INTERVIEW
  • 街のコミュニケーションが生まれる入り口に

栃木県

宇都宮ダブルプレイス案内

もっと楽しく、自分らしく暮らしたい。宇都宮を拠点に活動しながらも、新たな“自分の場所”を生みだしている人々。宇都宮だからこそできることは何だろう? 

街のコミュニケーションが生まれる入り口に

栃木県
中尾真仁さん
醸造家、「BLUE MAGIC」店長
居住地: 宇都宮市
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宇都宮に、今、人が集まっている。なぜ栃木県のこの街なのか。

実は宇都宮市は東北新幹線で東京駅まで約50分の通勤圏。北関東自動車道が全面開通したことにより、東北だけでなく、広範囲へのアクセスもスムーズな街であり、広域に活動する人達にとっては、首都圏とその先の都市とのちょうど拠点となっている。

街の繁華街は歩いて巡ることができる大きさで、公共の広場ではマルシェをはじめイベントも頻繁に開催されている。また、郊外では、人との距離が物理的にも精神的にも近い。人との繋がりを大切にする暮らしの中のコミュケーションが今でも残っているのだ。
もっと楽しく、自分らしく暮らしたい。そう思う人達がまた人を呼び、暮らしの質を深めて行こうとしている。ここ宇都宮発信だからこそ抱ける“未来像”であり“夢”。

宇都宮だからこそできることは何だろう? それを知りたくて、宇都宮を拠点に活動する人達に会いに行った。この土地にいると、新たな“自分の場所”が生まれる。ダブルプレイス宇都宮。そんな期待が彼らと過ごした時間から膨らんだ。

写真:工藤朋子  文:羽鳥靖子

 

醸造に適した街・宇都宮で
好奇心を仕事に

JR宇都宮駅の西口から東武宇都宮駅方面へは徒歩で約25分。西に向かうほどに街の濃度は高くなっていく。また、オリオン通り、ユニオン通り、いちょう通り、中央通り……と通りごと、エリアごとに表情が変わり、魚屋、食堂、バー、中華屋、喫茶店など個人商店の看板が多く並ぶ。大通りから一歩横道に入ると、スナックや酒場横丁に水路が現れて来て路地裏歩きが楽しい街だ。そんな街の中心を縦断するオリオン通り近くにあり、クラフトビールの醸造も隣接しているビアパブ「BLUE MAGIC」の店長・中尾真仁さんは、この街を作り出す人の一人。 “誘いビール”で宇都宮へと人々を導き、周りのお店の人たちとイベントも企画。スタンプラリーや、出張「BLUE MAGIC」と題して、そのお店と相性のよいビールサーバーを運んで店頭で販売したり、ワークショップなども積極的に行う。
中尾さんは、2010年、大学卒業後に勤めた不動産会社を退社。“自分らしく働ける仕事”を探しながら、もともと興味のあった飲食店をめぐるために、宇都宮や栃木県南の街へ毎日のように通った。そこで様々な人と出会い話を聞いていく流れの中で、栃木市の酒蔵で働く男性と何度かい合わせて話をするようになった。

「そのかたから酒蔵が今、若手不足だという話を聞いていたんですよね。1年のうちの180日間仕込みをして、残りの180日間は仕事がないという酒蔵の特殊な労働環境が理解されにくく、それも原因のひとつになり若い作り手がいなくて困っている、と。僕は、もともとお酒を呑むのが好きだったので、ある日『それなら自分がやる!』って言ったんです。ものづくりが好きだったので、お酒もその一つ。この仕事なら自分らしく働けるんじゃないかって」

それから、酒蔵で働くことを通して、栃木県が醸造に特化している土地だということを知る。「栃木県は、酒蔵がたくさんありますし、ビール麦の二条大麦の生産量が日本一。大手飲料メーカーのビール工場も県内にあるんです」

 

酒蔵で働き醸造の世界に魅了されていくうちに、街中で飲めるビールを作る夢を抱きはじめた。そんな時に出合ったのが、「BLUE MAGIC」の母体である宇都宮ブルワリー社長の横須賀貞夫さん。横須賀さんは複数のビール会社の経営とビール醸造を学び、宇都宮にクラフトビール「宇都宮ブルワリー」を立ち上げた。“街中で作り立てのビールをそのまま飲める場所を作りたい”そんな想いを抱く横須賀さんに惹かれ、3度目の酒造りを終えた2013年の春、横須賀さんの元で、ビールの醸造を学びはじめた。そして、7月に「BLUE MAGIC」をオープンした。

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ビールの概念を“変える”とブルワリーのブルーをかけて「BLUE MAGIC」。他にもいろいろな想いがこの名前には含まれている。

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10ものタップが並ぶ。常に栃木のクラフトビール10種が飲める。

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宇都宮をはじめ栃木の地酒がすべて飲める。「姿」は以前中尾さんが働いていた蔵元の酒。

 

宇都宮と繋げるために“誘いビール”を各地で広め
コミュニティーの絆を深めて行きたい

この日、中尾さんに逢いに「BLUE MAGIC」に向かった。アーバングレイスホテルの北側にあるお店の横には、老舗洋裁具店や食堂が並ぶ。近くの魚屋から流れる演歌や、出汁の仕込みをしているのだろうか、カツオ出汁の香りがほわ〜っと漂う。BEERの文字と青いカエルが目印。

店の扉を開けると視線のずっと奥まで続く長いカウンターと10本のタップ。壁には宇都宮をはじめ栃木の地酒のボトルが並び、カウンターからは奥の醸造所の様子をうかがえるガラス窓がある。ビール好き、お酒好きにはたまらない景色だ。醸造所はとてもコンパクトな空間で、中尾さんの背丈よりも低いタンクが4つ並び、中央に麦芽がどんと置かれている。その部屋の中央で、にこやかな表情の中尾さんが迎え入れてくれた。

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毎年宇都宮では、アジア一のロードレース「ジャパンカップ」が開催される。今年は10月21日〜23日に行われた。世界中から選手やスタッフ、そして大勢の観客が宇都宮市を訪れ、街中は至る所に屋台が並び、熱気に包まれる。街をあげて行われるこのジャパンカップの公式ビール「涼風(すずかぜ)」の作り手こそ、中尾さん。依頼されたイメージは「爽快に飲むビール」。この仕上がりのイメージを受けて、毎年、他にはないオリジナルの味へと中尾さんが組み立てて行く。今年の「涼風」はレースのコース上にあるゆず農家さんの旬のゆずを使って300 ℓ作ったのだそう。

同じレシピでも、使う機械、作る人が変わることで味が異なるのが、クラフトビールのおもしろいところ。これまでも地域の特産品であるフルーツやスパイスなどをとりいれ“ここ”でしか飲めない独特のビールを造ってきた。栃木産の生産物を使って、オリジナリティー溢れるクラフトビールを造り続けることで、豊かな自然がある“農産県栃木”を伝えたいという想いがある。

「ビールを名刺代わりに、クラフトビールフェスに出展しては、宇都宮をPRして来ました。『どこで飲めるの?』と聞かれるたびに、『宇都宮の自分の店「BLUE MAGIC」で飲めます!』とみんなに名刺を配りながらクラフトビールの魅力を紹介していく。こんな風に、日本中を駆け巡りながら、“誘いビール”の営業に力をいれて来た。なぜなら、“宇都宮でしか味わえないおいしさ”があることを伝えたかったから」

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「涼風」の仕込み開始。300ℓの仕込みに、麦は60kg。

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少し経つと糖化がはじまる。

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麦とお湯だけなのに、糖化され1時間も経つと甘くなる。

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クラフト&バル両方を学ぶスタッフが、現在3人。

2013年にオープンしてから3年。今では、出張で宇都宮を訪れた人や宇都宮で働く外国人、そして“誘いビール”の効果もあり、東京から週末に飲みに来る人も増えている。県外のお客への配慮で週末はお昼の12時オープンにし、宇都宮のご当地ご飯も食べてもらおうと食事は持ち込みを推奨。界隈のお店にテイクアウトが出来るようにと、自ら交渉してまわった。そのリストを『まちかどグルメマップ』にし、オススメのお店のとっておきの一皿も紹介している。

「このお店は、“街中で作り立てのビールをそのまま飲める場所”であるとともに、栃木県初のクラフトビールのアンテナショップを目指そうと横須賀社長と話しました。店では常に他社ふくめた栃木のクラフトビールを10種類飲むことができるんです。好みのビールを探していただきながら、地酒も楽しんでいただくことができます」

この街はバーが多いことでも有名。中尾さん曰く、チェーン店が少ないのでオールラウンダーな店は少ないそう。だからこそ一軒では終わらず、ハシゴをして街を巡り、さまざまな店と人に出会うのが楽しいのだそう。

「カウンター文化が根ざしているので、お店に通うたびに店主に顔を覚えてもらったり、カウンターに並ぶお客さん同士とのつながりも生まれます。自分がこの仕事についたのも、カウンターで飲んでいたことがきっかけで生まれた縁。店主もお客さんもすぐに顔なじみになるほど距離が近い。お客さんも含めお店同士が顔馴染みになれば、この界隈のお店がまとまって、何かをはじめることができる。この街をくまなく楽しむための入り口として、うちのお店に来てもらえたらと思っています。広げるだけではなく、同時に深めることもしていきたいんです」

宇都宮でしか味わうことができない時間を、中尾さんは「BLUE MAGIC」を通して伝えている。

 


 

中尾さんに、宇都宮に来たら食べてほしいビールに合うオススメの一皿を紹介していただきました。

「PIYO PIZZA」栃木の野菜を使った今日のミックスピザ1枚1250円
ししとう、燻製にした那須豚のベーコンがやわらかくて美味!ビールに合う!ワインにも合う!

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注文を受けてから生地を伸ばす。自然派ワインとクラフトビールとピザを楽しめるお店。東京永福町の「ラ・ピッコラ・ターヴォラ」で働いていた店主髙橋克仁さんが地元宇都宮に戻り、最初は東口に2年ほどお店を開き、今年の8月に西口へと移転してきた。こちらの店先で「Blue Magic」の生ビールを販売するコラボ企画などもこの夏に開催した。

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「PIYO PIZZA」
住所:宇都宮市馬場通り4-2-13

電話:028-600-5030
営業時間:11:30〜14:00/17:00〜23:00(平日)、11:30〜23:00(土・日祝)
不定休
https://www.facebook.com/piyopizza

 

「味一番」 餃子一皿200円
一皿では物足りない。軽やかで美味。皿も、お箸もタレは持ち込みのお客様用に常備。

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「味一番」
「BLUE MAGIC」から歩いて1分。街の老舗中華屋さん。中尾さんは週に3回は食べに来るという馴染みのお店。モツ煮込みもオススメ。お土産用の冷凍餃子も購入できる。
住所:宇都宮市江野町2-7
電話: 028-634-8363
営業時間:11:00〜20:00
定休日:不定

 

「みよしや シンボルロード店」 元祖かぶと揚げ 一皿 540円
カラッとクリスピーな食感。見た目はボリューム感たっぷりだが、女性一人でも一つ食べられてしまう。手でちぎって食べるのが中尾さんのオススメする食べ方。

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「みよしや シンボルロード店」
宇都宮の銘店、元祖かぶと揚げのお店。半身を豪快にいただきます。1ジャンルで勝負する銘店に出合えるのが宇都宮。オールマイティーではなく、一ジャンルに全力入魂。
住所:宇都宮市池上町2-11
電話:028-612-5889
営業日:17:00〜23:00
定休日:無

 

最後にこちら!
「BLUE MAGIC」栃木4種の飲み比べビール 1030円
中尾さんが一日何度もメニューを変えて行く。色、味、特徴を確認して飲み比べる。界隈のおつまみと合わせてカウンタースタッフや隣席のお客さんと話して行くと、4杯目を飲み終える頃には「二軒目一緒に行きますか?」と、お友達になることも。

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『BLUE MAGIC』
住所:宇都宮市池上町3-8
電話:028-307-0971
営業時間:15:00〜22:00(月〜金)、12:00〜22:00(土)、12:00〜21:00(日、祝)、
定休日:火曜日、第3月曜日
http://bluemagic-brew.com

街のコミュニケーションが生まれる入り口に

「BLUE MAGIC」
住所:宇都宮市池上町3-8
電話:028-307-0971
営業時間:15:00〜22:00(月〜金)、12:00〜22:00(土)、12:00〜21:00(日、祝)、
定休日:火曜日、第3月曜日
http://bluemagic-brew.com

街のコミュニケーションが生まれる入り口に
中尾真仁さん なかお・まさひと/1988年、栃木県生まれ。日本工業大学卒。栃木市の酒蔵「飯沼銘醸」で働き、2012年4月に宇都宮ブルワリーに入り、ビール醸造を学ぶ。8月にビール醸造場とビアバル「BLUE MAGIC」をオープン。日本各地で開催されるクラフトビールを主に数々のイベントに出展してネットワークを築き宇都宮と人を繋げながら、「BLUE MAGIC」ではワークショップなどを開催。近隣のお店とのコラボレーション企画など面白いイベントを開催している。
(更新日:2016.10.27)
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