ある視点

埋め立て地、けっこうワイルドだよ!

vol.2 埋め立て地、けっこうワイルドだよ!

少年は動物が好きっすよね。虫とか、爬虫類とか。

 

市営住宅の奥にアロエが密生してるところがあって、そこにトカゲがたくさんでるっていうんで小学校2年の時に採りに行きまくってました、僕。虫かごにこれでもかっていうほどトカゲをいれまくっていって、気づくと「おええええええ…」と嗚咽がするほどカゴの中が気持ち悪い感じになってるっていう。

 

埋め立て地の団地というと緑はあまりなさそうだと想像するかもしれないですが、木々は結構植えられているし、住民が花壇を大事に育てていたりするんで、今住んでいる都内の住宅密集地区よりも幼少期住んでたハイタウンのほうが緑は多かったなって思います。

 

小さい頃は近所のおばさんがどうして自分の庭でもないのに団地の花壇を大事にしているのかとか意味わかりませんでしたけど今ならちょっと、わかる。例えば宇宙ステーションに住むことになったら、きっと僕もあのおばさんと同じことをするなあと思ったり。

 

人工的に植えられて育てられた緑もいっぱいありますけど、僕が住んでいたのは放っておかれている空き地がそこらじゅうにある、無駄な土地すっごい多い、埋め立て地。そういう無視されてた場所にはりっぱな「野性」が!セイタカアワダチソウとかいろんな雑草がぼうぼうに生えているところ。少年たち、昆虫採集はそこへ出かけます。虫網をてきとうに振り回せばなんか入ります。春から秋にかけて、幼稚園から小学校2年くらいまでだったと思いますけど、しかも頻繁に飽きるので断続的にですけど、遊びの中心はそんな空き地にありました。

 

ここまでは、もしかしたらどこの少年もやることかなあと思うんですけど、湾岸埋め立て地ならでは!って遊びが小学校高学年になって流行りました。その名も「ビンボー釣り」。

01

埋め立て地ってみんなゴミを簡単に捨てていくんですよね。団地の中は綺麗だけど一歩そとにでると川沿いとか(川の中も)市営グラウンドの周りとか高架下とか、ゴミだらけ。空き缶、テレビなんてザラで、なんなら車がけっこう捨ててある。どうだ。高架下に燃えた丸焦げの車があったなあ。「ヤンキーが車内でシンナーやりながらタバコ吸おうとしたら引火して爆発した」ということになってる車。あれまだあるかなあ。

 

川、汚いんですけど、ハゼがよく釣れるので時期になると釣り人が押し寄せます。で、やっぱりみんなゴミを捨てていく・笑、針やら糸やらがそこらじゅうに散乱してるんです。

 

少年たちはそこに目をつけた!俺が知る限りコウタが最初に目をつけた。コウタはにいちゃんが二人いるからか遊びのセンスがよかった。「これ、集めたら釣りできんじゃね?」「おおおおおおお…」

 

捨てられた短い糸を集めてつないで長くして、針はなるべくいいやつを拾って、餌はないから団地の土を掘ってミミズをゲット。竿はなし!だって金がない!釣竿なんて買ってもらえるわけない!竿はもう、指ですね。くいくいっとやっているとこれがまた釣れるんですねえ、すごいですねえ。この遊びは1カ月位は続けたと思います、僕らにしては、長いです。

 

時間をちょっと進めます。

 

中学校3年のとき、「卒業制作」みたいな活動がありました。自分たちでテーマを決めてチームを作って自習するって時間が週に2時間与えられていて、卒業前に発表をしなきゃいけないっていうやつですね。研究内容によっては学校の外に出ていいというんで、僕らはクラスの馬鹿な奴らで集まって「野鳥の観察」とテキトーにテーマを設定、毎週学校の外に散歩しに行くってことをやってました。

02

どこへ行くかというと、他に行くとこないんで、やっぱ空き地とか川ぞいに行くんですね。例の車があるあたりです。ある日いつものようにダラダラ歩いていると茂みの中にダンボールが大量に捨てられていて「なんだあれええええ!」っつって開けると、中には野球の応援メガホンが大量に。「不法投棄ってやつだな……」。太陽ホエールズのもあって、「これって昔の野球チームのやつ?」とりあえず持って帰ることに。なんか面白いから。学校に帰る途中で、でかいカマキリを見つけて大爆笑(なぜか面白かった)、その後アカマタ(蛇)を捕まえて大興奮!メガホン首から下げて蛇持って学校に帰って担任の先生に「あんたたち何しに外出てんのよ……」と呆れられた。けれど北海道出身・社会科の高崎先生は「埋め立て地にも蛇いるんだなあ!立派な研究だよ!」と褒めてくれました。こういうことはよく覚えてる。確かに、広い大地のその中で育った先生にとっては、まさかこんなところに蛇がいようとは、ってびっくりしたのかも。僕らにとっては普通じゃん?て感じだったけど。

 

こんなんだからもちろん全員彼女などいるわけもなく。でも、いいでしょうワイルドで!

 

——さて、今回はこんな感じです・笑

 

少年期のおれたちへ、声を大にして言いたい。お前ら正しいぜ!!!!

 

愛だの恋だの、女の子がどうだの、童貞だのなんだの言ってる前に、男子たるもの空き地でゴミと虫で遊べなきゃだめだぜ。それができたら、もうかっこいい。おっけー。

 

妙なまとめになってしいました。次回もよろしくおねがいします。

INFORMATION

main_takecare_kokuchi【INFORMATION】
ニュー・ミニ・アルバム『TAKE CARE』を3月4日にリリース。前作『AFTER HOURS』に続き、サヌキナオヤによるアートワークをフィーチャーした豪華イラストブック付き。また、3月27日より全国6ヶ所(広島/福岡/名古屋/大阪/札幌/東京)でワンマンツアーも開催。最新情報はこちらから。http://siamesecats.jp

団地のはなし
夏目知幸

夏目知幸/1985年生まれ、千葉県・市川市出身。ロックバンド、シャムキャッツのボーカルとギターを担当。好きな芸人はとんねるずなどなど。好きな食べ物はあんかけ焼きそばとピザ。茶目っ気たっぷり団地メン。
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(更新日:2015.01.31)

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