ある視点

80年から90年代、スキー場や観光地で大流行した、ファンシーなイラストが描かれたキーホルダーや置物。リアルタイムを知る人なら「コレ持ってた!」と叫ばずにはいられない懐かしいおみやげたちを、“ファンシー絵みやげ”と命名し、日本各地で収集・研究しているのが山下メロです。絶滅の危機に瀕するおみやげ雑貨とストイックな裏話を一緒にお届けします。
vol.4 山陰・ふたりのOKI DOKI 愛ランド!【島根県編】
みなさま1か月のご無沙汰でございます。山下メロです。近頃はずっと東京にいるので、ファンシー絵みやげ風のオリジナルイラストを描いたりしています。オリジナルグッズを販売して保護活動費を稼ごうと思っておりますのでお楽しみに。今回は、山陰の離島・隠岐諸島を中心に、島根県のアイテムを紹介したいと思います。
【レビュー:島根県編】
島根県には、日本海側を中心に観光地がたくさんあります。今回は県全体のアイテムを西から東へ、最後は離島である隠岐諸島まで紹介したいと思います。スターバックスもある「出雲大社」が有名ですが、あえてパワースポット・出雲大社以外にスポットを当てていきます!
本州の各地で散見されるのキャラクター“キリマンチャイルド”。島根の西端あたりである津和野で保護しましたが、彼の生息最西端かもしれません。だいたいナイトキャップを所持。英文によると父親はコーヒーショップのマスターだとか。
同じく津和野から。こちらは伝統舞踊である鷺舞(さぎまい)をしているご当地キャラクターなので、津和野でしか手に入らない逸品。背景が、ビックリマンシールのヘッド(当たり)と同じ四角プリズムパターンになっており子供心をくすぐる。
「出雲神社」の北、ウミネコのふるさと「日御碕神社」「日御碕灯台」周辺にもファンシーがあります!手で持つとマットな肌触り、しかし上部は滑らかな口当たりという非常に凝った湯呑み。
「松江城」周辺で購入したキーチェーン。店内の複数個所にあり、置いてある場所ごとに色が違うので1色ずつ買おうとしたところ、よく見ると温度で背景の色が変わるタイプでした。室内でも高さや状況で温度が変わることを発見!
表面に地名が書いてないが、隠岐諸島で購入。なにが“Key West Club”なのか。「なんたって あ・い・し・て・る」というセリフに時代を感じる。鍵に付けるべきキーホルダー自体も鍵のシェイプというのは非常に多いしカワイイ。
こちらも隠岐諸島。酪農が盛んなのでホルスタイン。そして謎の鳥。“100万円貯まる貯金箱”みたいなものが非常に流行った時代。こちらは木製で、ちょっと少ないが10万円貯まるらしい。“OKI”の文字にハイライトが入っているのは、まさに80年代のド定番!
隠岐諸島の景勝地である「隠岐国賀海岸」のコンパクトミラー。上部に書かれている“TSUTENKYO”は、背景に描かれている天然の空洞「通天橋」のこと。子供カップル、太陽、鳥とリアルな背景との違和感から、場所に合わせて背景が書き足されたと思われる。
シールを貼っただけ!という隠岐諸島のカニマグカップ。海沿いの観光地にはカニがモチーフのお土産雑貨は非常に多く、お隣の鳥取県にある施設「かにっこ館」では、全国のカニグッズを多数展示しているほどである。
これも隠岐諸島で入手。坊ちゃんとマドンナ……といえば夏目漱石の小説の舞台である愛媛県松山市。これは歴とした松山みやげのオニギリ型灰皿である。こちらの入手エピソードは、この後のこぼれ話にて……。
【調査こぼれ話】
行ったら情報あるかもギフトショップ
日本海に浮かぶ島根県の離島・隠岐諸島は、海の幸と山の幸が両方楽しめて、見るべき観光スポットも多数あり、B’zがライブを行ったこともある素晴らしい観光地です。
中ノ島(海士町)と西ノ島の調査後、隠岐の島町に着いた私は、いつも通り観光案内所に直行し、土産店の情報を求めました。「そういったものを扱う店はもうほぼありません」と頭を悩ませる窓口の方。地図を見ながら思い出したように「あ、ここの“京見屋分店”はギフトショップですけど、行ってみたら情報があるかも知れません」と、謎のひとこと。まあ、行くこともないだろうと思いながら調査を開始しました。
土産店が閉まっていたりで早々と調査を終え、時間もあるのでそのギフトショップへ行ってみることに。洗練された外観で、求める物は無さそうでしたが入店。早足で視線を上下しながら店内を一周するも、どうも趣味が良すぎる。不審な行動のためか「何かお探しですか?」と店の方に声をかけていただき、日本中を回って探しているものを伝えると「詳しく話を聞かせて欲しい」というお言葉。色々な人が訪れるそうで、変わった客人の話を聞くのがお好きなようでした。
よく見ると店内にレトロな備品があったりで、昔のものを保護する気持ちに共感をいただき、さらに「とりあえず行ってみるか!」という急展開で、その日のうちに知り合いの商店の死蔵在庫を特別に見せてもらう流れに。「東京の友達だから見せてやってよ」「あんたの友達ならいいよ」というやりとりは近所付き合いが親密ゆえになせるわざ。観光案内所の方もお知り合いだそうで、だからこそギフトショップの違った側面を把握していたわけですね。
滞在中、毎日立ち寄って語ったり導かれての保護活動しましたが、あるとき店に現れたのは常連の神主さんで、なんでも昭和レトロ案件を相当蒐集されているとのこと。ファンシーの希少性を理解いただき「家にあるかも知れない」と一旦帰宅され、なんと前述の灰皿をわざわざ探し出して譲ってくださるという有り難い出会いもありました。
書ききれませんが京見屋分店さまの導きにより、島の方たちにご協力いただく機会の連続で大変助かりました。結果的に、有形無形のギフトをたくさん持ち帰ることが出来ました。皆様ぜひ隠岐諸島へ、そして京見屋分店へ行ってみましょう。そこには何か情報があるはずです。
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山下メロ
やましためろ/ファンシー絵みやげ研究家。80年代の庶民風俗を研究。特に観光地のファンシーイラストが描かれたお土産雑貨=「ファンシー絵みやげ」を収集・研究しており、各種メディアで保護を訴えている。訪問した土産店は1000店を超え、所有するファンシー絵みやげは4000種を超える。オリジナルiPhoneケース販売中。ウェブサイト:ファンシー学院
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