REPORT

偏差値じゃない時代がやってくる!
豊岡市の先進的な教育を体験する「こどもWS@東京」をレポート

兵庫県
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発達段階に合わせて楽しく体を動かす「親子運動遊び」や、演劇的手法を用いた最先端の授業「コミュニケーション教育」など、0~15歳まで特色のある一貫教育を進めている兵庫県豊岡市。


これらのユニークな取り組みは本来、豊岡に住んでいなければ体験できないものですが、今回特別に東京出張編となる「子どもワークショップ」が3月4日(土)、東京都目黒区にある「ノアスタジオ 学芸大スタジオ」で開催されました。子育て世代に役立つ情報も満載だった、その様子をレポートします。

10歳までに、楽しい運動を
どれだけ経験できるか

いきなりですが、次のような動きができるでしょうか。

(1)右手を顔の前で上下に動かす。
(2)(1)の動きをしながら、左手で三角形を描く。

スムーズにできたら、6を数える間に左手で三角形を2回描けたはず……。

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「この動きがすぐにできる人は、10歳までにたくさん遊んだ運動神経のいい方といえます」と説明するのは、豊岡市こども育成課 幼児教育保育指導係の仲義 健さん。

「私たちの体のなかには約400個の筋肉があり、脳がその筋肉を動かしているのですが、脳と筋肉をつなぐ作業は10歳までに完了するといわれています。ですからその間、楽しい運動をどれだけ経験するかが大事なのです」

豊岡市こども育成課 幼児教育保育指導係の仲義 健さん。

豊岡市こども育成課 幼児教育保育指導係の仲義 健さん。

大人が促さなくても、子どもは勝手に動き回るもの、というイメージがありますが、生活環境の変化により、子どもの遊びや運動量は大きく変わっています。

「子どもたちが朝9時から夕方4時までどのくらい動いたか、歩数計で測ったデータがあるのですが、1970年は5歳児が1万8000歩。この数値はどんどん下がっていて、2006年のデータでは、5000歩を切っている子どももいました」

運動量が極端に少ない子どもの共通点として、声をかけても返事がなかったり、目を合わせなかったりなど、何を考えているのかわかりにくい傾向があるそう。

「体力の低下は心の問題にも直結していて、運動と他者とのコミュニケーションには相関関係があることが最近の研究でわかっています」

以上のようなことから、豊岡市では平成19年度から運動遊び事業に取り組んでいるのですが、今回は2~3歳児と4~6歳児のふたつのクラスに分けて、参加者が親子運動遊びを体験。その様子を写真とともに紹介していきましょう。

「親子運動遊びWS」レポート

スキンシップが生まれる
「親子運動遊び」

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▲子どもが背中をゆっくり押すと、かすかな悲鳴をもらすパパ、ママも。

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▲パパ、ママの背中の上で飛行機に変身!

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▲膝の上に乗せた子どもを、シートベルトを着用する感覚でギュッと抱きしめます。揺りかごになった大人が、ときに子どもをくすぐるから大変です。

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▲逆さまになって、いろんな人と「こんにちは」

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▲親子でさまざまな動物になりきって、スタジオの端から端へと移動する変身ゲームは、体を支える力を養います。最初のお題はワニ。お腹を床につけて、前へ前へ。次はクマさん。

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▲今度はウサギさん。長い耳を作りながらぴょんぴょん飛び跳ねます。

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▲子どもの股の間に手を置いて支え、子どもは大人の手にぶら下がります。ぶらぶらと横に揺らしたら、ゾウさんに。

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▲自宅で手軽にできる遊びとして教えてくれた「コマ回し」。子どもを床に寝かせて、片膝の裏に手を添えて、くるくると回転させます。背中が滑りやすいよう、フローリングの上などでやってみてください。

できてもできなくても
思いっきり褒めてあげる

2~3歳児のクラスで参加したお母さんは、「保育園に行けなくて、普段あまり子どもの体を動かす機会がなかったのでよかったです」と東京らしい感想も。

6歳児のお父さんは、「3歳くらいまではこういう遊びをよくやっていたけれども、久しぶりに一緒に体を動かして、子どもも喜んでいました」

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豊岡市ではこうした運動遊びを、保育園、幼稚園、認定こども園、子育てセンターなどで実施していて、豊岡の子どもはもれなく経験しているそう。

「熱心な親御さんほど、子どもがお手本通りに体を動かせないと、つい口を出したくなってしまいますが、笑顔で見守り、思いっきり褒めてあげることが大事です。体を動かして遊ぶことは、スキンシップが生まれる一番の手段なのですから」と仲義さんはアドバイス。ぜひ子どもと一緒に、笑顔で楽しくやってみてください。

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「コミュニケーション教育WS」レポート

初対面の人といかに
コミュニケーションを取れるか

10~12歳を対象とした「コミュニケーション教育」のワークショップには、31の児童が参加。「雛形」では以前、豊岡市の小学校で行われているその授業風景をレポートしていますが、今回は初対面の子どもがほとんど。しかも親御さんたちがその様子を見守っているので、始まる前からどことなく緊張感が漂っています。講師はNPO法人PAVLIC(パブリック)の、演出家・わたなべなおこさんと俳優・村田牧子さん。

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最初に肩慣らしとして行われたのは、いろんな人とじゃんけんをして、5回勝ったら抜けることのできる、じゃんけんゲーム。

2回続けて同じ人とじゃんけんをしてはいけないルール。素早く相手を見つけることにも、コミュニケーション能力が問われます。
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続いて行われたのが、人数や条件に合わせてチームを組む、仲間探しゲーム。

最初は人数のみ揃えばよかったものの、「メガネをかけた人を入れて6人」「男子と女子が混ざって7人」というふうに、難易度が徐々に上がってきます。

一歩間違えると、仲間はずれをしたりされたりと、微妙な空気が生まれかねないのですが、余ってしまった人がいたら、何とかしてチームを組めるようにみんなで考えるのが、このゲームの面白いところ。「大人がたくさんいるのだから、声をかけてもいいんじゃない?」とか、「鏡に写った姿を2人と考えるのは?」など、子どもらしい柔軟なアイデアが飛び出しました。

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場が和んできたところで、いよいよメインといえるジェスチャーゲームをすることに。ランダムに分けた6つのグループにはそれぞれお題が与えられ、身振り手振りのみで全員で表現して、見ている人に当ててもらうこのゲーム。初めて会った人同士で、自分からアイデアを出したり、相手の意見を聞いたりして、どれくらいコミュニケーションを取れるかが、成功の鍵を握っているといえそうです。

10分ほど相談と練習をしたのち、大勢のギャラリーの前で発表する時間がやってきました。じゃんけんゲームなどでせっかくリラックスしたのに、振り出しに戻ったかのような緊張感……。写真とともに、子どもたちの熱演の一部をご覧ください。

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▲お題は“餅つき”。お餅をつく人、見守る人、運ぶ人、焼く人とスムーズに作業が流れていって、食べた人が喉に餅をつまらせるというオチも!「村祭りだったのかな。においや音まで聞こえてきそうなシーンでした」(わたなべさん)

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▲お題は“魚釣り”。車を運転して目的地に到着するシーンから始まり、慣れた手つきでエサをつけ、釣り糸を垂らしていると……。「静かな時間から急に魚がヒットして、釣った3匹が全部違う種類に見えました。躍動感にあふれていて素晴らしかったです」(わたなべさん)

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▲お題は“クリスマス”。ソリに乗ってやってきたサンタクロースが、枕元にプレゼントを置いていき、翌朝それを見つけた人が喜ぶという、物語性のある展開。「サンタとソリとトナカイの動きがぴったりで、本当に空をスーッと飛んでいるように見えて感動的でした」(わたなべさん)

演劇を通して体感する“空気”

講師のおふたりの説明によると、ジェスチャーゲームはコミュニケーション教育のなかで最もベーシックで、今回のように初めて経験する人や、初対面の人が多いケースに適している内容だそう。

「ジェスチャーゲームの面白さは、個性がにじみ出るところだと思います。何かしようとしなくても、その子らしさが自然と出てくる。だから見ているこちらも、毎回感動してしまうんですよね」と村田さん。

わたなべさんは、「始まる前はモチベーションが低そうに見えた子も、ジャスチャーゲームを終えて表情が変わっていたりして、自分でも思いがけない気づきがあったのではないでしょうか。私たちがいろんなことを言っても、やっぱり見ている人の反応が一番正直ですし、それは空気でわかるんですよね。成功だけじゃなく、伝わらなかったりウケなかったりして悔しいと思う経験も大事。その気持ちが次につながっていくのだと思います」

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「平田オリザ氏による講義」レポート

偏差値ではなく、主体性・多様性・協働性が問われる時代に

ワークショップの最後は、豊岡市の芸術文化参与を務めている平田オリザさんが、同市で行っているコミュニケーション教育について、そしてコミュニケーション能力を養うことの重要性について解説しました。

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2020年に控えている大学入試改革では主体性・多様性・協働性を問うような試験が行われ、偏差値のみで大学に入学できる時代ではなくなること。センスやマナーのような身体的文化資本は20歳までに形成されるといわれ、それを育むためには本物やいいものに触れて、体にしみこませるしかないこと。パフォーミングアーツや音楽に触れるチャンスは、圧倒的に東京のほうが有利だけれども、豊岡では人口の少なさを逆手に取って、市民全員が無償でアートに触れられる環境を作っていることなどをお話してくれました。

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終了後、参加した親御さんは次のような感想が。

「地方でこれだけ先を見据えて、コミュニケーション教育に取り組んでいるのはすごいですよね。平田さんが文化格差の話をしてくれましたが、東京に住んでいるから、いつでもいろんな文化に触れられると安心して、実際はあまり行動できていませんでした。そのことを豊岡市の話を聞いて痛感しました」

一方、参加した子どもは、「学校でも劇はやったことがあるけど、知らない子と一緒にやるのは初めてだったから緊張しました。だけど友だちがいっぱいできて楽しかった」

最初はよそよそしかった子どもたち。ワークショップが終わると、仲良くなった友だちと別れるのを名残惜しそうにしている姿が印象的でした。

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文:兵藤育子 写真:井垣真紀(イガキフォトスタジオ) 編集協力:兵庫県豊岡市

お問い合わせ先
兵庫県豊岡市 大交流課 定住促進係
TEL:0796-21-9096
MAIL:toyoocome@city.toyooka.lg.jp
豊岡市移住定住促進ポータルサイト「飛んでるローカル豊岡」
http://tonderu-local.com/

(更新日:2017.03.17)
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