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晴耕雨読のはなし

vol.5 実践編:小名浜式コミュニティのつくりかた「晴耕雨読2.0」

晴耕雨読の話、vol.05です。

vol.01ではローカルメディアの話、vol.02ではオルタナティブスペースの話、vol.03vol.04で地元で開催するアートプロジェクトについてお話をしてきました。脈絡のない話かと思いきや、ウェブでの場作り → 実際の場作り → 日常への拡張、という感じで段階的に書き進めてきたつもりです。

 

そこで今回からは、初回からの話を振り返りつつ、具体的な「コミュニティのつくりかた」について考えていきたいと思います。地元で何かやりたい! 地方に移住して面白いことやりたい! と考えているそこのあなた! 必読です!!

第1段階:ローカルメディアをつくる

 

なぜ最初にローカルメディアを作るかというと、自分の暮らす地域と人に文脈を持たせ、それを可視化させながら人とのつながりを作るためです。

 

ぼくの場合は2010年にスタートした「TETOTEONAHAMA」というウェブマガジンがそうなのですが、メディアを作ると、そのメディアを通して「地域」の姿がぶわっと浮かび上がってくるんです。「こんなに面白そうな街だったっけ?」なんて、新しいイメージを持たせることができるのが面白いんですね。

 

まずは、自分が住んでいる「市」や「地区」など、記事を紹介していくエリアを決めます。そのうえで、地域以外の、自分の興味のあるサブテーマをしぼります。料理やライフスタイルにフォーカスしてもいいですし、農産物や水産業なども面白いかもしれません。ぼくの場合は「ローカルクリエイティブ」でした。地元でクリエイティブに関わる人たちの動向やイベント情報を知りたいと思っていたんです。

 

地域で面白いことをしている人には会ってみたいし、面白いイベントには行ってみたいもの。ですから自分の興味のある人に会い、興味のある場所に行き、自分が楽しんだついでにそれを記事化していけばいいわけです。仕事としてやるわけじゃないから、そこはとことん楽しんで、自分の言葉で書いていきましょう。取材するうちに顔見知りができ、身の回りに面白い人たちが増えていきますよ。

 

取材したりインタビューしたりしていくと、いつの間にか地域の面白い人とつながりができてきます。10人とじっくりインタビューできたら、もうその10人は仲間みたいなもの。人に会って話を聞けば聞くほど勉強になるし、友達が増えるし、充実した記事も増え、メディアが面白くなる。損することは1つもないんです。

 

SNSだと情報が流れちゃうので、ブログ形式など「ストック」されるメディアを心がけてみて下さい。1年くらい続けてみると、そのメディアを通じて、地域の風土や人、文化がぶわっと浮かび上がって来る感覚を得られると思います。

 

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第2段階:実際の場をつくる

 

面白い人たちと繋がってくると、「一緒に何かやりたいな」と思ってくるんですね。「自分の場があったら、あの人とあの人を呼んであんなことができるのに!」なんて。ぼくにとっては「UDOK.」というオルタナティブスペースがそれです。この場があったおかげで、いろいろなものが広がってきました。

 

場があると、自分の作業部屋にもなりますし事務所にもなります。インタビューする場にも、撮影する場にもなりますし、ついでに飲み屋にもなります。集会所にもなるし、イベントホールにもなるんですね。田舎なら家賃も高くありませんから、ぜひスペースを探して借りてみてください。

 

自分たちのスペースでイベントが行われるようになると、いろいろな人が集まってきますから、その中に面白い人がいたら、すかさずインタビューをして記事にしちゃいましょう。そして、自分たちで企画したイベントの情報や、そのイベントのレビュー記事も自分のメディアで掲載しちゃう。すると、自然と自分のローカルメディアが充実してくるんですよね。

 

イベントを企画するのも楽しいし、運営するのも楽しい。取材するのも楽しくなって、読んだ人も楽しくなる。やればやるほど記事のアーカイブが増えて、「面白そうな場所だな」と思ってくれる人も増える。これなれば最高です。メディア、スペース、イベント、人が次々に連動し、それぞれが厚みを増してくるんです。

 

メディアだけでも不十分だし、場だけでも不十分。2つが両輪となって進んでいくところにコミュニティづくりの楽しさがあります。ローカルメディアを作ったら、ぜひ場作りにも挑んでほしい。逆に、場作りから始めた人は、その場で起きていることを紹介するメディアを自分たちで作ると、いろいろな化学反応が起きると思います。

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第3段階:場の面白さを地域にはみ出させていく

 

場の中がどんどん面白くなったら、それを町中にはみ出させていきましょう。自分たちのスペースでやっていたものを少しずつ外に出していく感じです。すると、場の楽しさが町に少しずつ広がり、関わる人たちが増え、そのうち、商店会のイベントの企画なども依頼されるようになったりして、「場づくり」が「まちづくり」に繋がってくるんですね。

 

ぼくたち自身、最初は「怪しい若者の集団」でしたが、町内でイベントをやるうちに町内会や商店会と動く機会が増え、そのうち「まちづくり」の根幹に関わるような会合に呼ばれて意見やアイデアを求められるようになってきました。実は、今年中に整備される予定の新しい「通り」があるのですが、その通りに設置される公園に、UDOK.のメンバーの意見を採用してもらったりしています。

 

勝手にスタートしたUDOK.という場が、少しずつ面白くなり、そしてその面白さが町にはみ出ていくと、取り組みに「公共性」が生まれてくるんです。1980年代のヨーロッパでは、移民たちが勝手に占拠した場所が公共性を帯び、やがてその場が正統なものとして認められる「スクウォッティング」という動きが広がっていましたが、UDOK.の目指す場づくりも、ゲリラ的に始めた後で公共性が付与されるという意味で、似たような動きになっています。

 

そもそも、TETOTEONAHAMAもUDOK.も、「業務」として始めたわけではありません。どこまでいっても「趣味的」なものでしかないんです。ところが、そんな「趣味的」なものだからこそ、実験的に展開できる。だって、失敗したって会社がつぶれるわけでもないし、別にお客さんが来てくれなくてもいいわけですから。本業ではなく、趣味的に(ぼくなりに言うならば「雨読的」に)活動を進めていくからこそ、図らずも公共性を帯びてしまうような場になるのだと思います。

 

このように、雨読的に、副業的に、ゲリラ的に展開されながらも、しかしながらそれが地域にはみ出し、公共性が生まれてくるような動きを、ぼくは「晴耕雨読2.0」と呼んでいます。晴耕雨読2.0のライフスタイルのなかで、メディアづくり→場づくり→まちづくりが展開される。それが小名浜です。

 

どうでしょう。ぼくですらできたことなので、全国各地でできるはず。メディアが増え、スペースが増え、それがまちづくりに活かされたら、「地方創世」だなんて大上段に構えなくても、勝手に面白い地域が生まれると思うんですよね。あなたもその当事者になってみてください!

 

つづく

晴耕雨読のはなし
小松理虔

小松理虔/1979年福島県・いわき市小名浜生まれ。大学卒業後、福島テレビに入社し3年間報道記者をつとめ、2007年に上海へ移住。日本語教師、日本語情報誌の編集・ライターなどとして活動後、2009年に小名浜へと戻る。2010年4月にウェブマガジン『TETOTEONAHAMA』を創刊
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