ある視点
80年から90年代、スキー場や観光地で大流行した、ファンシーなイラストが描かれたキーホルダーや置物。リアルタイムを知る人なら「コレ持ってた!」と叫ばずにはいられない懐かしいおみやげたちを、“ファンシー絵みやげ”と命名し、日本各地で収集・研究しているのが山下メロです。絶滅の危機に瀕するおみやげ雑貨とストイックな裏話を一緒にお届けします。
vol.7 アイヅ・ワイド・ビャッコ【福島県・会津若松編】
今回は、私が小学校の頃に初めてファンシー絵みやげに出会った場所である福島県・会津若松を紹介いたします。
会津は戊辰戦争の主な戦場のひとつで、未成年男子だけで結成された「白虎隊」が勇敢に戦い、果ては追い詰められて集団で自害をするという悲劇の舞台でもあり、それにまつわる観光名所もたくさんあります。
それらは、同じく未成年である学生が修学旅行で訪れる場所であり、若者向けのみやげ店も多いため、私も期待を胸に調査をいたしました。その中で保護できた個体をご覧ください。
名所が多い会津も、キャラクターはほぼ「白虎隊」が独占している。悲劇のエピソードのある「白虎隊」も逆立ちしてスケボーしているユルさにぶっとび~!!
なぜか和傘ではなく洋傘を持たされている「白虎隊」。湿度によって傘の色が変化して「アメダス湿度予想」ができると書いたシールが貼られているが、「アメダス」って気象庁の地域気象観測システムなので……「アメダス」は絶対使ってない。
戊辰戦争のころの会津藩では、未成年男子の「白虎隊」だけでなく、有志の女性が集まった非正規軍である「娘子軍」も戦闘に参加しました。こちらもアメダス洋傘を装備しており、「白虎隊」と対になっている。こんなにみんなに持たせるなら、和傘を作っても良かったのでは!?
「BYAKKOTAI Jr.」と書いてあるが、「白虎隊」にはジャニーズジュニアみたいな下部組織があるのか?? ラブレターを指に挟んでいる感じがチャラい……。
左から、「今日こそ(恋文)渡すぞ」「ギャルは敵!今は戦よ」「それより飯だぜ」と三者三様。 ローマ字の「O(オー)」をハートにしてるところがかわいい!!
販売価格と非売品
ファンシー絵みやげ保護活動として全国を調査しておりますが、「現地で一体何が行われているのか」と質問をいただくことが多いため、今回からは保護活動の具体的な話をしていきたいと思います。
ファンシー絵みやげは、基本、発売された当時の“定価”で購入しています。
稀に在庫処分セール価格になっている場合もあり、限りある予算内で多く生存個体を保護したい私としては大変助かります。
しかし「そんなの売れないし、100円でいいよ」と言われ、喜んでいくつも選んでいると、途中から「それはもう他で手に入らない、非常に価値があるものだよ」と、突然値上がりすることも多く、時価を覚悟しなくてはなりません。
また、価格のないものもあります。
例えば、タペストリーは巻いて売られているため、店内には商品の見本が吊るされています。しかし、いつしか商品がすべて売れて、見本だけが残っているということがあるのです。そうなると、最後の1枚なので、いくら褪色していようと、買いたいとお店に交渉するのですが、「汚いから売れない」、「なくなると、その壁がさびしくなる」といった理由で断られることがほとんどです。
しかし、そんな入手が難しいものを保護できたケースもあります。
福島県・芦ノ牧温泉のおみやげ屋さんで展示されていた、タペストリー。こちらは根気よく交渉して購入できることになりました。
しかし、非常に高い位置に掛けてあるフックから、タペストリーを自分で外さなければなりません。椅子に乗るも届かない。傘の柄でつついてみるも届かない。ジャンプで一応ひもには届いたが、今度はフックから外すのに苦戦。これまで高所のフックにかかったひもを、ジャンプしながら棒で外す練習をしてこなかったのでとても苦労しました。日々の鍛錬が必要です。
やっとゲットしたタペストリーを手に、店主と話をしました。
山下:「どんな色だったんですかね?」
店主:「ちょっと日焼けしたけど元々そんな色だよ。」
山下:「もう少し濃い茶色でしたか?」
店主:「そうだね。」
しかし値札を外して絶句。
元の色は茶色などではなく、まさかの……
濃紺!!
ぶっとび~!!
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山下メロ
やましためろ/ファンシー絵みやげ研究家。80年代の庶民風俗を研究。特に観光地のファンシーイラストが描かれたお土産雑貨=「ファンシー絵みやげ」を収集・研究しており、各種メディアで保護を訴えている。訪問した土産店は1000店を超え、所有するファンシー絵みやげは4000種を超える。オリジナルiPhoneケース販売中。ウェブサイト:ファンシー学院
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