特集 地域で暮らしを
つくる人の声を聞く時間

人口4,000人の町の“これから”は? 宮崎県・日之影町、100人会議

宮崎県の北部にある町、日之影町。“ひのかげ”という、神秘的で趣のあるちょっと不思議な響きの名前をもつ町。目に飛び込んでくる景色を「大自然!」とひとことで言ってしまうのは簡単だけど、この土地にはじめて立った時、自分のすべてが深い緑にぐるりと取り囲まれたこと、川底まではっきりと見える澄み切った青に吸い込まれそうになったこと、そんな自然と自分の距離がつかめない感覚になったことが心に染みついています。

そして、橋の下に見えた景色。深い谷の底にある町の中心部や、家々。見上げる自然だけではなくて、その地にある暮らしを見た時に「ここにはどんな生活があるのだろう?」と、日之影町のもっと日常を知りたくなりました。

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『雛形』編集部は、弊社の地域ブランディングチームと一緒に、この春から日之影町のタウンプロモーション支援にたずさわっています。

この日は、日之影町の“これから”について町内外の人たちがあつまり、それぞれの意見を交換するワークショップ「ヒノカフェ」が行なわれる日。編集部も、デザインチーム・アカオニデザインと一緒に、日之影町を訪れました。

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日中の強い日差しが、少し陰ってきた真夏の夕方。小高い丘にある会場に集まったのは、日之影に暮らす小学生から70代の方、宮崎大学、九州保健福祉大学の学生など約90名。

各テーブルに、世代も職業もバラバラな人が集まってディスカッションがスタート。どんな雰囲気になるんだろう!?と思いきや、そんな心配は無用。はじまってしまえば、どんどん言葉が飛び交う、にぎやかな空間へ。

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「日之影町の良いところ、良くしたいところは?」

「20年後にどんな町になって欲しいか」

「自分たちに何ができるか?」

それぞれのテーマに真剣に向き合いながら、大人も子どもも一緒になって考えを巡らせて、伝え合う。

水、山、星がくっきり見える豊かな自然。神楽や歌舞伎などの伝統文化。栗や柚子、椎茸などの産品。竹細工やわら細工、神楽面など民芸品。日之影に暮らす人が誇っているものが次々と挙がっていきます。

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反対に、町外の人の意見として、観光地として整備されていない“むきだしの自然”に対面できるおもしろさや驚きについて語られると、「そんな視点でみることがないから新鮮!なんだかうれしいな」という言葉も。

日之影町の現在の人口は約4,000人。人口減少、過疎化、高齢化。ほかの地域でも同じく抱えている現象ではあるけれど、この土地にとっても深刻なテーマがすぐ近くにあります。

遠いようで近い未来、20年後はどんな町になっていてほしいか。そしてどうしていきたいか。

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今の農村風景や伝統文化が残っていること、受け継がれていくこと。若い世代や女性が住みやすい町であること、子どもたちが夢を持ってくらせること。新しく何かを開拓したり、作るのではなく、今あるものをもっと掘り起こしていくこと、そして残してつないでいくこと……そんな意見に頷く人たちの姿が印象的でした。
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それと同時に、“ここにあるもの”だけに頼らず、残していきたいこと、いくべきことをもっとみんなが意識すること。そのために暮らしている人が土地の歴史や集落ごとにある文化をもっと知って学んでいく、それを言葉やアイデアにしていくことができたら、自分たちが町のためにできることが増えていくのではないかという声が出てきました。

自分たちが暮らし続ける町、そして新しく来た人たちにその魅力をつないでいけるように、日之影の“ほんもの”をもっと発見して、発信していきたい。ワークショップ終了の時間になってもあれこれ話は止めどなく続き、終わってしまうのがもったいないほどでした。

すっかりあたりも真っ暗になり、片付けをして外にでると、一匹の猫が玄関にどっしり。周りの人に聞くとどうやらずっとここに座っていた様子。
「90名プラス1匹でしたね」
と町の人に声をかけられ、あらためて良い1日だったなあと、じんわり。

日之影町のこれからを見つめ・考え・動く「ヒノカフェ」は、今後もまだ続いていきます。『雛形』でも引き続きレポートをしていきますので、ぜひ楽しみにしていてください。

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「ヒノカフェ」

8月9日、宮崎県・日之影町で開催された市民参加型のワークショップ。「日之影町の未来を考えよう」をテーマに、町内外の小学生から70代までの方、約90名が参加。日之影町の誇るべき地域資源や課題、20年後の理想的なまちの姿、それに向けて自分たちができることについて、語り合った。http://ozma.co.jp/case-hinokage/



(更新日:2015.09.04)
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