ある視点
80年から90年代、スキー場や観光地で大流行した、ファンシーなイラストが描かれたキーホルダーや置物。リアルタイムを知る人なら「コレ持ってた!」と叫ばずにはいられない懐かしいおみやげたちを、“ファンシー絵みやげ”と命名し、日本各地で収集・研究しているのが山下メロです。絶滅の危機に瀕するおみやげ雑貨とストイックな裏話を一緒にお届けします。
vol.6 キープ・ユアセルフ・タライブネ【新潟県・佐渡島編】
1カ月ぶりのご無沙汰です。最近は遠出する機会がめっきり減りまして、ここぞとばかりに関東近郊の観光地を調査しつつオリジナルイラストを描き続けております。さて、今回は前々回の隠岐諸島に続き日本海に浮かぶ離島を取り上げようと思います。数々の名所や名産品を有する新潟県屈指の観光地・佐渡島で保護したアイテムをご覧ください。
【レビュー:新潟県・佐渡島編】
佐渡島には色んなファンシー絵みやげキャラクターがおり競争が激しい印象を受けます。中でも、佐渡島名物「佐渡おけさ」、「たらい舟」、「おんでこ」の御三家が熾烈な争いを繰り広げており、現在は佐渡島を象徴する存在であるトキでさえ脇役であるところからも、いかに競争のレベルが高いかお分かりいただけると思います。
「SADO OKEPPY」というシリーズの液晶温度計付きキーホルダー。S字型の佐渡島の地形が丸っこくなってロゴに入っているのがカワイイ。佐渡を代表する民謡「おけさ」の歌詞がローマ字で書かれているのも凝っている。「おけさ」を踊る女の子だけでなく、「たらい舟」を漕ぐ女の子も。珍しいタヌキキャラも一緒!
頭と体が別々に揺れるスイングシリーズ。佐渡島にもあった!あどけない笑顔がとってもカワイイ!ゆらゆらゆっくり動く「たらい舟」には、スイングキーホルダーがピッタリ!
続いて、絵のタッチや色使いからちょっとオールドタイプと思われるスイングキーホルダー。ひとつ前に紹介したものは笠に文字が入っていたが、こちらは海の部分まで描かれていて、そこに文字が書かれているというところも味わい深い!
“HAPPINESS CLUB”が何なのかはさておき、「HEY! BOYS & GIRLS! COME TO THIS ROMANTIC ISLAND SADO」。ファンシー絵みやげに“Romantic ◯◯”という表現が多いのはなぜなのか。
ヤシの木の栓抜き。シュロやソテツなどのヤシ風の木を植えてリゾートっぽくしている海沿いの観光地は多いが、佐渡では見かけなかった。たまたま見なかったのか、それとも当時はあったのか。ヤシの木をディフォルメしてるのが面白い。
“SADO OKESA”マグカップ。黒地に錆びたような色がまだらに入っていて、すでに時代を感じさせる。線が金色で、肌は塗りがなく地のまま、そこに服や笠が白色なので、ちょっとサイバーな雰囲気さえ漂っている。こういった尖鋭的なセンスが光るアイテムもファンシー絵みやげの醍醐味である。
“JAPANESS(→E) SURFING OF T(A)RAIBUNE”。二か所あるスペルミスは目をつぶるとしても、そもそも英文法として正しいのか怪しい。そして当時のお土産ファンシーイラストで睫毛を描写しているものは非常に少ない!貴重!
みうらじゅんさんの著書『いやげ物』において “二穴オヤジ”と命名されている「木製のベースに地名の立て札と人形が乗っていて2つ穴が開いているペン立て」 シリーズが佐渡にもありました。基本的には、どの観光地であろうとサンタクロース的なおじいさんがスコップを持っている人形が乗っているだけというのが特徴ですが、こちらはちゃんとご当地感のある「おけさ」衣装の人形となっている。しかも二頭身でカワイイ!
さらに同じ人形を使った謎の商品。スケルトンの指輪ケースを開けると人形がいるだけ。外側にはなんと温度計が。閉じて持ち運ぶのか、開けたまま飾るべきなのか、いまいち正解が見えてこない。
【調査こぼれ話】
Captain of the “TARAI” Ship
佐渡島は、実際に行くと思っていたより非常に広い。聞けば東京23区のおよそ1.5倍の面積があるという。鉄道が無いため移動手段は島全体を縦横にカバーしているバスになるが、時刻表を見てみると中心地以外は島民の方も困るほど本数が少なく、これでは滞在期間内で数多い観光スポットをすべて回るのは困難で、行ける場所も相当ハードな乗り継ぎを要する。意気揚々と上陸して早々にそれが発覚し、
到着した日、海が見渡せる民宿で夕食の際、いよいよ日が沈む中、なお死んだ目で座っていると、隣の席の人が話しかけてくださいました。その方は小林久人さんという写真家さんで、
広い佐渡島を一周、縦断、横断、色んな場所での調査の中から、たらい舟での出来事を紹介します。
観光たらい舟を自分でも漕がせてもらったのですが、なかなかうまく進まずグルグル回ってしまい思い通りには動きません。観光客相手の余興かと思いきや「もっと体を前に倒さにゃいかん!」など何度も厳しく指導していただき、さながら「お前が舵をとれ」状態。Captain of the“TARAI”Ship。自分に目指す場所があるなら、自分で舵を取らないといけません。
たらい舟を降り、近くにあった土産店に寄ったところ、展示品のファンシー暖簾を見つけてしまいました。購入できないか交渉しましたが「日よけに使っているので無理」との回答。しかし「代わりの日よけを用意するのでどうか」などと粘り強く交渉した結果「付け替えてくれるならいいよ」ということに。困ったのは、暖簾が釘で打ち付けられている。私は日曜大工も不得意ですが、そんなことは言っていられない。どうしても暖簾を保護したいので、慣れない手つきで暖簾の釘を抜いて外し、代わりの日よけに金槌で釘を打ち付けました。何度も親指を打ち、
自分の望みを叶えるためには強い意志が必要です。チャレンジすれば、きっと道は開けます。たらい舟のように思い通りに動いてくれない場面でも、粘り強く漕いでみましょう。状況は自分自身で打破するしかありません。お前が舵をとれ!ヨーソロー!!
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山下メロ
やましためろ/ファンシー絵みやげ研究家。80年代の庶民風俗を研究。特に観光地のファンシーイラストが描かれたお土産雑貨=「ファンシー絵みやげ」を収集・研究しており、各種メディアで保護を訴えている。訪問した土産店は1000店を超え、所有するファンシー絵みやげは4000種を超える。オリジナルiPhoneケース販売中。ウェブサイト:ファンシー学院
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