ある視点
80年から90年代、スキー場や観光地で大流行した、ファンシーなイラストが描かれたキーホルダーや置物。リアルタイムを知る人なら「コレ持ってた!」と叫ばずにはいられない懐かしいおみやげたちを、“ファンシー絵みやげ”と命名し、日本各地で収集・研究しているのが山下メロです。絶滅の危機に瀕するおみやげ雑貨とストイックな裏話を一緒にお届けします。
vol.3 あなたと奈良・LOVELY TOWN【奈良県奈良市編】
みなさま1か月のご無沙汰でございます。山下メロです。最近は保護した絵みやげを東京に置きに帰るばかりだったので、その整理に追われる毎日でございます。今回は修学旅行の定番スポットである奈良で保護した絵みやげを紹介したいと思います。ファンシー絵みやげは子供向けの商品なので、修学旅行の聖地は特に生存個体が期待できる場所です。
【レビュー:奈良県・奈良市編】
奈良公園、東大寺、興福寺、春日大社、若草山といった主要な観光地を奈良駅から徒歩で回れるため、比較的容易に土産店をたくさん調査できます。おみやげに描かれるイラストの主役は奈良の大仏さん。それからお寺に多いモチーフである小坊主さんです。その色々な方向性を紹介します!
現行商品なのか、各地でよく見かけるこちら。観光地の位置関係や建造物の形が分かるので非常に実用的。NHK教育テレビで昔やっていた番組『たんけんぼくのまち』の中で描かれる「オモシロ地図」好きにはマストアイテム!
「SHINOBI BOY」という、歴史的な場所では全国的に使われがちな忍者キャラ。珍しい扇子シェイプに刀のチャームがついている逸品。背景の月と星が、忍びの者らしい夜の設定を表している。「DAIBUTSUKUN」もちゃんと眠っている??
「お願い大仏さんHAPPY NARA」+「黄金の半立体そうじ小坊主」。奈良における2大キャラクターの共演である。大仏の後ろに五重塔と鹿が描かれているのも、全部のせラーメン的にポイントが高い。
「奈良の小坊主の星シェイプ」+「ベル」という超ファンシーな組み合わせ。おそらく光を吸収して暗闇で光る蓄光塗料と思われる奇抜な色使いだが、現在は少々褪色してしまっているようである。なぜか「YANCHA DE GOMEN!」と謝っているが、
お寺がある観光地の定番、小坊主隊。掃除、食事、習字…と「じ」で韻を踏んでいるのだろうか。それにしても「NICE FEELING LOVELY TOWN」とは何事か。NARAは、そんなTOWN だったのである。
なぜかモーニングスター(?)を装備している物騒な仏僧……もとい小坊主。両手に武器で、左手には木魚のバチを持っているようだが木魚は見当たらない。NARAと大書された袴も装備。
突然ですが奈良なのに新選組。基本的に京都のキャラクターだが、NARA。京都と奈良、誤差の範囲か。左の人の足元からは、なぜか蕎麦ぼうろ(焼き菓子)が3つも飛び出している。
個人的な判断基準ではファンシーではないが、当時もののイラストキーホルダーも紹介しよう。ちょっと渋いタッチの絵柄とガロっぽい鹿の影、それにローマ字の「NARA」と全体に散りばめたラメの組み合わせがたまらない逸品。
こちらは懐かしいネームキーホルダー。ネームバッジやネームスプーンに比べて現存率が低い。現在は妖怪ウォッチのネームキーホルダーが全国を席巻していて隔世の感があるが、名前のラインナップに注目すると時代の変化が見られて面白い。
こちらは湯呑み。大仏さんが笑顔でピースしちゃってるのである。そして左上に「Run Run」の文字。おい走るんかい。大仏が走れるんかい。長渕剛!?……と思ったが、やはりローマ字表記なので、“ランラン”ではなく“ルンルン”なのだろう。
【調査こぼれ話】
まさにリスキー!!猿沢商店街
鳥取での調査後、私は早朝にバスで大阪へ。大阪の調査は後回しにして奈良へ向かいました。お目当ての猿沢商店街は、修学旅行生が来る木曜日に多くの店が営業すると聞き、木曜日を狙ってやって来たのです。しかし、目の前は閉まったシャッターの連続。私は途方に暮れるばかりでした。
開店していた「ふじや」でお話をうかがうと、修学旅行生が来る時間が夜なので、午後3時頃から開店する店が多いとか。通常、観光地の土産店は午前8時から午後4時までなどが多く、早朝より昼食抜きで調査活動というのがほとんどなので驚きました。こんなことであれば先に大阪を調査するべきでした。もはや仕方ないので観光地を回って戻りましたが、まだ開いてない店も多く、私はまたも途方に暮れました。
猿沢商店街の「risky(松本)」と書かれた店に戻りました。土産店らしからぬ名前でインパクト大。B’zとは関係ない。店主の片平あかねさんは作詞家もされていて、他店の開店待ちの間に観光や作品などのお話を聞かせてくださいました!こちらのお店に生息していたタペストリー捕獲しましたが、「無限」の文字をファンシー仏教世界が暴走族テイストで囲んでいる攻めた逸品でした。記念撮影。
結局、時期的に営業してない店は開店せず、後ろ髪ひかれる想いで奈良を後にしました。東京に戻っても営業してない店が気になってモヤモヤしていた私のもとに連絡が…。「閉まっていた店も営業始まりましたよ」「こんなタペストリー売ってましたよ」など…。なんとriskyのあかねさんが、わざわざ現地から連絡をくださったのです!
とうとう私の旅は、土産店の方からここまで協力いただくに至ってしまいました。
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山下メロ
やましためろ/ファンシー絵みやげ研究家。80年代の庶民風俗を研究。特に観光地のファンシーイラストが描かれたお土産雑貨=「ファンシー絵みやげ」を収集・研究しており、各種メディアで保護を訴えている。訪問した土産店は1000店を超え、所有するファンシー絵みやげは4000種を超える。オリジナルiPhoneケース販売中。ウェブサイト:ファンシー学院
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