ある視点

君はプレイウォールを知ってるか?

vol.5 君はプレイウォールを知ってるか?

団地のなかには緑がいっぱいあったので、幼稚園のころはその間を走り回って鬼ごっこしたり、昆虫採集したり、小学校入ってマイチャリをゲトると草木に自転車で乗り入れてオフロードコース的に楽しんだりとかして遊びました。

 

僕は友達から「夏目のコース選びは最高に楽しい」と、よく褒められた。公園もいっぱいあったので、ブランコにのって靴飛ばしよくしました。向かいのマンションに届くかやってみて、とどいちゃったら「わーーー!」っつってヒヤヒヤながら走ってとりにいく。ベランダ入っちゃってたら最悪。あとはでかい木にひっかかったりとか。ポケモンが流行った時は遊具に腰掛けてゲームボーイをよくやってたなあ。

 

いろんな遊び場がありましたし、そこらじゅうを遊び場にしてましたけど、ほんとによく遊んでたのは、プレイウォール。遊ぶ壁。僕たちは「テニスコート」って呼んでました。わざわざ壁に「プレイウォール」って書いてあったけどだれもそう呼んでいなかった。

 

ハイタウン塩浜には壁打ちテニス用のコートがいくつも設置されていて、おそらく大人が土日に軽く汗でも流せるようにと建てられたんだろうそれはいつでもボールもった子供で賑わってました。ツルッツルのコンクリの地面と、ツルッツルの壁。それが高いフェンスで囲まれている。コートの中で、もちろんテニスなんてやっている奴はいない。
そこで5~10人集まったときにほんとによくやってたのは、6虫って遊び。

 

≪ルール≫

・じゃんけんで負けた奴が1人(参加人数が多い時は2人)鬼になって、コートの真ん中でボールを持ちます。

・それ以外の人は壁にタッチした状態からスタートして、走って向かいの壁を目指します。

向かいの壁へたどり着く途中で鬼にタッチされるかボールを当てられたら死亡

・壁を触っている状態の時は鬼に襲われません。壁から一度手を離したらもとの壁には戻れません。

・ドッジボールと同じ要領で、鬼が投げたボールをキャッチできたらセーフ。キャッチしたボールは鬼に返さずにコート内ならどこに投げても可。ただしそのボールを鬼以外の人が触るのは不可

・向こう側にたどり着くと「半虫」。戻ってきた状態、つまり1往復すると、「1虫」。行って帰って行って、だと、「1虫半」。たどり着くたびにコールしなきゃいけません。大きな声で!

・誰かが「6虫」を成功させたら鬼の負け。もう一回鬼をやらされます。鬼が全員を死亡させたら鬼の勝ち。鬼がかわります。
natsume_0323_3

 

 

 

これがですねえ、けっこう奥深い。

 

まず、最初に誰が飛び出すかで駆け引きがあってですね、楽しいんです。大体誰かがおとりになってソロ~っとコートに出でて、その隙に他の奴らが走り出すってパターンが普通。
natsume_0323_2

 

 

 

鬼も、ボール持ってコート真ん中に鎮座してるだけじゃ誰も走り出さないんで、みんなが構えてる壁に向かって壁打ちしたりして、逆牽制球みたいな感じで、わざと隙を作って、たまにフェイクかけたりして、仕留めに行くっていう。うわああ。やりてえ。今猛烈に6虫がやりてえ!!!!

 

6虫はコート全体を使うんで、この遊びをするにはまずコートを自分たちのものにしないといけません。放課後のテニスコート覇権争いに勝たねばならぬのです!

 

サッカーしたいやつ、野球したいやつ、ミニ四駆走らせたいやつ、みんなプレイウォールに集まる。広いテニスコートだと(そう、なんと、サイズがコートごとに微妙に違う)、半々で使ったりもたまにしてました。半分が野球、半分がサッカー、みたいなかんじで。でも6虫はそれできないんですよ。一面全部ないと!年上がいるともう最悪でね、言わずもがな移動するしかない。空いているテニスコートないか探します。もしくは吸収される。6虫諦める。野球したい奴らも諦める。グローブを置いて全員でサッカーをする、なんてこともあった。スラムダンクが流行った時には幾つかのコートにバスケットゴールが設置されたっけ。ダンクは無理なので、少年たち庶民シュートやりまくり。もしくはフリースロー対決。負けたらジュース。

 

おっと、6虫の話でした。

 

このあそび、人数が集まらないとつまらないんすよ。いっせいにバー!っとみんなが走り回って鬼がこれでもかとボール投げまくるってのが楽しいわけで。なんていうか銃弾の中を駆け抜ける感覚ですね、したことないですけど。

 

 

 

natsume_0323_1

 

 

 

部活動がない小学校3年まででしたね、6虫をやりまくってたの。4年生になると男子のほとんどが小学校のサッカー部に入っちゃうから、放課後大人数で遊ばなくなっちゃう。だからあんまり6虫やらなくなったなあ。やりはするんですけどね、頻度が減る。今思いだしました。

 

僕は水泳をやってたのでサッカー部には入ってなくて、そのころは結構寂しかった。仲良い奴らはみんなサッカー部に入っちゃって。毎日一人で家に帰って、水泳行く日は行って、行かない日は、、、何してたっけなあ。でもなんか平日は、寂しいな~って気分だけはよく覚えてます。

 

そんなさびいしい気分も記憶にあるので、たのしいテニスコートの思い出って僕の中では大きいんです。コンクリの壁と床だから、頭打って血ながしたりとか怪我もしたし(小1時)、覇権争いで年上ともめてイライラしたり(随時)、嫌な記憶もあるんですけど、それも込みで僕の団地ライフのひとつの象徴、テニスコート。あなたの団地にはありましたか?

 

つづく

INFORMATION

SC_0309シャムキャッツ
ニュー・ミニ・アルバム『TAKE CARE』を3月4日にリリースしたばかり。前作『AFTER HOURS』に続き、サヌキナオヤによるアートワークをフィーチャーした豪華イラストブック付き。また、3月27日より全国6ヶ所(広島/福岡/名古屋/大阪/札幌/東京)でワンマンツアーも開催。最新情報はこちらから。
http://siamesecats.jp

 


『TAKE CARE』
¥1,790(税抜)takecare
PCD-18785/P-VINE RECORDS
リリース記念特設サイト
http://siamesecats.jp/takecare/

 


団地のはなし
夏目知幸

夏目知幸/1985年生まれ、千葉県・市川市出身。ロックバンド、シャムキャッツのボーカルとギターを担当。好きな芸人はとんねるずなどなど。好きな食べ物はあんかけ焼きそばとピザ。茶目っ気たっぷり団地メン。
homepagehttp://siamesecats.jp/
homepagehttp://natsumetomoyuki.tumblr.com/
twitterhttps://twitter.com/natsumetomoyuki
homepagehttp://siamesecatsphoto.tumblr.com/

(更新日:2015.03.25)

バックナンバー

ある視点

特集

最新の記事