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晴耕雨読のはなし

vol.4 自己完結からはじまるコミュニティ

Vol.3では、小名浜の仲間たちと企画したお手製アートプロジェクト「小名浜本町通り芸術祭」について紹介しました。アートプロジェクトというと全国のあちこちで開催されていますが、あえて違いを言うならば……小名浜本町通り芸術祭は「小規模」で「低予算」なところでしょうか。「アートで地域の問題を解決しなければ!」という問題意識も、すいません、ほとんどありません。ただ「自分たちでやってみて楽しそうだからやってみっぺ」というものでしかないんです。

 

小名浜本町通り芸術祭のきっかけは、「アートプロジェクトやろう!」というものではありませんでした。UDOK.というスペースを開いてから、ヒマなときに町歩きして写真を撮ったり、スケッチを描いたり、日常的にイベントを開いているうちに作品が集まっていたんです。それで、発表会をやろう! どうせなら商店街をアートギャラリーに見立てて表通りに展示しちまうべ! みたいなノリで始まりました。

 

UDOK.がオープンしたのは2011年5月ですが、実はそれ以前から町歩きのイベントは開催されていて、もっとも古いのは、小名浜を町歩きしながら写真を撮るという「sanphoto」というイベントです。日常的に接して見慣れた風景も、切り取り方によって面白くなったり、美しく見えたりすることを写真愛好家は知っています。それを1人ではなくみんなでやろうぜ、というのがこのイベントでした。

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写真というのは、カメラさえあれば簡単に表現を楽しむことができますよね。別にスマホのカメラだって構いません。ゆっくり小名浜の町を歩き、小名浜の良さに触れながら、ああでもないこうでもないと写真について語る。それが町を再発見することにつながるんです。ここでこんなイベントをしたら面白いんじゃないか。ここの風景はこんな風にきれいだ、とか。写真を撮って町を歩くということは、次のイベントや企画のためのリサーチにもなるんです。

 

そこから派生したのが、小名浜の工場夜景を撮影するバスツアー。小名浜の工場地帯は、中心部からはちょっと遠いので歩いていくことはできませんが、車で工場のそばまで行くと、大迫力の工場夜景が撮影できるんです。最初は本当に小規模の集まりだったのですが、最終的にはいわき市の助成金を頂いて大規模化して、地元発の着地型観光プログラムとして大成功しました。毎日のように車で工業団地を通っていたのに、夜の風景はまた格別で、日常の中に非日常の風景が広がっているんです。もちろん、そこで撮影された写真は、芸術祭でも展示しました。

工場風景バスツアー

震災後は、さらにいろいろなイベントが立ち上がりました。代表的なものは、変わりゆく町並みをスケッチして、町の景観をスケッチで保存しようというイベント。これはUDOK.のメンバー高木市之助君の企画でした。写真と違ってスケッチは長時間風景と対峙します。その建物についての思い出や記憶が甦り、建物と対話するんですね。写真よりもスケッチの方が個性が出てきます。この人にはこんな風に見えているんだな。そんな気づきが面白い。

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高木君は、スケッチのほかにも「オナハマリリックパンチライン」という、小名浜の風景を言葉で切り取り、ラップの流儀に従って韻を踏んだりして「詩」として残そうというイベントも企画しました。いわき市内のラッパーを講師として呼んで、リリックの連ね方や韻の踏み方なども教えてもらい作品を作っていくのですが、これも面白かったです。

 

それからそれから、「朝」にテーマを絞った写真のワークショップ「あさんぽ」という企画もありまして、これはぼくとUDOK.の共同主宰者をしているtttttan君の企画です。光がもっとも新鮮な早朝の時間に集まって、港町の風景を写真に残し、港のそばの食堂で朝ご飯を食べようという企画です。これなどはすでに「観光プログラム」になっているんですね。歩いて、写真を撮って、そして食べるところまで含まれているので、写真を撮らない人が参加しても単純に面白い。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAまあこんな具合に、イベントやワークショップが、多い時で月に2回くらいは開催されていました。参加者は、そのほとんどが地元の人たちです。要するに、地元の人が、誰よりもその地元暮らしを楽しもうというスタンスなんですね。同じいわき市でも、私たちの暮らす小名浜と、いわき駅のある平(たいら)では、歴史も景観もまったく違います。同じ市内でも、小名浜の町歩きは「小さな観光」になり得るし、慣れ親しんだはずの日常に新たな発見を与えてくれるんです。
そんなイベントを、誰のためでもなく自分たちのために開催してきました。誰よりも自分たちが小名浜を楽しむんだという気持ちで。

 

私たちにとって小名浜は「観光地」ではなく「日常の生活の場」です。ですから、どうしたら日常を楽しめるかをずっと考えてきました。その答えが、今のところは、地元でワークショップやイベントを企画して、「自己完結」的にそれを繰り返すというライフスタイルです。私たちにとっては「芸術祭を開催する」ことより、「仲間たちと過ごすクリエイティブな週末」を続けることのほうが重要だったんです。

 

面白いことに、イベントを開催すると、毎回そんなに大人数は集まりませんが、2人3人と知らない人たちがやってきて、そのイベントを楽しんでくれ、最終的にはUDOK.のメンバーになってしまう、みたいな流れができてきました。ぼくたちの掲げる「晴耕雨読」のライフスタイルに共感して集まってくれた人たちが、いつの間にかメンバーになり、コミュニティになっていくんです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAそして、芸術祭を開催したことで、町内会や商店会の長老たちとも話す機会が増えました。店の軒下やシャッターを借りるには、長老たちに話をしないといけませんからね。すると長老たちから「なんだお前ら、怪しい若者だと思ってたら小名浜の人間だったのか」、「お前の父ちゃんとは長い付き合いなんだ。若いので小名浜を盛り上げてくれよ」だなんて、少しずつコミュニケーションが生まれて、いつの間にかぼくたちを応援してくれるようになっていました。

 

自分自身がUDOK.で楽しく過ごしたい → UDOK.に集まって来るメンバーみんなで小名浜での暮らしを楽しみたい → 小名浜の人たちみんなで芸術祭を楽しみたい、みたいな感じで、どんどん楽しみが広がっているんです。

 

UDOK.という場を開き、その活動を少しずつ街の中にはみ出させていく。そんな暮らしがやっぱり楽しくて、刺激的で、そんな日常が楽しいから、もっと楽しいことをしたくなる。もっと楽しいことをするには、自分1人だけじゃ出来ないから、仲間が増えるようにイベントを開催する。街の人たちとも繋がって、そして街全体にわくわくが浸透していく。
街に拠点を持ってみて下さい。そして、そこで行われることを少しずつ街にはみ出させてみて下さい。自分の暮らしだけじゃなく、仲間たちの暮らしも楽しくなり、そしていつの間にかコミュニティができて、その街自体も楽しくなるんです。ぼくたちはそれを現在進行形で見つめ続けています。

 

つづく

晴耕雨読のはなし
小松理虔

小松理虔/1979年福島県・いわき市小名浜生まれ。大学卒業後、福島テレビに入社し3年間報道記者をつとめ、2007年に上海へ移住。日本語教師、日本語情報誌の編集・ライターなどとして活動後、2009年に小名浜へと戻る。2010年4月にウェブマガジン『TETOTEONAHAMA』を創刊
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