REPORT

ローカル×オーセンティック?
“半分”外の視点だから見えること。
これからの地方との関わり方を考えるイベント「しがと。」

滋賀県
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自分たちの地域には、せっかくすばらしいものがあるのに、その魅力がなかなか外に伝わらない。あるいは、地元の人たちでさえ、そのすばらしさを自覚しきれていない。地域を盛り上げたいと思いながらも、そんな課題を感じている方は多いのでは?

9月中旬、東京都・神保町のイベントスペース「EDITORY」で開催された、滋賀県の魅力を通して、“これからの地方”との関わり方を考えるセミナー&交流会「しがと。」。多彩なゲストスピーカーと参加者のあいだで、地域の魅力を伝えていくためのアイデアや地域との向き合い方についてたくさんの意見が交わされました。

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エリアごとに表情が異なる、多様な文化

京都の東、名古屋の西に位置する滋賀県は、広大な琵琶湖を中心に、湖東、湖西、湖南、湖北の4つのエリアが広がります。湖を取り囲むようにそびえる山々と、湖にそそがれるいくつもの川、東西南北それぞれの気候や風土が、多様な暮らしと文化を培ってきました。

琵琶湖畔に広がる美しい里山の風景、“近畿の米蔵”といわれるほど豊かな稲田、養蚕業に育まれた糸の文化。また、買う側も売る側もともに満足し、社会への貢献も重視する「買い手よし、売り手よし、世間よし」の“三方よし”を理念にかかげた近江商人を輩出したことでも知られます。近年では、森の中の工房で作家が創作活動に取り組む「ヘムスロイド村」や、自分の暮らしを自らの手で作る人たちが集う「どっぽ村」といった、クリエイティブな動きにも注目が集まっています。

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滋賀県の魅力を発信するプロジェクト「MUSUBU SHIGA」のイントロダクションフィルム。「graf」の服部滋樹さんが滋賀の習慣、食、風景、人をめぐる映像作品。

“半分”外の視点だからこそ、見えること

「地方の可能性・魅力と関わりかた」をテーマにしたトークセッションのゲストは、ともに滋賀県出身で、日本の各地域に目を向けた活動をしている、「D&DEPARTMENT PROJECT」代表の相馬夕輝さんと「博報堂」ブランドイノベーションデザイン局の岩嵜博論さん。内と外、ふたつの異なる視点を持ったおふたりから、滋賀の個性とともに、地方をめぐる流れとこれからについて語られました。

D&DEPARTMENT PROJECT代表 相馬夕輝さん

博報堂 ブランドイノベーションデザイン局 ストラテジックプラニングディレクター 岩嵜博論さん

全国47都道府県の個性にデザインの観点から光をあてたガイドブック「d design travel」シリーズを手がける「D&DEPARTMENT PROJECT」。次号の特集となる滋賀県へ訪れた際、相馬さんが目にしたのは、滋賀という土地が育んできた“循環”という地域性だったそう。

「山と琵琶湖のあいだに人々が暮らしてきた滋賀県は、山・湖・里をめぐる循環のなかで、すべてがなだらかにつながっています。外へと流れていく海と違い、雨が川の流れとなって湖にそそぎ、その恵みをいただく。大きな循環のなかにいるということを、これほど感じられる県はほかにないと思いますね」

山と水のあいだに暮らす、滋賀県の里の風景。

山と湖のあいだに広がる、滋賀県の里の風景。

一方、国内外のマーケティング戦略や地域ブランディングに関わる岩嵜さんは、世界で起こっているローカルの動きに注目。たとえば、サンフランシスコに2003年に誕生した、地元産やオーガニックの食材に特化した食のショッピングモール「フェリービルディング」と、年代やブランド、新品、中古にとらわれることなく“ロングライフデザイン”とその作り手に目を向ける「D&DEPARTMENT」のビジョンの近さを挙げました。
また、大型チェーンよりローカルストア、車より自転車を愛し、地産地消・DIY・ローカルコミュニティといったキーワードで近年大きく注目されているポートランドと、豊かな自然のなかにありながらIT環境が充実し、クリエイティブな移住者が多く集まる徳島県神山町の重なりなど、日本を含む世界のローカルにおいて今、似た動きが起こっているよう。

そのなかで出てきたキーワードが、「オーセンティック」。ニセモノやつくりものを意味する「フェイク」の対義語で、“本物”を意味する言葉です。アメリカからの友人を、北国街道の宿場町として知られる、湖北の木之本に連れて行き、大いに喜ばれたというエピソードを紹介しながら、「地元の人には特別視されていない、連綿と受け継がれてきたもの、つまり歴史に根ざした“オーセンティック”なものこそが、外から来た人にとっては大きな魅力になる」と語りました。

「大都市中心の“大きな物語”が求められてきた戦後のマスマーケティングから、大きな転換期を迎えているのが今。これからは、いくつものローカルの物語が人々をつなげるようになるんじゃないか」という岩嵜さんに、「そのためにも、地元の方々が誇りや気づきを得るきっかけとして、“半分よそ者”の視点が必要なのでは」と相馬さん。「外の人との交流やつながりが重要になる」との言葉に、うなずく参加者の姿が多く見られました。

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50名以上集まった満席の会場。IUターン移住に興味のある方、また地域での起業を検討している方が多かったよう。

 

それぞれの実践者から見た、滋賀の魅力

地域の魅力を外に向けて発信するには、自らがまずその魅力を知り、自覚することが重要。滋賀県出身者や移住者として、実際に地域に深く関わる方たちをゲストに迎えたトークセッションでは、それぞれから見た地域の可能性や暮らしについて語られました。

都市へのアクセスもよく、クリエイティブ
「何かやりたい人にとっては、無限の可能性がある」と語ったのは、植物と廃材を使ったプロダクト「ハコミドリ」を手がける、Uターン移住者の周防苑子さん。「情報過多な都市に対して、滋賀県には余白やスキマが多く、それでいて大都市へのアクセスもいい。東西南北の各エリア個性も豊かで、クリエイティブな人が活躍できるフィールドがたくさんあると感じます」。また、Uターンした後にできた友人たちは、“食”への関心が高く、知識も豊富で驚いたという。大豆発酵食品「テンペ」をはじめ、「ヴィーガン料理」がふるまわれる機会が増えたそう。

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写真上:植物と廃材から生まれる「ハコミドリ」の作品。 写真下:周防苑子さん。


水との新たな関わり

同じく滋賀県出身の大岩 Larry 正志さんは、東京を拠点に活躍するアートディレクター/ボイスアクター。琵琶湖の環境保全と地域振興をかかげる、西日本最大級の野外音楽フェス「イナズマロックフェス」のロゴデザインを手がけ、毎年MCを務めるなど、東京にいながら故郷である滋賀県の仕事に携わっています。そんな大岩さんが注目しているのは、まるで内海のように広大な琵琶湖の水。「高度経済成長期に悪化していた水質も、近年だいぶ改善してきました。たとえば、ボードの上に立ってパドルで漕ぐSUPのようなウォータースポーツやアトラクションなど、水との新たな関わりが生まれてくると面白いんじゃないかと思っています」

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写真左が、大岩 Larry 正志さん。

 

可能性を秘めた白いキャンバス

一方、他県出身ながら、湖西の高島市で地域ブランディングに取り組む平井俊旭さんは、「Soup Stock Tokyo」などを手がける「株式会社スマイルズ」を経て、滋賀県にIターン。発酵食をはじめとする独自の食文化などを県外に向けて発信したいと考えている平井さんは、「滋賀県の高島にきて、一過性の観光開発に地元の人が疲れてしまっている現実も目の当たりにしました。地域の魅力を掘り起こしていくためには、地元の人と外の視点を持った人が一緒になって、時間をかけて活動していくことが大事なのでは」と話します。「湖と緑に恵まれた湖西は、私にとって、さまざまな可能性を秘めた白いキャンバス。北欧を思わせる、このすばらしい環境に光をあてていきたいですね」

北欧の湖畔を思わせる高島の風景

滋賀らしさを“暮らしの循環が見える場所”と表現したのは、ソーシャル&エコマガジン『ソトコト』編集長として、さまざまな地域を見つめてきた指出一正さん。
「自分が誰のために仕事をして、どう作用しているのか。それが見えずに、もやもやを抱えている人は少なくありません。東京では、ひとりが“1300万分の1”になるわけですが、地方の小さな町や村では、数千分の1になる。コミュニケーションの濃度が上がって大変なこともあるかと思いますが、そのぶん自分の作用が見えやすくなる。さらに、山と琵琶湖のあいだに暮らす滋賀県は、自分の触れるものがどこから来ているか分かりやすい場所。自分たちの暮らしを俯瞰して見られる環境が生む“つながり感”は、大きな力になると思います」と、その魅力について語りました。

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イベント会場には、滋賀県のイチオシ食材がズラリ。琵琶湖だけに生息する「ビワマス」のスモークや、地元の人に57年愛され続ける、沢庵漬が入った「サラダパン」など、東京ではなかなか味わえない滋賀名物も。

イベント会場には、滋賀県のイチオシ食材がズラリ。琵琶湖だけに生息する「ビワマス」のスモークや、地元の人に57年愛され続ける、沢庵漬が入った「サラダパン」など、東京ではなかなか味わえない滋賀名物も。

さまざまな立場から地域に向き合うゲストたちを通して見えてきたのは、そこにしかないものを、外の視点を持った人との交流から、あらためて眺めてみることの可能性。歴史と風土に育まれた“本物”を、“半分”外の目線で見直してみる。そうすることで、一過性の観光開発とは異なる、新たな地方との関わり方のヒントが見つかるかもしれません。

文:原田 潤 編集協力:滋賀移住・交流促進協議会

滋賀県移住・交流ポータルサイト共有-150912-shigato.key


日本最大の湖である「琵琶湖」など、豊かな自然や歴史に恵まれた滋賀県。都市部へのアクセスにも優れ、「ほどほど田舎、ほどほど都会」で住み心地のよい滋賀県で、あなたも暮らしてみませんか?


http://www.pref.shiga.lg.jp/b/shichoson/iju/top.html




湖と、陸と、人々と。スクリーンショット 2015-09-30 18.34.03
MUSUBU SHIGA


滋賀県の魅力を発信するプロジェクト。これまで培われきた魅力を、新しい視点を持ったデザイナーやアーティストなどが調査・再発見し、出会ったものをつなぎ合わせ、“これから”の滋賀を伝えている。


http://musubu-shiga.jp

(更新日:2015.10.20)
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