REPORT

都市の文化も島の自然もあきらめない、“デュアルライフ”の進行形。【島&都市デュアル】

兵庫県
「都市の文化」と「島の自然」。一方の場所や魅力に縛られず、両者を行き来しながら“いいとこどり”のライフスタイルが叶えられるエリアとして、兵庫県神戸市、芦屋市、淡路市、洲本市の4市が合同で取り組む移住促進プロジェクト「島&都市デュアル」。

昨年10月の発足以来、プロジェクトに参加する市民の方々が中心となって、ウェブサイトやSNSで地元ならではの情報を発信したり、現地の暮らしを体験できるユニークな旅のプランを企画したりと、さまざまな活動が行われています。

さらに、今年の秋には4市のキーマンが講師となって行う学びの場や、都市部での交流イベントも開催。そんな今年度の活動の皮切りとなるイベントとして、7月6日、東京・渋谷キャストで〈DUAL LIFE FES by 島&都市デュアル〉が行われました。時折小雨がパラつくあいにくの天候にもかかわらず、終始にぎわいを見せたイベントの様子をお伝えしながら、あらためて「島&都市デュアル」についてご紹介します!

 

日常の“デュアル”を叶える
行き来のしやすさ

リモートワークやノマドワーク、副業の自由化が浸透し、1つの拠点にとらわれない暮らし方・働き方がより身近になりつつあります。その要となってくるのが、エリア間の行き来のしやすさ。海を挟んでほぼ隣接する4市は明石海峡大橋で結ばれ、車で40分〜1時間、神戸・三宮と淡路島内各所を結ぶ高速バスも数十分おきに運行されるなど、〈都市エリア〉と〈島エリア〉の距離の近さが大きな魅力です。

DUAL LIFE FES by 島&都市デュアル〉の1日サポーターとしてオープニングイベントにゲスト登壇した洲本市出身の女優・大地真央さんも、4市の環境は“理想的”と語ります。

「DUAL LIFE FES by 島&都市デュアル」トークショー(4)

洲本市出身の大地真央さん。宝塚演劇学校入学前のレッスンでは洲本から船に乗って神戸に出ていたそう。イベントの企画のひとつ、2つの願いごとが書ける“わがままデュアル短冊”(写真)からも、地元愛が感じられるメッセージが。

大地さん「山と海に囲まれた大好きな場所。小学生の頃、洲本の大浜海岸で毎日のように泳いでいました。自然がすぐそばにある環境はうらやましいですね。淡路島で暮らして神戸や芦屋で働く。帰れば島の自然のなかで気持ちをリセットできるし、逆に、神戸・芦屋に住んで週末は淡路島でリラックスするというのもできる。これが実現できたら、本当に一番いいですね」

ローカルフードから見える
「食」への高い意識

午前中の小雨がやみ始めたお昼どき、イベント会場にはランチを買い求める来場者や界隈のビジネスマンでにぎわいました。今回、キッチンカーとマーケットを合わせ、10以上のブースが出店! 神戸市・芦屋市からは、地元で人気のパンや洋菓子、精肉店の加工品、チーズ、コーヒーなど、洋食文化がいち早く浸透した港町らしいラインナップが充実。一方、淡路市・洲本市からは、名産の淡路島たまねぎや養鶏場直送の平飼い卵、ジビエの加工品など、島ならではの個性豊かな味が注目を集めました。

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神戸の老舗ベーカリー「ケルン」とミートショップ「Nick」のコラボによって実現した、神戸ポークソーセージのカスクート。パンはサクっふわっ、うまみがぎゅっと凝縮したソーセージと相性抜群!

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甘み、やわらかさ、みずみずしさが特徴の淡路島たまねぎ。

おいしさのみならず、実は、「食」に対する意識の高さも4市の特徴のひとつ。豊かな自然環境でこだわりの食材を生み出す生産者と都市消費者との距離が近く、流通がスムーズに流れるため、4市ではそれぞれ地産地食も積極的に行われています。淡路島においてはなんと食料自給率100%超! また、芦屋市ではすべての小学校に管理栄養士の資格を持った教員が1人ずつ配置され、市販品を極力使わない手作りの学校給食を提供するなど、独自の食育にも力を入れています。

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芦屋市が食育の一環で制作した、学校給食のメニューを集めたレシピ集。

ここ数年、淡路市・洲本市の島エリアを中心に、塩職人、養蜂家、有機農法専業農家といったこだわりの生産者が増えているのも、恵まれた栽培環境と流通網、そしてエリア全域での「食」への意識の高さが起因しているのかもしれません。

また、イベントでは食のブースに並び、地元の方々によるワークショップも行われました。写経のように古事記を書き写す〈写古事記〉や洲本産の竹を使ったクラフトづくりなど、楽しみながら土地の魅力に触れるマーケットとなりました。

こうした4市の食や文化をより深く体感できるのが、現地に暮らすナビゲーターとともに暮らすように旅をするプロジェクト、〈島&都市デュアル 暮らしツアーズ〉。いわゆる観光名所ではなく、ナビゲーターが暮らす町の商店街やお気に入りのお店、人、豊かな食を支える生産者など、暮らす人の視点で切り取った4市の魅力に触れられるのがこのコンテンツの醍醐味。今年の春から本格始動し、すでにさまざまな旅プランが用意されているので、気になる方はぜひホームページをのぞいてみてください!

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日本酒のオリジナルラベルを作るワークショップ

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〈写古事記〉ワークショップ

小さな関係性から広がる
新しい暮らし方

イベントのクロージングでは、デュアルライフを都市居住者に提供する方と、すでにデュアルライフを実践している2人の移住者によるトークセッションが行われました。移り住んだきっかけ、現在の働き方や収入面、都市生活とのギャップなど、三者三様のリアルな暮らしぶりが語られました。それぞれ印象的だった部分を抜粋してご紹介します。

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写真左から、トークセッションのモデレーターを務めた「Discover Japan」編集長の高橋俊宏さん、「シェアビレッジ」村長・武田昌大さん、「シマトワークス」代表・富田祐介さん、「つるまき農園」園長・鶴巻耕介さん。

1人目は、100の知恵と技を持つ“現代の百姓”になるべく、神戸市郊外の農村地域に移住した鶴巻耕介さん。「つるまき農園」を立ち上げ、里山を拠点にしたサツマイモ農園や子ども向けのイベントなどの企画をはじめ、茅葺屋根の葺き替え現場で技を学んだり、会社員時代のスキルを活かした学生インターンシップのコーディネートをしたりと、100の知恵と技を持つ“現代の百姓”を目指し、さまざまな活動を行っています。

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「つるまき農園」代表の鶴巻耕介さん。

鶴巻さん「僕はもともとサラリーマンで、メールやコミュニケーションを通して成立する仕事がほとんどでした。でも、僕が若い頃から憧れていた地域で活躍している人たちは、PC1台でホームページをつくることができたり、パン職人や革細工職人など自分の手でものを生み出したりすることができる専門性の高い人ばかり。元総合職の自分に都市以外での暮らしができるかどうか不安もありましたが、1つの職だけで食べていけないなら、野菜を育てるとか家の修復をするとか、ちょっとずつ自分の手を動かしてできることを地域で学びながら増やしていこうと、実践している最中です。

それと、いわゆるおせっかいの文化というか、地域に残る〈相互扶助〉が合理的なのかどうかを確かめたいというのも、移住した理由のひとつ。実際に暮らして思うのは、やはり地域の皆さんに助けられているということ。子育ても妻と僕だけじゃなく、地域全体で子どもたちを見てくれている。だから、今日のように僕が出張で家をあけることがあっても、困った時は地域の方々が気にかけてくれるし、助けてくれる、という安心感がありますね」

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「シマトワークス」代表の富田祐介さん。

2人目は、7年前に東京から淡路島・洲本市に移り住んだ富田祐介さん。もともと繋がりのあった淡路島の知人の誘いで事業を興すことになり、移住。その数年後に独立し、現在は淡路島の衣・食・住、人のネットワークを生かした事業や企画を立ち上げる「シマトワークス」を主宰しています。現在、富田さんはデュアルどころかトリプル! 島、都市、さらには海外まで、3つの拠点を行き来するライフスタイルを送っています。

富田さん「淡路島に住み始めて7年が経ち、奥さんと話す中で、“暮らしにもう少し刺激があってもいいよね”という話になって。だったら、1年に1ヶ月くらい島を出て、日本を出て、海外に暮らしてみるのもおもしろいんじゃないかと。それで、今年の12月の約1ヶ月間、ベトナムで暮らすことを実験的にスタートさせました。決してバケーションした訳ではなく、ビデオ会議をうまく使って普段通り働いていました。でも、朝、昼、晩の食事の時間は奥さんと現地の人が集う店に食べに行ったり、休日は観光地っぽいところに出かけたりして、ベトナムという土地を楽しみました。また新しい働き方や暮らし方に出会ったという感じで、とてもよかったですよ。

仕事の面では、僕の場合、田舎でスローライフがしたくて移住した訳ではないので、当初からしっかり収入を得たいと考えていました。定期的に夫婦で“収入倍増計画会議”も開きますし(笑)。そのなかで自ずと、島の中の仕事と島の外の仕事を切り分けて考えるようになりました。

島の中の仕事は自分たちの暮らしを豊かにするための仕事。お金が安くても、物々交換でいいですよと受けると、我が家の冷蔵庫がいっぱいになっていきます。毎日食卓に並ぶ食材はほぼすべて知り合いの生産者さんのもの。誰が作ったものかがわかる食卓はとても豊かで、それだけで幸せを感じられます。一方、島の外での仕事は、“外貨を稼ぐ”的なスタンス。島の中よりはもう少しビジネスライクに“ちゃんとフィー(料金)をいただきます”という感じで。どちらも基本的にワクワクするかどうかで決めていますが、両方のバランスを大切にしながら暮らしています」

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故郷の秋田県、そして香川県で「シェアビレッジ」を提供する村長こと、武田昌大さん。

3人目は、秋田と東京を行き来するデュアルライフを送っている武田昌大さん。24歳の時、人口減少が進む地元・秋田を何とか盛り上げることはできないかと、東京の企業を辞め、故郷にUターン。現在は、秋田県と香川県で古くから残る茅葺古民家を拠点に、“年貢(年会費)”を払い、“村民(会員)”になれば、出身地であるかどうかを問わず、誰もが気軽に第二の故郷として村を共有できる「シェアビレッジ」を主宰。武田さん曰く、まずは地域に気軽に行けるきっかけをつくることが、デュアルライフの第一歩だと話します。

武田さん「今、『シェアビレッジ』の村民は2100人。年齢層は20代後半から30代前半で、比較的若い村民が多いですね。村民の皆さんに話を聞くと、将来地域で何かやりたいという人が結構います。村民の半分は関東にいるので、都市のニーズとして地域と関わりを持ちたいというのがあるんだなと感じています。

“寄り合い”と呼んでいる飲み会があるんですが、それは秋田に限らず、東京で開かれることもあります。時には秋田と東京でウェブ飲み会をすることも(笑)。寄り合いに参加すると地域に一緒に行ける仲間ができて、それを繰り返して行くと現地でも次々と仲のいい人が増えていく。そういう風に、東京にいながらも、今日のようなイベントに参加してみることが、地域に関わる最初のステップなんじゃないかなと思います。

仕事のスタイルとしては秋田と東京、半々の生活。東京では日本橋でANDONというおむすびやを運営していて、秋田に帰ったら農作業をしたり、茅葺き屋根を吹き替えたり。デュアルな暮らしって、精神的にも肉体的にもバランスが取れやすい。それを保ちながら生きて行けるのは、やりがいと生きがいがあるなと感じますね」

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クロージングトークイベントが行われた渋谷キャスト大階段広場には、20代、30代中心にお客さんが集まり、熱心に耳を傾けていた。

クロージングトーク終了後は、夏の宵にぴったりのアコースティックライブが行われ、賑わいのうちに閉幕。盛りだくさんの内容を通して、デュアルな暮らしが自分自身の選択肢の一つとしても身近に感じられた1日でした。

今年、「島&都市デュアル」ではこうした4市の魅力を発信するイベントを各地で開催予定! 秋からスタートする〈DUAL LIFE SCHOOL〉は、東京を中心とした都市部で行われる学びの場。4市に暮らす実践者から、現地での起業や住宅事情、コミュニティのつくり方など、より実践的な情報を聞くことができるそう。すでに参加募集が始まっているので、ぜひ「島&都市デュアル」のホームページからチェックしてみてください!

写真:伊藤美香子 文:木下美和

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「島&都市デュアル」
兵庫県神戸市・芦屋市・淡路市・洲本市の4市合同による移住促進プロジェクト。海をはさんでほぼ隣接する4市をひとつの地域圏ととらえ、文化的要素が集まる〈都市エリア〉と、豊かな自然環境に囲まれた〈島エリア〉、両者を行き来しながらそれぞれの魅力をいいどこどりしたライフスタイルが実現できる場所として、その魅力を東京や大阪などの大都市に発信しています。
https://shimatoshi.jp

(更新日:2018.07.31)
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