vol.9 団地の年末

 

こんにちは（こんばんは、おはようございます）、明けましておめでとうございます！

 

久しぶりの更新になりました、団地コラムです。

 

去年は夏を過ぎたあたりからバンドがすごく忙しくなりまして、且つ次に企画されていたコラムの内容が「実際に団地に赴いて写真撮ったりしながら取材して文章にする」というものだったためなかなか着手できずに時間だけ過ぎてしまいました。最終回でそれはやることになっているんですが、今回は別のテーマです。もう年始ですけど、年末の団地のお話。

 

クリスマス、自宅で「明石家サンタ」を見ていたらふと小さい頃のことを思い出しました。

 

小学校低学年の頃、サンタの正体が知りたくて夜更かししていると「これを見ないとクリスマスがきた気がしないんだよね～」と言って親父が「明石家サンタ」を見てる。僕は「へえ～」とかいいながらしばらく一緒に見てるんですが、すぐに眠くなってしまっていたっけ、と東京の寒い部屋で酒飲みながら思いだしたわけです。

 

団地に住む少年少女の間ではクリスマスが近づくと「どうやってサンタはうちに入ってくるのだろうか？ こんなにも家が密集している所でバレずミッションを遂行することは可能なのだろうか！？ しかも、一晩のうちに」ということが毎年議論されます。

 

いろんな仮説がありますが僕としては、「親とサンタは親密で、まあなんか協定が結ばれていてうちに入れるのだろう。そしてサンタは一人ではない。すんげえ沢山いるのだ」と納得してました。

 

母親から「サンタとお父さんは仲いいみたいよ」と聞かされていたので（今思うと、なんだそりゃ）。その一言から想像力を膨らましまくって、きっと会社帰りかなんかに、僕も何度か連れて行ってもらったことのある高島屋の裏あたりだろうか、サンタがお医者さんにみたいに椅子に座っていて、いろんなお父さんが順番に並んで待っていて、番が来ると「なんか、うちの子はこういうの欲しいみたいよ」と伝えてくれてる。だから欲しいものが来るし、どのサンタが何時くらいに来るのかも打ち合わせしてるから、ちゃんとどの家にも入れて、僕たちにプレゼントが届くのだ！ と思っていた。今でもこの説は素敵だと思っています。

 

小学校も３、４年生になるとサンタが来なくなる家が出てくる。「サンタは親だ！」というやつも出てくる。どうしてか、そういうやつのほうがカッコよく見えてくる。お、大人だなあ。。確かに、まあ俺の仮説もかなり無理がある。それは知ってる。不安になる。やっぱりいないのかあ。

 

けれど25日の朝、まくらもとにプレゼントがあればめんどうなことは全て忘れてしまえるんすよね。サンタかっこいい。疑っているお前なんかよりサンタのほうがイケてるわ。

 

団地のドアや窓とサンタって今思ってもやっぱり相性よくないなあと感じます。これを読んでいる団地出身者ではない方、想像したことがないかもしれないですけど、してみてください、サンタが団地でプレゼントを運んでいるシーンを。僕のイメージだと、200人くらいのサンタが空を飛んで、もちろんソリでやってきて、団地の上空でちょっと作戦会議、終わると一斉にブワーッと散り散りに降りてきて、子供たちの眠る部屋の窓をそーっと開けるんです。けっこうすごくないですか？

 

ある家の親は寝ているし、ある家では起きていて挨拶交わしてる。犬が驚いている。みたいな。風は静かで鈴の音だけ団地に優しく鳴っている。みたいな。全然風情のない僕の町にも、クリスマスはちゃんとドラマをくれていたんですね。大人も子供も巻き込んで。

 

とても個人的なことを書きますと(ずっとそうですが…)、2015年のクリスマスは最初にも書いたみたいにただだらりとテレビを見ているだけで終わったので、僕はちょっと蚊帳の外というか、平坦な毎日の普通の1日として過ぎてしまいました。いや、正直言えばかなり冷めた気持ちでクリスマスをすごしました。まあ別にそれでいいと思うんですけど、今こうして子供時代を振り返ってみると、町の景色と共にマッキー(槇原敬之)の『雪に願いを』が聞こえてきてですね、たまらなく酒が飲みたくなっております。

 

夏目知幸

夏目知幸／1985年生まれ、千葉県・市川市出身。ロックバンド、シャムキャッツのボーカルとギターを担当。好きな芸人はとんねるずなどなど。好きな食べ物はあんかけ焼きそばとピザ。茶目っ気たっぷり団地メン。
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