ある視点
立ち上がる、歩く、電車に乗る、
買い物する、引っ越しする、季節が変わる、
生活の中には、いろいろなサイズの「移動」がある。
もしかしたらほんのわずかな目の動きだって、
季節が変わるくらいの「移動」なのかもしれない。
風景と文章を追う“目の移動”が
オーバーラップすることばの世界へ。
16
肩にはリュックの重さで、七分後に電車はくる。それはホームに向かって階段を降りながら取り出した携帯のロック画面で時間を確認してまたポケットにしまい、階段を降りきったすぐのところで顔を上げるとそこにある電光掲示板には次の電車が到着する時刻が、ついさっき携帯で確認した今から七分後の時間で光っている。じゃあこれから七分間電車を待つんだと、そうはっきりとは思わないにしても、いずれ電車がくるのは七分後で、ホームの上を、電車のドアがくる場所のひとつひとつの前には、
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、線路のレールに
陽が当たっているのは、砂利敷きの地面に
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、パンタグラフが触れる電線に
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、等間隔に伸びた柱に
陽が当たっているのは、向かいのホームに
陽が当たっているのは、ベージュのコートに
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、イヤホンのケーブルに
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、白いビニール袋に
陽が当たっているのは、腕時計のベルトに
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、点字ブロックに
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、革靴のつま先に
陽が当たっているのは、前髪をはらう手のひらに
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、自動販売機に
陽が当たっているのは、芥子色のフレアスカートに
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、あごひげに
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、ペットボトルの飲み口に
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、
陽が当たっているのは、
-
関川航平
1990年、宮城県生まれ。美術作家。パフォーマンスやインスタレーション、イラストレーションなどさまざまな手法で作品における意味の伝達について考察する。近年の主な個展に2017年「figure/out」(ガーディアンガーデン、東京)など。グループ展に2018年「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」(国立国際美術館、大阪)「漂白する私性 漂泊する詩性」(横浜市民ギャラリー、神奈川)ほか。
http://ksekigawa0528.wixsite.com/sekigawa-works