特集 暮らし体験記

“都会の隣町”はいいとこ取り!? ほどよく緩やかな 美濃加茂の暮らしを考える。

岐阜県南部に位置する美濃加茂市は、名古屋から車でたった1時間のところにある“都会の隣町”。まちづくりコーディネーターとして名古屋から移住した加藤慎康さんは、美濃加茂のほどよく田舎で、ほどよく便利な暮らしを自身も満喫しながら、ウェブサイト「みのかも時間」を立ち上げました。美濃加茂の暮らしから、移住に求めること、そして都市と周辺エリアの理想的なつながりについて考えます。

文:兵藤育子 編集協力:美濃加茂市

自分なりの過ごし方ができる場所

移住を検討するとき、自分はライフスタイルで何を重視したいのか、価値観を見つめ直す人は多いはず。自給自足に近い暮らしをしたいのか、あるいは自然が豊かな環境に身を置きながら、便利さもある程度は享受したいのか。絵に描いたような田舎暮らしに憧れる半面、本当にそんな生活ができるのか二の足を踏んでしまう人もいるのではないでしょうか。

「その点、美濃加茂は名古屋にアクセスしやすいのに、自然もあってゆったりと自分なりの過ごし方ができる場所なんです」

こう話すのは、美濃加茂市まちづくりコーディネーターの加藤慎康さん。岐阜県南部に位置する美濃加茂市は、江戸時代の有名な五街道のひとつ、中山道の宿場町であり、飛騨街道と郡上街道の分岐点でもあったため、古くから交通の要衝として栄えてきました。その地の利は現代も生かされていて、名古屋までは車でたったの1時間。実を言うと加藤さんも名古屋からの移住者で、NPO法人シブヤ大学の姉妹校である大ナゴヤ大学の初代学長を務めるなどして、これまで名古屋の街を舞台にさまざまなプロジェクトやイベントをしかけてきました。

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キャプション入れる。 写真上:  、下:   。

写真上:加藤慎康さん。写真下:名古屋のシンボル、名古屋テレビ塔の下に広がる久屋大通公園を会場に、2012年から行われている「ソーシャルタワーマーケット」は、加藤さんが大ナゴヤ大学の学長時代に都市観光の魅力発信を目的に立ち上げたイベントだ。

「美濃加茂市との出会いは2014年頃。美濃加茂市が周辺町村と連携して、移住・定住を促進していたのですが、そのイメージ調査をする際に、名古屋のキーパーソンのひとりとして僕に声をかけてくださったのがきっかけでした」

以来、美濃加茂市に呼ばれるかたちで定期的に足を運ぶように。

「そのたびに現地を見学したり、いろんな事業活動についてコメントしていたのですが、“先生”と呼ばれることが単純に居心地悪かったので、週末などに自分で勝手に遊びに来て、いろんな人や場所と交流するようになったんです」

ヌリカベWS参加者との意見交換

古民家カフェをみんなでつくる「ヌリカベワークショップ」を開催。

美濃加茂市三和町に移住した夫婦が今秋オープン予定の古民家カフェで、漆喰を用いた壁塗り作業を体験する「ヌリカベワークショップ」の様子。移住者と地元の人の交流の場にも。

2016年5月、まちづくりコーディネーターに就任する頃には、すっかり”みのかも通”になっていた加藤さん。これまでのまちづくりの経験と移住者ならではの客観的な視点を生かしながら、「みのかも時間」という移住・定住情報サイトを立ち上げました。

大都市の隣町の役割とは

みのかも時間」というタイトルには、ここで暮らしている人だからこそわかる独特の感覚が込められているそうです。

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「名古屋方面から木曽川を渡って美濃加茂に入ると、時間の流れがゆったりと変化するような不思議な感覚を覚えるんです。“ミディアム・スローな時間が流れる美濃加茂”という表現をしているのですが、美濃加茂よりもいわゆるスローライフができるようなエリアは、正直ほかにもたくさんある。『美濃加茂は自然が多いけど、“ど田舎暮らし”ではないよね?』みたいなことをよく言われるのですが、たしかにそうだなと。ミディアム・スローというのは、都会と田舎の間のちょうどいい規模感と距離感で、自分なりの暮らしができることをイメージした造語なんです」

この心地よい距離感と規模感に共感してもらうことが、美濃加茂の魅力を伝える一番の近道なのではないかと加藤さんたちは考えています。たしかにその場に身を置いてみなければわかりにくい感覚ではあるものの、暮らし始めて心底実感できるメリットは、案外そういう部分なのかもしれません。

美濃加茂市:小山観音

美濃加茂市:雨の加茂野駅

「みのかも時間」ではエリアごとに空き家物件を紹介しているほか、「みのかもな人々」というコーナーでは、実際に美濃加茂に暮らしている人や働いている人、移住した人などへのインタビューを掲載していく予定。

「美濃加茂のなかでもエリアによって個性が違いますし、コミュニティが強固なところもあれば、比較的緩いところも当然あります。空き家を紹介する側としては、物件情報を見ただけではわからない部分もサポートして、移住希望者と地元の人をつなげていきたいと思っています」

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移住を検討する際に、大きなネックになりがちなのが仕事の問題。「住みたいけれども仕事が見つからない」という理由で、断念するケースも少なくないはずです。

「たとえば美濃加茂には『国際たくみアカデミー』という県立の職業能力開発校があって、まったく違う仕事をしていたけれども、手に職をつけたいという理由で学びに来て移住するような方もいます。今後は空き家情報や暮らし方だけでなく、働き方などもご案内して、美濃加茂だからできることを具体的に伝えていきたいですね」

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2018年1月31日、美濃加茂市三和町の廿屋地区で、空き家のリフォームを実際に体験するワークショップを開催。

空き家は増えつつあるものの、大々的なリフォームや修繕が必要な物件も少なくない。市では大工さんの指導のもと、本格的なリフォームを体験できるワークショップを開催し、市内外から参加者が集った。

大ナゴヤ大学などの活動を通して、名古屋を盛り上げるには周辺地域との関わりも無視できないことを熟知していた加藤さん。名古屋から美濃加茂へ、つながっているエリアのなかで移住をしたからこそ、見えてくることがあると感じています。

「たとえば極端な話、名古屋のおいしい食べ物や水なんかも周辺の地域があるからこそ。名古屋で大災害が起きたとき、真っ先に支援できるエリアが美濃加茂だと僕は思っていますし、そういった面からも美濃加茂の価値を伝えることができますよね」

今、暮らしている場所、いつか暮らしたいと思っている場所も、ポイントではなくより広い範囲で捉えてみると、できること、やってみたいことの可能性が広がるのかもしれません。

岐阜県美濃加茂市 移住・定住情報サイト
みのかも時間

http://minokamojikan.jp/

美濃加茂市へのアクセス
<公共交通機関をご利用の場合>
名古屋駅から
・特急ひだ号でJR高山本線「美濃太田駅」下車…40分
・名鉄特急で「新鵜沼駅」経由JR高山本線「美濃太田駅」下車…約40分
セントレア(中部国際空港)から
・名鉄特急で「鵜沼駅」経由JR高山本線「美濃太田駅」下車…約1時間15分

<お車をご利用の場合>
東海環状自動車道「美濃加茂I.C.」のご利用が便利です。名神高速道路「小牧I.C.」から国道41号線…約30分

お問い合わせ先:美濃加茂市市民協働部まちづくり課
岐阜県美濃加茂市山之上町3457-1
電話:0574-24-0108

“都会の隣町”はいいとこ取り!? ほどよく緩やかな 美濃加茂の暮らしを考える。
(更新日:2018.09.11)
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気になるあの街で、試しに暮らす、行き来してみる。自分の体で土地の空気を感じ、地元の人と触れあえば、移住のイメージはもっと膨らむはず。
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