー、イラストレーター、竹細工職人見習い。1985年、茨城県生まれ。本名は河合沙耶香。グラフィックデザイナーに憧れ茨城から上京。専門学校卒業後、1年会社勤めをするものの挫折。流れでフリーランスに。長く東京に住み、このままここにいていいのだろうか!と突然鳥取に引っ越し、いろいろあり1年半で茨城へ。数年後、このままデザインの仕事を続けていいのだろうか!と突然竹細工職人を目指し、現在は大分県別府市の職業訓練校へ。じぶんがみていた暮らしをつくるため、右往左往中。

Instagram:https://www.instagram.com/ebreday/

HP:http://www.ebreday.net/





▼ゴロゥさんの2015年2月の記事はこちら

ちょっと遠くへ引っ越す感覚”で、東京から鳥取の山奥へ。ふつうを重ねて生活をつくる。


(更新日:2019.01.25)
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